花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

針山について

2010-02-16 | 帯仕立ての道具

presented by hanamura


立春を過ぎたのにもかかわらず、
ここ東京では、春が遠ざかっているのでは?
と思うような寒い日が続いています。
暖かな春が待ち遠しいですね。

さて、前回の花邑の帯あそびでは、
「針供養」についてお話しをしました。
針供養では、使用できなくなった針を
お豆腐や蒟蒻に刺して、針に感謝します。
それは、日頃硬いものばかりを刺している針を
ねぎらうという意味があります。

一方、現在使用している針はというと、
当然、針山(針刺し)に刺しますね。
今日は、この針山についてお話しします。

針がちらばないように、
保管しておくための針山。
この針山には
さまざまな種類があります。

小さな陶器が土台になった針山、
縮緬を花のように繋いだ針山、
端にお人形がついた針山、
そして動物のかたちになった針山など、
眺めているだけでも楽しくなってしまうような
可愛らしいものがたくさんあります。
針山は、まるで裁縫箱に咲く花や、
マスコットのようです。



市販されているものだけではありません。
手づくりの針山をお使いの方もいるでしょう。
私も、職業柄手づくりの針山をいくつか
いただいているのですが、
そのどれもが可愛らしくて、
裁縫箱を開けるたびに心が和みます。

針山は、日本だけではなく
世界各国でも用いられています。
西洋では昔、
「娘は針仕事が得意です。」というアピールをするため、
針山を玄関に飾った家が多かったようです。
そのため、西洋アンティークを扱うお店では、
時としてとても凝ったつくりの針山が置かれている場合があります。

さて、この針山の中身ですが、
市販されているものには
綿が使用されているものが多いようですが、
その他にもさまざまなものが
その材料になります。

コーヒーのかすを乾燥させたものや、
ゴマが混ざっている場合もあります。
そして、さらには髪の毛を詰めると良いともいわれています。

いずれの素材も、適度に油分を含んでいるものです。
針にその油分がなじむと、針の滑りが良くなります。

時代劇などで、繕いものをしているおかみさんが
時折結い髪にチクチクと針を刺しているシーンがありますが、
針山の中の髪の毛も同じ理由ですね。

髪をとかす際などにでた抜け毛を丸めて保存して、
それを絹やウールなどの生地に詰めて
針山をつくると良いそうです。

ただ髪の毛をつかって針山をつくるときには、
しっかり縫い込んでいないと
髪の毛がぴんぴんと出てきてしまい、
ちょっとしたホラーになってしまうので、
注意が必要ですね。

針山の中身を包むためのものには、
ウール、フェルト、絹、などの
たんぱく質を含んでいるものの方が
針が長持ちするようです。
日本は湿気が多いので、
木綿などでは針が錆びやすくなってしまうのです。

大切な針のお家である針山には、
やっぱり針に対する気づかいが
いっぱいつまっているんですね。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は2月23日(火)予定です。


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