ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

最悪の仕事の歴史 トニー・ロビンソン

2009-10-05 12:45:00 | 
自分に合った仕事ってなにさ?

昨今、よく耳にするのが「自分に合った仕事がない」って奴だ。私が特に嫌いな科白でもある。口には出さないが、何で手前に仕事を合わせねばならないのだ?と心のうちで毒づいている。

だいたい、まず第一に仕事に合わせて自分を変えるのが先だと思う。笑顔の接客が必要なら、笑顔をいつでも出せるよう練習するものだ。人前で話すのが苦手(私がそうだが)なら、話せるよういろんな努力をしてみて、自らの向上を目指すのが筋だと思う。

それを自分に合わないなどと愚痴って、すぐに仕事を辞める。仕事のために自分を変えようとする努力もろくにせずに、安易に誤魔化すとしか思えない。自分を甘やかしておいて、気取るな!

第一、仕事の面白さや醍醐味なんざ、一年や二年で分る訳がない。たかだか20年程度生きてきた若造に、なんで仕事が簡単に理解できようか。まず3年は頑張ってみるべきだ。仕事を或る程度こなせるようになってから、改めて自分が望む仕事とは何かを問うのが本筋だと私は思う。

それにしたって現代の労働事情は恵まれている。人類の歴史のなかで、これほど労働者が保護されている時代があっただろうか。

表題の本は古代から現代までのイギリスの労働事情を紹介している。歴史の教科書ではまず取り上げられることのない最低の仕事ばかりだ。

危険な岩壁をロープ一本で降りる海鳥の卵取りであったり、火薬の製造のためのし尿採取の仕事であったり、はたまた黒死病で死んだ遺体専門の回収業であったりと、ろくでもない仕事ばかりを取り上げている。

以前、パリサーの「五輪の薔薇」を読んだ際に、19世紀のイギリスの労働環境の悪さに呆れたが、なんてことない。古代、中世からイギリスにはろくでもない仕事がわんさかあっただけなようだ。

私の想像だと、この劣悪な労働環境に匹敵するのはシナとインドだと思うが、この本ではあくまでイギリス中心でしか取り上げていないのが残念だ。

いずれにせよ、現代日本の労働環境なんざ天国での仕事としか思えない、過酷な仕事が当たり前の時代が長かったことが良く分る。つまるところ、日本は豊かになり、本当の過酷な労働がどんなものだが忘れてしまったのだろう。

豊かさは、幸福なことでもあるが、反面不幸に耐えうる強さを奪ってしまうのかもしれない。今日の豊かさは先人の艱難刻苦の結実であり、我々はそれを後から食んでいるに過ぎないはず。

いつか罰が当たるんじゃないかと思うよ。
コメント
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