ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

ユーラシア大陸の綴じ蓋

2022-06-16 14:13:47 | 社会・政治・一般
ロシアの衰退を期待している方々には申し訳ないが、あの国は必要(悪)です。

ユーラシア大陸は地球最大の陸地であると同時に、最も多くの人口を抱え、多くの国を有します。それゆえに、常に国と国との争いが絶えません。それこそ古代から現代に至るまで、常に戦乱が絶えたことがない。

だがソ連がユーラシア大陸の大半を支配してからは、大幅に戦乱が減った。もちろん、ソ連内部での苛烈な内部抗争はあったし、民族を故郷から引き離してのシベリア送りなどの悲劇はあった。

しかし、かつてのように遊牧民族が当然の権利として農村を襲ったり、通商のキャラバンから財貨を収奪するようなもめ事は大幅に減少した。オアシスを襲って老人は殺し、男や子供は奴隷として売り払い、女を孕ませて新たな兵士を産み育てさせるような蛮行は大きく減った。

ベルリンの壁が崩壊し、やがてソ連そのものが崩壊したが、いつのまにやら広大な中央アジアの平原に乱立した国家群は、新たなロシアに治安を委ねた。自分たちだけでは国家経済は立ち行かないだけでなく、かつての戦乱の時代に戻る不安が、ロシアという巨木に頼る結果を生んだのです。

ユーラシア大陸は東端のシナと、西端のヨーロッパが目立つので、こちらに注目が集まり勝ちですが、本来はアナトリアのトルコやイラン、中央アジアこそが大陸の中心でした。この地の東西交易こそが世界交流の始まりであり、17世紀まではこの地は戦乱の絶えぬ騒乱の地でした。

だがソ連がこの地を支配したことで、ようやく数千年の戦乱が幕を閉じたのです。だからソ連が崩壊した直後の中央アジアは、きわめて政情不安となり、結果的にそれが各地に独裁者を生むことになりました。しかし、かつての安寧が欲しかったが故に、ロシアを中心に寄り添っているのが現状です。

今、ロシアはウクライナ侵攻で大きくその権威が揺らいでいます。もしロシアが大きく衰退したら、中央アジアは再び戦乱に塗れるでしょう。この地の騒乱は各地に飛び火します。

シナが現在必死で弾圧しているウィグルは、本気で反乱を起こすでしょうし、チベットも追随する可能性があります。国境周辺が慌ただしくなれば、インドやパキスタン、アフガニスタンも黙ってはいないでしょう。

そして現在も中央アジアに隠然たる影響力を持つトルコとイランが手をこまねくはずがない。そして思い出して欲しい、この地のカザフスタンやウズベキスタンは潜在的に核兵器を隠しもっている可能性が高いことを。

この地の危険性は朝鮮半島の比ではありません。21世紀の世界大戦の導火線となるのは、ウクライナではなく中央アジアの可能性が高いのです。だからアメリカは決してウクライナへ直接軍隊を派遣することをしない。

ロシアを悪辣な独裁国家だと批難するのは勝手ですけど、このロシアという重しがなければ、再び戦乱の時代が甦る可能性が高いことは、是非とも覚えておいて欲しいですね。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 日本海にミサイル発射 | トップ | アンナミラーズ高輪店の閉店 »

コメントを投稿

社会・政治・一般」カテゴリの最新記事