ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

確定申告 独断と偏見と

2013-03-07 12:14:00 | 経済・金融・税制

今年、平成24年分の確定申告書を提出しようと思って税務署を訪れた方は、ちょっと嫌な思いをしたかもしれない。

実は昨年くらいから、一部の税務署では確定申告書の提出なら受け付けるが、申告書の作成となると署では受け付けず、他の場所に設けた確定申告の相談及び作成所に行くようになっている。

ただし、全国一律ではないので、例年通り税務署内に設けられた相談所で確定申告書を記入して提出した人もけっこういるはずだ。だが23区内など都心の税務署では、毎年と同じつもりで行ったところ、相談及び作成は他会場でやっているので、そちらに行くようにと指示されてしまう。

私の職場である銀座では、既に昨年から京橋税務署では作成会場は設けられず、大手町の国税局の一部に設けられた確定申告書作成コーナーに納税者は集められている。そのため、せっかく新富町にある京橋税務署まで来たのに、大手町へ行くようにと言われて不愉快な思いをした納税者がけっこういたらしい。

無理もない。一応、ポスターなどの情報告示もしたし、なにより税務署から送られてくる申告書を同封した封筒に、その旨を書いてあるとはいっても、長年の習慣から税務署に行ってしまう人は少なくないからだ。

大人しい都会の人たちでも苛立つ人は少なくないのだから、これを地方の税務署でやったら大変だと思う。いったい、なんだってこんなことになったのか。

以下の文は、ひねくれ者ヌマンタの独断と偏見に基づく落書きですので、そのつもりでお読み下さい。

数年前から税務署では困った事態に頭を抱えていた。2月、3月の所得税の確定申告になると、税務署の一角を片付けて申告書の作成相談場所を設けてきた。所得税の担当部署である個人課税部門の人だけでは足りず、法人税や源泉所得税、資産税部門からも応援を頼むのが通例だ。

また税理士会の支部に頼んで応援の税理士を派遣してもらい、無料相談にも応じてもらってきた。そうでもしないと、大量に訪れる相談者に応じ切ることは出来ない。日頃、税務調査の場では対立し合う税理士と税務署職員が、肩を並べて仲良く仕事をする不思議な光景でもある。

ところで、私が税法を勉強した昭和の頃に比べると、現在の税法は一段と複雑化している。法規集自体、ページ数は飛躍的に増大し、重くかさばるようになって久しい。高度成長時代は製造業や小売、卸などが経済の中心であった。

しかし、現在は3次産業とりわけサービス業の割合が増大している。そのうえ、株式、保険などの分野では従来にはなかった金融商品が毎年のように現れて、税務上の判断を迷わせる。さらに国際化の問題もある。経済活動の内容が変わりつつあるのに、税法がその変化に十分追いついていないのが実情だ。

もちろん国税当局もこの問題には早期から対処している。その結果、税務署の職員の研修時間は増え、各職員はその担当している分野にはかなり精通するようになってきている。しかし、あまりに専門分野に偏って研修をしているため、法人税課の職員は法人税に特化し、他の税目には疎くなっている。

それにもかかわらず、この確定申告の時期になると、応援のため駆り出される。多忙な最中、間違った指導をしてしまったらしい。

これは納税者の立場からすると、たまったものではない。わざわざ税務署に赴き、そこで職員から指導された通りに申告書を記入して提出したうえ納税まで済ませた。ところが6月ぐらいになって税務署から呼び出され、申告書の内容に間違いがあるので、追加の税金を払って欲しいなどと言われたら、怒らずにいられようか。

いや、怒るどころか裁判に訴え出たケースもあったようだ。まァ、裁判はその訴えた動機よりも、申告の内容の是非を問うものになるので、法令解釈を優先するので、結果、納税者敗訴のケースが多い。

ただ、税務署の指導で間違えたのだから、所得税そのものは仕方ないが、罰金的性格のある過少申告加算税は免除された判決が出ている。これを国税当局は大いに気にしていたらしい。

数年前から、申告書は納税者本人が記入するようにとの通知があり、それまで無料相談会で私ら税理士や税務署職員が記入していたのに、納税者に記入させる方式に変更されたのが皮切りだった。

ついには税務署内での申告書作成まで止めてしまい、わざわざ他の施設を借りて申告書作成会場を設ける始末。当たり前だが、相談に来た納税者に対応するのは、税務署の個人課税部門を中心とした職員と応援の税理士である。一応は精鋭を揃えたことになっている。でも、わざわざ税務署のではなく、他会場を借りる必要あったのか?

意地悪な私は、それで責任回避したつもりなのかと、ついつい文句を言いたくなる。

でも言わない。だって間違えて指導してしまった税務署職員の気持ちは良く分かるから。これだけ多様化し、複雑化した経済のなかで、見たこともない、聞いたこともない新しい金融取引は珍しくもない。

現に私自身、この所得は課税対象なのは分かるが、どの所得区分(十種類あり、計算方法がそれぞれ異なる)なのか迷うことは珍しくない。法令を精読しても、複数の解釈が可能だし、通達集や質疑応答集にも該当する事例はない。ただ近似の事例から推察するしかない。

迷った末に自分なりに納得した申告書を作成し提出してから、やっぱりあれは訂正すべきだったのかも?と迷うことさえある。同じ悩みを抱える税理士の先生方は少なくないし、税務署の職員も同様だ。

せっかく申告会場で相談して申告書を作成し、提出して納税までした。それなのに数か月後に呼び出されて、申告書の内容に間違いがあると言われたら、誰だって納得いくわけない。追徴税額を納めねばならぬだけでなく、過少申告加算税や延滞税まで納めねばならぬ。これじゃあ頭に来るのも良く分かる。

いささか暴言なのは承知しているが、納税者に税務当局が明確な判断を示せないような新しい経済行為による所得について,その是正のための修正申告に過少申告加算税を課すことは止めたほうがいいと思う。利息である延滞税は致し方ないが、罰金的性格の強い加算税はこの場合相応しくないと思う。

コメント
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