ヌマンタの書斎

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白川・日銀総裁の退職金に思うこと

2013-03-21 13:42:00 | 経済・金融・税制
役員と従業員では立場が違う。

具体的に云えば、役員は会社との請負契約となる。株式会社ならば株主の委任を受けて役員は経営業務を請け負う。それに対して従業員は会社に雇用される。つまり、まるで立場が違う。

役員は高額な報酬を受け取る代わりに、その立場は不安定であり、実績を挙げない限り、株主総会でいとも容易に解任される。一方、従業員は労働基準法によりその雇用はある程度保証される。違法行為などをしない限り、従業員は簡単には解雇できない。何故なら立場が異なるからだ。

先日のことだが、日銀の白川総裁が退任した。そこで問題になるのが退職金である。

云うまでもなく、白川総裁は従業員ではなく、役員の立場にある。日銀の役員の退職金は下記の算式で計算される。

 月額報酬×0,0125×在職月数×功績倍率(0~2.0)

前任の福井総裁の場合、功績倍率を1.5と算定されたので、約2500万円ほどの退職金であったらしい。ちなみにこの功績は、日銀内部の評価委員会により算定される。つまりお手盛りである。

日銀の役割は物価の番人である。その評価はインフレ率で算定されるのが妥当だと思われるが、どうも日銀では異なるらしい。インフレ率自体は当の日銀が毎月公表しているので、白川氏の実績評価はそう難しくない。

すなわち、当の白川氏が自ら公言したように目標インフレ率2%を達成できたかどうか、である。あるべきだ。

雑誌等での識者の判定では、目標達成率は2割程度なので、完全に落第だと評していい。つまり功績は0、よって退職金は算定0円である。このことは、なによりマーケットが裏付けしている。なにせ、白川氏が自ら退任を公表して以降、株式相場は上がりっぱなし。これ以上、的確な評価はあるまい。

だが、日銀は間違いなく退職金を支給するだろう。おそらく前任の福井氏とほぼ同額だと思われる。なぜなら、日銀はお役所だからだ。前例踏襲主義であり、功績で評価する慣習はない。あるのは不祥事があった場合の減額だけだろう。

そして、お堅いお役人である白川氏は、マスコミが飛びつきそうな不祥事とは無縁であった。だから、任期中の4年間でお茶で濁したような小手先のデフレ対策しかやらなかった。

もっとも白川氏本人及び日銀内マスコミ接待所で腑抜けになった日銀番の記者たちのおべんちゃら報道によると、デフレ対策を着実にした(マーケットは評価していない)堅実な4年間であったそうである。

不況に対して、小出し、小出しの金融緩和が如何に役に立たないかを立証した程度の金融専門家というのが私の評価だが、大手マスコミ様の記者どもには異なる評価基準があるらしい。

オカシイと思うが、これは日銀に限ったことではない。おおよそ官庁はもとより、政府系の公的組織すべてに共通する問題でもある。すなわち、結果で評価するのではなく、業績を評価するのでもない。ただ、堅実に前例を踏襲し、組織の慣例を順守すれば、それで満点評価なのだ。

そのような評価基準に染まっている人間に景気回復を任せられると思うのもオカシイと思うが、それを当然視する人間は、マスコミも含めて相当な数にのぼるのも確かだ。

私は安倍政権が本当に景気回復できるか、今でも疑問視しているが、少なくても白川・日銀総裁を退任に追いやったことだけは評価している。後は株価や為替相場だけでなく、実需としての景気浮揚が実現することだ。

コメント
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