ヌマンタの書斎

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メガバンク初の女性役員誕生

2024-03-13 09:18:24 | 経済・金融・税制

21世紀の日本の産業界を鑑みると、一番ダメなのは銀行、特にメガバンクだと思う。

20世紀後半、敗戦の日本を経済中心に建て直した貢献を無視している訳ではない。だが、あれは霞が関主導の経済再建路線であり、旧・大蔵省に手取り足取り支えてもらっての貢献であったと今にして思う。

でも、私は経済の現場を税務の面から診てきて、銀行の活躍が企業の活動の底を支えていたと信じている。クライアントの中小企業の下へ税務署の調査官がやってくるよりも目利きの銀行員が来るほうが私は緊張したものだ。

倉庫に放置された在庫の原料に積もった埃を指摘された時なんて、文字通り肝が冷えたものだ。不良在庫がばれちまった。税務署の調査官でさえ気が付かなかったのに、ベテランの銀行員の目は誤魔化せなかった。

結局、不良在庫の洗い直しを提出することを条件に融資の許可は下りたが、銀行の支店長から「隠すのではなく、堂々と損失処理してくださいね。そこが再建のスタートです」と言われたことは、今も脳裏に刻まれている。

確かに優秀な銀行員は居たのだと確信しているが、それはもはや過去の伝説に過ぎなくなっている。原因はバブルの崩壊後の後処理のいい加減さだ。

市場経済である以上、景気に波があるのは当然。日本の場合だとプラザ合意後の急激な円高により莫大な為替差益が国内に滞留するようになったが、既得権者を保護するため規制緩和をしなかった。そのため国内の資金が株式市場と不動市場に偏ったことでバブルが生まれた。

正直、放置しても景気はいずれ落ちると思われたが、ここで大蔵省がしくじった。土地を担保とした銀行の融資に縛りをかけた、いわゆる総量規制である。これで不動産市況は暴落した。ここで困ったのが農協だ。投資の素人である農協は、金融機関の薦められるままに不動産投資に走った。だが土地が暴落したため投資資金の回収が出来なくなった。この農協の投資を引き受けていたのが、いわゆる住専である。本来ならば早めに不良債権の処理、すなわち損切をしなくてはならない。

しかし、住専を損切すなわち破綻処理させると、投資した農協が連鎖的に破綻する。農協は自民党の票田であり、破綻させる訳にはいかないと永田町サイドから圧力がかかった。同時に住専の社長の座は霞が関のエリート様の退職金支給のための腰掛でもあり、破綻すれば社長も連座である。それを嫌がった官僚OBたちの働きかけもあり、破綻処理は先延ばしにされた。

破綻しかかった企業を無理に生き伸ばせば負債は増大する。当初30兆円程度と言われた不良債権は、90兆円を超えてしまい多額の破綻処理となり国庫の負担となった。更には、バブル期の経営者を時効で逃亡させたため、経営者の責任追及が甘くなった。経営に失敗しても銀行の経営者は責任を取らずに済む悪しき前例となった。いわゆるモラルハザードの始まりである。

おまけに羹に懲りてあえ物を吹くが如く、金融庁が余計なことをやらかした。銀行に対して融資マニュアルを強要し、現場の融資判断の権限を大幅に削った。云っておくが、金融庁には融資の専門家なんていない。いるのは、リスクを嫌い保身に長けたお役人様である。

それでも長年の経験から導かれた融資マニュアルがまったくの無価値だとは、私とて思わない。しかし、あれは決算書にある程度信頼を置ける大企業向けのものだ。日本経済を支えるのは大企業だけでない。、数多くの中小企業が景気の底を支え、連帯保証で縛られた中小企業の社長たちの頑張りこそが、日本経済の真の強さの源泉であった。

大企業ならば決算書をベースに融資が出来る。しかし中小企業への融資は決算書ではなく、経営者の資質をこそが企業の価値そのものである。それを判断してきたのが日本の銀行員たちであった。しかし、金融庁の作成した融資マニュアルは、その現場の銀行員たちを信用せず、あくまで大企業と同列に評価することを強要した。

中小企業への融資とは、経営者個人への融資に等しい。その経営者を図る目線を持たねば、満足のいく融資なんて出来るわけがない。高度成長期の銀行の中小企業融資はまさにそれが出来るものであった。ところが金融庁のマニュアルに縛られた今の銀行員には無理な話である。

では今の銀行はどうやって融資の判断をしているのか。企業から融資の依頼を受けると、決算書などを預かり融資判断のためのPCソフトに入力して判断したり、融資審査専門の別会社に依頼したりして融資の是非を決めていた。

銀行・・・・必要ないじゃん。

人工知能もますます発達するだろうし、優秀な銀行員なんて必要ない時代なのでしょう。ただ送金等の為替機能は今後も重要なので、銀行業務自体がなくなることはないでしょうが、21世紀にどのように生き残るつもりなのか、私は少々意地悪な目線で傍観しております。

先週、何気に報じられていたメガバンク初の女性役員誕生ですが、つまるところ優秀な銀行員なんて不要だからこその女性役員誕生ですか。だとしたら女性を馬鹿にしすぎだ。労働人口の半分を無視してきたツケをこれから払う気なのでしょうかねェ・・・


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2 コメント

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Unknown (馬鹿も一心)
2024-03-13 20:34:42
正しくその通りです。
拍手👏
Unknown (ヌマンタ)
2024-03-14 09:09:32
馬鹿も一心さん、こんにちは。日本の大手マスコミ様は大切な広告主である銀行様の醜態は報じません。だからあまり知られていないのでしょうね。

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