花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「緑色」について

2012-05-03 | 和の伝統色について

presented by hanamura ginza


まもなくすると端午の節句ですね。
この季節は、梅雨の先走りのような雨の日も多いのですが、
雨が降ったあとには、陽射しがより強くなったように感じられ、
空気も湿気を帯びてきて、少しずつ夏が近づいてくるように思えます。

その湿潤な空気を吸いこんで、
新緑もぐんぐんと育っているようで、
淡い緑色だった若葉も
すでに多くが濃い緑色になってきています。
「緑」が織りなす色彩豊かなハーモニーは、
この季節ならではの美しさですね。

日本の伝統色にも、
この季節の葉や草の色をあらわしたものが多くあります。

今日は、その中でも、
柳色、蓬(よもぎ)色、若竹色、萌黄(もえぎ)色、若草色、苗色といった
名前を聞くだけでも清々しさの感じられる色について
お話したいと思います。

柳色は、淡い黄色がかった黄緑色のことを指します。
古来では柳色というと、
3月から4月ぐらいに芽を出した
柳の葉の色をあらわしたものでした。

柳は、平安京を造る際に、
鴨川の洪水を防ぐために防風林として植えられたこともあり、
古来よりその美しさが愛でられてきました。
平安時代には、経糸(たていと)を萌黄色、緯糸(よこいと)を白色として
この柳色が織りあらわされていました。
また、襲の色目(かさねのいろめ)※としても、
表が白色、裏を緑色として
柳色をあらわしたようです。

ちなみに、この柳の葉の裏側は淡い柳色になり、
裏葉色とよばれています。

蓬色は、蓬の葉のように、
やや青みがかった緑色のことを指します。
蓬は、よもぎ餅でも有名ですが、
古くから薬草としても用いられ、
端午の節句の日には、
菖蒲と一緒に浴湯に入れられます。
襲の色目では、表側を淡い萌黄色、裏側を濃い萌黄色として
蓬色があらわされています。

若竹色は、明るく青みがかった緑色のことを指します。
筍から成長した竹が、その皮を脱いで、
若々しい緑色となったときの色合いを指し、
瑞々しい竹の色をあらわしています。

萌黄色は、明るい黄緑色で、
春から初夏にかけて芽を出した鮮やかな緑をあらわしたものです。
萌黄という名前には初々しいイメージがあったためか、
平安時代にはとくに若い人が着る色とされました。

若草色は、萌黄色よりも明るい黄緑色で、
萌黄色と同じように春から初夏にかけて芽吹いた草の色をあらわしています。

苗色は、淡い緑色を指します。
苗色は、初夏の眩しい光を浴びて、
風に揺れながら、すくすくと育つ苗の色をあらわしたものです。
襲の色目では、表が淡い緑色、裏が黄色で苗色があらわされ、
平安時代には天皇の世話をする蔵人が身につけた色とされています。



上の写真は、
里山文様があらわされた型染めの絹布からお仕立て替えしたものです。
萌黄色、若草色、苗色などの爽やかな緑色系統で統一された色合いが美しく、
瑞々しさが感じられます。
富士山に橋や家々があらわされた里山の意匠は、
里山の素朴なあたたかみと美しさが感じられますね。

下の写真の花織は、
薄雲鼠色の地に、柳色で花織があらわされています。
透明感のある柳色が上品です。



端午の節句を過ぎると暦の上では立夏となります。
さわさわと風に揺れる草木の美しさを感じながら、
風薫る季節を楽しみたいですね。

※襲の色目とは、平安時代より公家たちの間で装われた衣服の表地と裏地の配色や、
衣服を重ねて着たときの色の取り合わせのこと

※上の写真の「里山文 型染め 名古屋帯 」と、
「花織 薄雲鼠色(うすくもねずいろ)地に縞文 洒落袋帯 」は花邑銀座店でご紹介している商品です。

花邑のブログ、
「花邑の帯あそび」次回の更新は5月17日(木)予定です。


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