ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

葬儀屋の未亡人 フィリップ・マーゴリン

2009-10-26 12:57:00 | 
どんでん返しのマーゴリンお得意の法廷サスペンスだ。

今回も最後の最後で、どんでん返しをかましてくれる。伏線がいくつも引かれているので、マーゴリン馴れしている読者ならば、けっこう気がつくかもしれない。

マーゴリンのイリーガル・ミステリーも本作品で6冊目であり、すべてを読んでいる私としては、今回のどんでん返しは或る程度予測のつくものであった。

やっぱり推理というか、予測が当たるのは嬉しい。でも嬉しいが、少し物足りなく思うあたりが、ミステリー・ファンの難儀なところだ。

マーゴリンの魅力は、なんといっても読者の予想を裏切るそのどんでん返し度にあると思うので、その意味では物足りないと感じてしまうのだ。

ちなみにミステリーとしての完成は決して低くなく、グイグイと読者を引き込む文章の冴えは水準以上だと思う。実際、売れ行きは好調であったと記憶している。

ただ、あの名作「暗闇の囚人」や「黒い薔薇」あたりと比べると衝撃度に物足りなさを感じてしまう。あのどんでん返しは凄かった。あれほどの衝撃は、滅多にお目にかかれない。それだけに、殊更厳しく評価してしまう。

もし初めて読んだマーゴリンの作品が本作ならば、十二分に名作と評価するに違いない。最初にとんでもない美食を味わったが故に、普通の料理では物足りないと感じる贅沢な悩み。

こんな我が侭な読者を抱える小説家は大変だと思う。今も現役の弁護士として、しかも刑事訴訟専門として奮闘するマーゴリンには是非とも頑張って、更なる衝撃的作品を期待したいです。
コメント
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