ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

タッチ あだち充

2011-08-23 12:06:00 | 

「俺、今日、和也を殺してしまった」

そう呟いて、その男性は泣き崩れた。ここは東京は神保町界隈の小さなスナックだ。世界一の古本屋街として有名だが、近隣には大小の出版社が多いことでも知られている。

泣き崩れている男性は、大手出版社である小学館の週刊少年サンデーの編集部員だ。人気漫画タッチの担当編集者であり、作者であるあだち氏のとの打ち合わせの後の出来事だとされている。

この話が事実であるかどうかは分らない。むしろ都市伝説として一人歩きしている感が強い。ただ、まったく故なきことではあるまい。

大手出版社では、漫画出版は収益の大きな柱だ。その大きな収益源を漫画家だけに任せることなんて出来やしない。だから、大手漫画雑誌に連載される漫画の多くは、漫画家と出版社編集部員との協同作業によって作られる。

もちろん編集部の干渉を嫌う漫画家も少なくないが、腕のいい編集部員の協力により人気を伸ばした漫画は数知れず。そのゆえに、冒頭のように主要な登場人物を死なせてしまうような重大な判断は、漫画家だけでなく編集部の諒解あってのこととなることは不思議ではない。

だから都市伝説とは言いかねるが、それでもやはり大げさに過ぎる気もする。ただ、この作品がハッピーエンドを迎えるためには、和也の死こそが重大なポイントであったのも確かだ。

この漫画が絶大な人気を博したのは事実。当時、読んでいなかった私でさえ、ある程度のストーリーは知っていた。読んでいないのに、知っていたのは友人知己から聞かされていたからだ。

私はスポーツものの漫画は好きだが、ラブストーリーはそれほど好まない。絵柄が優しいことも手伝って、あまり積極的に読みたいと思う漫画ではなかったのが、読まなかった理由だ。

実際、この手にとって読んだのは30代も過ぎてからだ。人気が出るだけの内容はあったと思う。そして、間違いなくこの漫画のクライマックスは、和也の死の場面だと思う。その後のストーリーは予定調和の世界に過ぎない。

ちなみに現在、漫画の製作には、漫画家と編集部以外に、アニメ化を睨んだTV局のスタッフ。ゲーム化を狙うゲーム製作会社のスタッフ、そのCMに便乗して商品の売上増加を狙うメーカーの広告部のスタッフなどが関るケースが増えている。

この製作手法は通称メディア・ミックスと呼ばれている。かくして漫画は多くの人、会社を巻き込んだ協同作業と化している。ちょっと、行き過ぎの気もしないではない。

私としては、漫画家と編集部員との協同であるくらいが良いような気がするが、これも時代の流れなのかもしれません


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