ヌマンタの書斎

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中国嫁日記 井上純一

2012-09-04 12:19:00 | 

かつてジャパユキさんという言葉があった。

今じゃ、ほとんど死語に近いが、意味するところは日本に出稼ぎに来ている発展途上国の女性を指す。もっといえば、水商売で働く外国人女性であり、おうおうにして売春婦に近いイメージを持った言葉だ。

だいたい1970年代頃、つまり高度成長期の終わりぐらいに使われ出した言葉だったと記憶している。ちなみにこの言葉は、おそらくは唐行き(カラユキ)さんの派生語ではないかと思われる。

かつて貧しかった頃の日本では、貧しい家の娘たちが外国に売られていくことがあった。行先は上海、マニラ、ヤンゴン、シンガメ[ルとアジア中心であり、家政婦や女工もあっただろうが、多くは売春宿に売り飛ばされたようだ。

そんな唐行きさんの悲惨なイメージを踏襲した言葉だけに、日本でもジャパユキさんに対する目線は複雑であったと思う。実際、暴力団の資金源とされて売春を強要されたとされるケースもあったようだ。

しかし、彼女たちは逞しかった。

なにせ故国の家族の生活を背負って、借金までして日本に来たのだから、稼がずしてどうする。金になるなら、なんでもやった。そのなかには当然に売春もあった。が、いつまでも暗い仕事ばかりしていたわけでもない。

バブル期を過ぎ、長期にわたる不況の時代になっても、日本に渡ってくる外国人は後を断つことはなかった。いつのまにやら、彼ら外国人労働者は必要な存在となっていたからだ。

豊かになり、ひ弱になった日本人が働きたがらない労働現場に行けば、その現実を目の当たりにすることになる。コンビニで売られている弁当やお惣菜を作る工場に行けば、そこに外国人を見かけないことは希だ。

著名な遊園地では、お客さんからは見えない裏方の仕事場にも外国人労働者は必要不可欠な存在となっている。単純労働が多いが、それだけではなくなっている。今や高学歴な外国人労働者は珍しくもなく、それを活かしているIT企業も少しずつ増えている。

仕事だけではない。家庭においても国際結婚は確実に増えている。今や新婚家庭の7%余りが国際結婚であり、シナ、コリア、フィリピンの三国で過半を占めるという。私の記憶では、知り合うのは大概が外国人ホステスを置く飲み屋さんだったのだが、今ではネットだったり、学校だったりと知り合う機会もずいぶんと変わっている。

実際、私も外国人パブなどでけっこう遊んだから、異性の外国人に惹かれる感覚はよく分かる。私自身は結婚とか家庭にあまり積極的でないので、そのあたりを見透かされて国際結婚には至らなかったが、そうなってしまった人たちの気持ちは少し分かる。

たしかに面白いし、新鮮な感覚だった。日本人として、当たり前に思っていたことが、外国人から見ると特殊に思えることが面白かった。例えば日本人は数字を指で数える時には、人差し指から数えていく。ところが外国人(もちろん、国によって違うが)だと親指から数える。こんな小さな違いが面白い。

違っていることが面白かった。違いがあるからこそ、相通じることが貴重に思えてならなかった。親しくなる度に、この新鮮な感覚がなくならないことにも驚かされた。これは仕事でも同じで、現在は日本で会社を作り、活動している外国人経営者との接点も増えた。

日本人とは異なる視点、行動には驚かされるが、同時に学ぶことも多い。少子高齢化が進み、社会の維持には外国人が欠かせなくなることは、もはや既定路線だといって良い。

ただ、仕事ならともかく、家庭ではどうなのだろう。これは私だけでなく、魅力的な外国人の異性との結婚を考えたことがある人なら誰しもが思う疑問であろう。実際、離婚率も低くはないようだ。ある行政書士の先生は、国際結婚の4割近くは破たんすると言っていた。なんとなく納得できる。

