ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

ミャンマーに思うこと

2008-05-19 12:28:14 | 社会・政治・一般
軍事政権は悪の政権なのか?

戦後の日本のおかしな常識の一つに、戦争とか、軍とか兵器などを悪いものと決め付けることがある。戦争を否定すれば平和が訪れ、軍をなくすことが平和につながると考え、兵器が平和を乱すと思い込む。

だからこそ、ミャンマーの軍事政権は批難されるのだろう。台風で被災した人々への国際救援を拒むとは、ミャンマーの軍事政権は言語道断だと批難する。でも、私は国際援助を拒否するミャンマーの指導者たちの考えも、分らなくはない。今更、信用できるかと思っているに違いない。

ビルマ王国は、シャム(現タイ)やカンボジアと並ぶ東アジアの伝統的仏教国だった。時折隣国との戦争を繰り返しながらも、穏やかな国家であったと思う。

しかし、イギリスの植民地支配を受けてから、国情は一変した。ビルマは、最大のビルマ族を始めとして7つの部族からなる連合王国だった。イギリスは、この部族が互いにいがみ合うように、ビルマの地を支配した。この過程で、旧ビルマ王朝の行政機構は分断破壊され、地方の部族のためだけの役所になりさがった。

第二次大戦後、イギリスは植民地支配を放り出し、残されたビルマを統治するのは軍隊しか残されていなかった。軍隊は警察と異なり、移動する行政機関としての機能を有するからだ。

イギリスの分断支配は、民族間の争いに火をつけ、カレン族やカチン族などが独立闘争を始めた。冷戦のため、アメリカ、ソ連、中国なども干渉してきた。

最大多数のビルマ族としては、国を守るためには軍事政権以外ありえなかった。西側も東側も、ビルマ国内の内戦に、様々なかたちで干渉してきたため、未だ国内を完全には統治できていないのが実情だ。ミャンマー政府が、外国からの援助を素直に受け入れできないのは、ある意味当然だと思う。

ついでだから書いておくと、日本でもカレン族の独立闘争に対する民間の支援は、けっこう長いこと行われていた。それとは別に政府のODAもミャンマー政府にされている。ミャンマーの人が、日本人に不信感をもっても全然不思議ではない。

もし、今のミャンマーに民主主義を持ち込めば、あっという間に部族同士の利権争いが始まり、じきに内戦が再発するだろう。互いの部族が、国よりも自分の部族の利益のみを主張しあい、話し合いで解決がつかず、結局戦いで白黒つける。これが現実だと思う。その内戦の結果、インド洋への抜け道を模索する中国の傀儡政権が生まれる可能性すらある。

だからこそ、ミャンマー政府は最大の援助国中国への警戒心を隠せない。さりとて、欧米の民主主義の押し付けは受け入れできやしない。西側マスコミにヒロイン扱いされているアウン・サン・スーチー女史なんざ、ビルマを混乱に貶めたイギリス人の夫をもつ、国内に混乱を持ち込む悪女扱いが実態だと思う。

私は民主主義の国で育った人間だから、当然に民主主義を支持するが、それでも民主主義を万能薬だとは考えていない。軍事政権のような強力な政府が必要な場合もあると思う。ただ、軍事政権は経済成長には向かないので、国内が安定した後、ゆるやかに民政化するのが望ましい。少なくとも台湾や韓国はその手法で成功している。

今のミャンマーに、民主主義は似合わないと私は思う。
コメント (5)
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