理由が欲しい。
人生は決して公平ではないし、平等でもない。不幸の陥穽は至る所にあり、幸せなんて忘れてしまいそうになる。
なぜ、こんなに貧乏に苦しむのか。
なぜ、こんなに病苦に苦しむのか。
なぜ、自分はこれほどまでに孤独なのか。
飢え、地震、豪雨、津波、火災、噴火と天災が襲ってくることもある。ある日、突然敵軍に襲われて、家族を失い、家財を喪い、郷里を喪うこともある。
どうして、何故、どうしたら・・・
古来より人々は、答えの得られぬ悩みに対して、神の裁き、悪魔の仕業、妖怪の悪戯と理由を作ってきた。その理由が真実であるかどうかよりも、自分が納得てきる理由が必要だった。
その理由故に、宗教が創られ、悪魔を恐れ、妖怪を鎮魂してきた。
表題の漫画で描かれる世界では、蟲が原因であり、理由である。虫ではなく、蟲とされるのは、それが物理的な存在ではなく霊的な存在だからだろう。
不思議で、ちょっと怖くて、でもどこかでホッと出来る。主人公はその蟲を扱う専門家であり、体質的に蟲を惹きつけてしまうために、一か所に定住することが出来ずに、世界各地を旅して周っている。
ちょっと現実社会の冷たい風に吹かれることに疲れたら、読んでみるといいでしょう。不思議な世界に引きづりこまれると思いますよ。