でも、子供が出来て、その上に孫までできたオシドリ夫婦の国際結婚も実際にある。私の観たところ、世間体を気にする大企業の社員よりも、中小企業の経営者クラスに案外と国際結婚は多い。外国に工場を建てたり、支店を作ったりしているうちに知り合い、合弁企業などを進めているうちに、現地の女性と知り合って熱烈な恋愛結婚に至った経営者を知っている。

私とは仕事上のかかわりがないせいか、わりと本音に近い話を伺うことがある。やっぱり大変は大変らしい。でも、その大変さを前向きに受けて止めていけば、道は開けるものですと語っていたあたりに、秘訣があるように思う。

これは国際結婚に限らないが、一緒に暮らせば相手の良い面も悪い面も必要以上に見えてしまうものなのだろう。だからこそ、相手の良い面をのみ強く捉え、悪い面は一歩引いて受け止める。そんな前向きな姿勢が、円満な家庭の秘訣なのだろう。

そんな典型かと思えるのが、表題の漫画の作者とその奥様だろう。

まァ、実に楽しげな夫婦に思えてならない。実際には相当に葛藤はあろうし、それを匂わせる場面も描かれている。でも基本、前向きに相手の良い面を強調するかのようなエピソードが多い。

だからこそ、当初ネット上にある作者のブログに掲載されていた漫画であったのだが、あまりの面白さに支持を集め、遂に単行本として発売され重版を重ねている。第二巻も刊行されており、ずいぶんと話題になった作品だ。

ちなみに、これがブログです。


奥さんの月(ユエ)さんも面白いが、私としては語学学校の王先生とその旦那さんのエピソードが好きですね。気軽に楽しめる内容なので、機会がありましたら是非どうぞ。


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4 コメント

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Unknown (アブダビ)
2014-05-09 20:25:02
作者がクリエーターという仕事柄か、割合に視点が自由で、楽しく読めました。
月さんはじめとする多くの中国人が、いろいろあるだろうに、日本居住にこだわり、あの地震後も帰ろうとしたがらない点で、私と同窓の留学生たちと似てます。住むという点で、やはり日本は平和で良い国なのですね。
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Unknown (ヌマンタ)
2014-05-12 13:09:19
アブダビさん、こんにちは。興味深い人たちですよ、シナ人は。既に日本に居住する外国人のトップですし、ほぼ永住する気でいる人も少なくないようです。集団としてのシナは必然的に反日となりますが、個人としてみるとその逆で日本を評価する人が多い。この厄介な隣人と、いかに接していくかは、日本に突き付けられた課題だと考えています。
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Unknown (アブダビ)
2014-05-12 21:28:33
銀英伝をツールに仲よくなった中国人の◎君がすることになり、日本語版の1巻を送りました。
反中派の方からは非難されるでしょうが、漢族でも
地方出身者や、少数民族出の同僚は、ホスピタリティが高く、時に我々、日本人が失ったものを持っていると感じることかをあります。
その一人である◎君に、
「僕は日本も日本人も好きだ!我々の国が仲よくなる日が来ますか?」と思います。問われ、
「オレは君の友達だ。それは変わらない。でも、我々の国が仲よくなることはない。」
と応えました。
それで良いと思います。
互いの所属する国は潜在敵国です。戦争になれば戦わざるえません。
しかし、最悪、戦争になった時ですら、どうやって幕を引くかという問題があり、それは我ら市井の庶民から為政者に至るまでが、コネクションを持っていることが、必ず何処かで抜け道になる。
彼らの国は10億、我らは1億。これだけの数になれば互いに絶滅戦など無理ののですから。
我々の国は潜在敵だが、それと我々の交友は別物。
それで良いのだと思います。
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Unknown (ヌマンタ)
2014-05-13 13:13:16
日本とシナは、どちらも東アジアの大国であるだけに、政治的には争わざるを得ないでしょう。しかし、個人と個人の関係においては、そんなこととは距離を置き、節度ある態度でいれば、案外うまくいくと思っています。
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