presented by hanamura
「ヤマト糊について」
上の写真のもの、見覚えがありますよね?
青色のぷくっとしたからだに、黄色い帽子のふたを被ったすがた。
そうです、「ヤマト糊」です。
なんだか懐かしい 「ヤマト糊」。
子どもの頃に、この「ヤマト糊」で紙や段ボールなどを貼りつけ、
動物や車など、たくさんのヘンテコ(?)なものたちをつくりませんでしたか?
セメダインやボンドなどとはちがって
幼い子どもにもやさしいものでしたね。
実は、帯の仕立ての過程で「帯の“はし”をつくる」ときには、
このヤマト糊を使います。
「帯の“はし”をつくる」とは、帯反に帯心を綴じるときに、
手先やたれ下などの“帯のはし”になる部分を
まっすぐにすることです。
帯反と帯芯を綴じるときには
この“はし”を基点にして綴じていきます。
そのため、“はし”がまっすぐでないと、
仕立てあがった帯全体も歪んでしまいます。
帯の美しさにおいて「まっすぐ」なことは
とても大切なことです。
帯のつくり全体を左右する“はし”こそ
とくにまっすぐにつくる必要があるのです。
“はし”をつくる作業には、
いろいろなポイントや手順がありますが、
ここでは帯の前部分のはし(手先)に
糊を貼りつける作業を中心にしてお話しをします。
「手先」をつくることは、
帯反に帯心を綴じるときの一番はじめとなる作業です。
あらかじめ、帯反の前のはしから5分内側に針で「目どおし」※をし、
仕立てあがった帯のはしになる「出来上がり線」をひきます。
そのときに「出来上がり線」がずれないように、糸で縫い合わせておきます。
この線を内側に折り、アイロンをかけて折り目をしっかりとつけます。
帯芯は、二重にして帯反につけます。
上図のように、この出来上がり線に
二重にした帯芯の1枚目のはしをぴったりと合わせます。
つぎに、「出来上がり線」の5分外側を「のりしろ」にして
「糊」を3~4箇所うすくつけ、内側に折り込みます。
ここにアイロンをかけて帯反と帯心を貼り付けます。
2枚目は、内側に折られた部分を「のりしろ」にして
「糊」を3~4箇所うすくつけます。
この部分に2枚目の帯芯をはしから少しずらしてつけ、
アイロンをかけて帯反に貼り付けます。
この「糊」で貼り付けた「帯のはし」を基点として、
帯反と帯芯の長さを均等に合わせ、綴じていきます。
そして、「糊」で帯反と帯芯を貼り付けた
「帯のはし」を糸でも縫いとめます。
「帯のはし」を「糊」で貼り付け、
さらにそこを糸で縫い合わせることで
よりしっかりと固定し、
帯が歪まないようにするのです。
つまり、帯を仕立てる作業のなかで
「糊」はとても重要な役割をもっているといえます。
この「糊」の原料は、むかしも今も、
天然の「でんぷん」からつくられています。
天然の「でんぷん」は、
布にやさしく、布との馴染みもとてもよいからです。
現在、帯の仕立てに使っている「ヤマト糊」の原料も、
もちろん天然の「でんぷん」です。
子どものときに使った「ヤマト糊」のやさしさが
帯の仕立てにも使われているんですね。
ちなみにむかしは、糊をつけるための小さな「へら」が外側についていましたね。
しかし、現在のヤマト糊の「へら」はふたの内側についています。
このわけを帯教室の生徒さん(別名ものしり博士さん)が
「ヤマト株式会社」(ヤマト糊の製造会社)に(!)問い合わせてくれました。
「外につけると、へらに残ったのりが乾燥してしまうんです。」
というおはなしだったようです。
こんなところにも気配りのあるやさしい「ヤマト糊」。
「ヤマト糊」の宣伝をするわけではありませんが、
「ヤマト糊」にますます愛着がわいてしまいました。
※1月29日更新のブログ「針について」を参照してください。
花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は3月4日(火)予定です。
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