ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「パーフェクト・スパイ」 ジョン・ル・カレ

2007-01-24 09:39:22 | 
年末から今年にかけて、悪戦苦闘していたのが表題の作品を読むことだった。

いろいろと雑事があり、読書に集中できなかったのもあるが、なによりも作品が重厚で、複雑で、饒舌で、なかなか全体像を掴めなかった。

親子の縦の糸。夫婦の横の糸。斜めに展開する仕事の糸。時折錯綜する友人と女の糸。様々な糸が絡み合い、縺れ、千切れて、結ばれ直される。

様々な角度から、主人公を照らし、抉り出し、さらけ出す。上下巻の後半になってようやく全体像がぼんやりと掴めてくるから、恐れ入った。

ジョン・ル・カレという作家は、スパイ小説の大家として著名だが、これほどまでにスパイ一個人の内面に踏み込んだ作品はなかったと思う。もともと重厚な文章で知られた人だが、これほど複雑で錯綜し、積み重なった構成の作品も初めてではないか?

私は日本が平和であって欲しいと思っている。しかし細長く海に囲まれ、原材料や食料の大半を輸入に頼る状況が、単独での国防を難しくしている。それゆえ、強い国との協調が欠かせない。そして、軍事力だけでは国防は難しいので、情報力(諜報力といってもいい)を身につけることが重要だと考えている。

しかし、ル・カレの作品を読むと、とてもじゃないがスパイは日本人には不向きと思わざる得ない。こんな精神構造、想像もつかん!少なくとも欧米を暗躍していた、このようなタイプのスパイは、日本には向かないと思う。

現実問題、日本政府の情報収集力はお粗末だと思うが、その一方情報収集と分析が十分出来ていなかったら、日本の民間企業がこれほどまでに世界に進出することは出来るわけない。多分、日本人には、日本人に向いたやり方があるのだろう。なぜに政府には出来ない?諜報とまでは言わないが、民間の情報収集力をもう少し活用したほうが、いいのではないか。

最近、在日外国人たちの口コミの情報力に驚かされることが、しばしばありました。他所の国で生きていく為には情報が重要であることを、なにより理解しているのが在日外国人たちでしょう。日本人だと、海外にいても大使館というお役所を頼りにしますが、どうも外国の人はそれほど自国の政府を信用していないらしい。だからこそ、自分たちの生活は、自分達の情報力で守ろうとする意識が高いのだろうと考えています。

日本人に向いた情報力って、何でしょう?少なくとも欧米型の諜報活動は向いてない気がします。資源もなく、国土も狭い日本では、今後情報の重要性が高まると考えざる得ません。少なくとも、平和憲法とやらにすがり付けば、平和は守られるといった妄想からは、早々に脱却していただきたいものです。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする