ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「宇宙の戦士」 ロバート・A・ハイライン

2008-05-27 12:21:42 | 
ハイラインが続きます。

この作品は、ヴェトナム戦争当時に書かれただけに、既に反戦運動が盛んであったアメリカ国内でも、相当に物議を醸した問題作だった。なにしろ、ヴェトナムでの悲惨な戦争の姿が報道され、反戦運動で国論を二分する最中に、徹底した戦争肯定の立場で書かれたSF小説なのだ。

しかし、日本ではほとんど騒ぎになることはなかった。もしかしたら、既に政治活動から遠ざかっていたがゆえに、私の耳に入らなかっただけかもしれない。でも、大騒ぎにならなかったことだけは確かだ。

今にして思えば、文壇からは低く見られたSF小説であるがゆえに、見逃してもらえたのかもしれない。当時の日本の良識在る大人たちのあいだでは、SFはまともに議論する対象とはみなされなかったからだ。

このまま過去の名作入りかと思ったが、ハリウッドが映画化したことで、再び注目を集めた。原作を読んだことのない方も、映画「スターシップトゥルーパーズ」を観たことはあるかもしれない。あの宇宙昆虫と、人間たちとの戦争映画だ。

あのワラワラと湧き出る巨大な宇宙昆虫の出来は、なかなかに良し。さすがハリウッドと言いたいところだが、ハイラインの原作のイメージはガタガタだ。歩く戦車とでも言うべきパワードスーツはどこいった?

日本の早川SF文庫版では、立派なイラストが添えられて、実に楽しいものとなっている。やっぱり未来戦争を描いたSFはこうでなくっちゃ。どうもハリウッドは、宇宙カマキリと人間との戦闘に力点をおいたらしい。まあ、このほうが主演する俳優たちをクローズアップ出来るのは確かだ。パワードスーツに閉じ込めちゃ、俳優が見えないしね。

もし映画しか観ていないようでしたら、是非とも原作をどうぞ。親子の対面の場面なんかは、小説の方が出来がいいと思います。
コメント (6)
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