花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

帯仕立ての道具 -押し板-

2008-04-08 | 帯仕立ての道具

presented by hanamura


「押し板」について

帯仕立ての道具についてのお話は、
今回をもって最後となります。
そして、今回のお話に登場する道具も、
帯の仕立ての最後に用いられるものです。

それでは、その帯の仕立てのおわりに使われる道具、
「押し板」についてお話ししていきましょう。



帯の仕立てでは、帯のかたちがひととおり完成したあとで
「仕上げ」の作業をしていきます。
「仕上げ」とは、帯にアイロンをかける作業のことです。
帯の上にあて布を敷いてから、霧吹きをかけます。
そして、帯の表側と裏側を丹念にアイロンがけしていきます。

また、この「仕上げ」では、アイロンがけと同時に
帯の「角」や「はし」が歪んでいないかといった
最終チェックもします。

「仕上げ」作業を終えたあとは、帯をたたみます。
この「帯をたたむ」ということは
とても簡単な作業のように思えますよね。
しかし、このときにたたみ方がおかしいと
せっかく仕立てた帯にしわができてしまいます。
さらには、帯を結んだときにみえる部分に
折り線がついてしまうこともあるのです。

そのため、帯をまっすぐにして
しわができないように気を配りながら、
ていねいにたたんでいかなくてはなりません。

帯をたたみ終えると、
いよいよ「総仕上げ」になります。

このとき、「押し板」でたたんだ帯をはさみます。
そして「押し板」の上に重石を均等に乗せ、そのまま数時間おきます。



「押し板」で挟み、重石で圧力を加えることで
余分な空気を抜いて、帯に生じた「浮き」をとります。

帯は仕立てると、その作業の過程で余分な空気が入ってしまうため、
布と布との間に「浮き」が生じます。
この「浮き」は「仕上げ」のアイロンがけにより、
ある程度は抑えられますが、完全に抑えることはむずかしいものです。

そのため圧力を加えて「浮き」をとることで、
帯の表面がより平滑になり、張りも生まれてくるのです。
また、「仕上げ」のアイロンではとれなかった
細かいしわもこのときに伸ばすことができます。

「押し板」を使った「総仕上げ」が終われば、
帯の仕立ては終了です。

この「押し板」は通気性のよい薄い木材からできています。
その寸法は長さ1尺4寸9分(56.5cm)、巾1尺2分(38.5cm)。
一方、たたまれた帯の寸法は、
長さ1尺2寸4分(47cm)、巾8寸2分(31cm)になります。
「押し板」は、たたんだ帯をはさむのに丁度よいつくりになっているのです。

「押し板」のつくりは、とてもシンプルなものです。
しかしシンプルな道具は、「押し板」だけではありせん。
帯の仕立てで使う道具すべてに、よけいな装飾はないのです。
目的となる作業、そして使いやすさだけを考えぬいた末に
つくりだされたものばかりです。

この道具の“かたち”は、昔から今日へと
永く変わることなく受け継がれてきています。
そして、“かたち”の変わらない「道具」を使うことによって、
帯のつくり手として忘れてはならない、
大切な“こころ”も受け継がれていく気がするのです。

15回にわたってお届けしてきました「帯仕立ての道具」のお話。
いかがでしたでしょうか?
少しでも興味を持ってお読みいただけていたら幸いです。

帯のアトリエ「花邑hanamura」ホームページへ


最新の画像もっと見る

コメントを投稿