presented by hanamura
長く降った雨で、草木がよりうっそうと繁ってきました。
先日、明け方近くに窓から外をみると、
霧が薄くかかっていて、見慣れた景色も幻想的に感じられました。
この季節は霧の発生が多く、ここ東京でも朝方には時々みられます。
ところで、霧がかかったような、ぼんやりとした様子のことを
「紗がかかったような」と表現しますよね。
みなさんもご存じのように、
この「紗」は、夏の帯や着物に用いる生地のことを指します。
そこで、今回はこの「紗」についてのお話しをします。
「紗」は、前回の「花邑の帯あそび」でお話しした「絽」のように、
薄く透き通る生地が特徴的な絹織物です。
「紗」も「絽」と同じく、
「捩り織り(もじりおり)」という技法により
織り上げられます。
捩り織りは隣合った経糸(たていと)を鎖のように交互に絡ませて、
その間に緯糸(よこいと)を通していきます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/2e/fc65d94117f0aeb06aff8f09406e0b21.jpg)
「絽」の場合は、この捩り織りと平織りとを
交互に組み合わせて織っていきますが、
「紗」では、捩り織りのみで織り上げます。
そのため「紗」は「絽」以上に隙間があり、
そこから白い襦袢や白い帯芯が透けてみえます。
このいわゆる「透け感」ともいわれる
透けている様がとても涼しげなんですね。
また「紗」の糸には強い撚りがかかった「駒糸」を使うので、
生地に張りがあり、シャリ感が生まれます。
「紗」の歴史はとても古く、
漢の時代(紀元前)に中国で誕生し、
唐の時代から宋の時代(平安時代から鎌倉時代)に大流行しました。
その流行が日本にも伝わり、
貴族用の夏衣装や雅楽の装束として用いられたようです。
その涼やかな「紗」の生地は、
現代においても夏の着物や帯に用いられていますが、
その中でも「下地が透ける」という生地の効果が断然あるのは、
「紗袷(しゃあわせ)」でしょう。
この「紗袷」とは、模様の入った軽めの紗を二枚重ねにして、
単衣に仕立てたものです。
2枚の模様は、重なったときにつながりのある柄行きになっていて、
その意匠はとても風流なものです。
「紗」は「透ける」ことこそを楽しむ着物といえるでしょう。
花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は6月9日(火)予定です。
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