のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

「子供や孫に死ね、殺せという覚悟」って。

2013-07-19 | Weblog
まずは、もう皆様とうにご存知だとは思いますけれども、念のためご紹介しておきますね。

2013年参院選 毎日新聞ボートマッチ「えらぼーと」

例えば「憲法改正に反対ですか、賛成ですか」といった設問に対して、あなたの関心の高さを示す3段階の度合いと、その設問に対して「賛成」「反対」「無回答」のどれかを選んで行くことで、あなたの考えに最も近い政策を掲げる政党を割り出せるというサイトでございます。
そのトピックに関する簡単な用語説明や背景解説を読むこともできます。最後に自分の回答を見直し・訂正できるページも設けられております。結果が白黒ではなくパーセンテージで示されたり、自分の選挙区の候補との一致度を見ることもできたりして、わりと面白いので、まだというかたはぜひ一度やってみてくださいませ。


さて。
本題でございます。
これももう皆さんとっくにご存知かもしれませんが、念のため。
以下、黄色い文字の部分は引用文。

「お母さん、あなたの息子やお孫さんが、あの小さな島のために死んでくれますか。人殺しをしてくれますか」
こうした国家からの重たい要請に、喜んでとまでは言わないまでも、少なからぬ決意を持って「わかりました」と応じてくれる国民が、どのくらいいるのでしょうか。少なくとも過半数はいないと、「毅然たる外交」なぞ、誰が総理になっても夢のまた夢です。  


今回の参院選に京都から立候補してらっしゃる、民主党・北神圭朗氏の文章です。
上の引用だけでもお分かりかとは思いますが、国土を守るための犠牲を払う覚悟が国民になければ、政権としては強気の外交などできないのだ、という文脈でのご発言です。
全文はこちら。

尖閣問題で感じた、我ら日本人のビビり根性 | 日本とはどんな国なのか? 「大きな物語」としての日本 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

ええと。

「私たちの子供や孫が、小さな島やなんかのために死んだり、人殺しをしたりしなくてもいいように、私たちは一生懸命、全力を尽くして、暴力以外の方法で外国とのトラブル解決に取り組みます」という覚悟をうたっているのが、今の日本国憲法の、あの有名な9番目のやつですよね。氏のマネをして「意訳」してみましたけれども。
ワタクシにはこっちの覚悟の方が、自分たちの子供や孫に、死ぬことや人殺しをすることを期待する「覚悟」よりも、よっぽどといいもののように思われるのですが。

(最大限好意的に考えるとすると)おそらくこの「死んでくれますか」の一節は単なるたとえとして持ち出したもので、わざと極端な言い方をしたものではございましょう。

けれども。
ワタクシはこれを読んでギョッといたしましたし、全文を読んでなおさら暗い気持ちになりました。

ワタクシには子供はおりませんが、知人にはまだ小学校へも上がらない小さい子や、中学校へ通い始めたばかりの子供を持つ人がおります。窓の外では今日も近所の子供たちが、「だるまさんがころんだ」に興じてきゃあきゃあ言っております。
よしんばたとえであったとしても、この子供たちに向かって「小さな島」のために死になさい、人殺しをしなさい、などと言う「覚悟」は、ワタクシにはございません。持ちたいとも思いません。
むしろ「小さな島」なんぞのために死んだり、人殺しをしたりしなければならないことになったら、全力で逃げなさい、隠れなさい、と言いたい。むしろ「隠れるところがないなら、何も持たなくていいから、うちへいらっしゃい」と言う「覚悟」ならば、持ちたいと思う。

加川良 「教訓 I」 Kagawa Ryo "Kyokun I" (Lesson One)


「青くなって 尻込みなさい 逃げなさい 隠れなさい」...とね。何と優しい旋律であろうか。

「小さな島」が問題なのではございません。ジョークならともかく、何であれ「それのために死ね、それのために人を殺せ」ということを真面目に語る気には、ワタクシはとうていなれません。「私はそれのためならば死のう」という覚悟なら、まだしも本人の勝手でございます。命を賭けて何かをなそうと、あるいは守ろうと、なさるのは結構です。しかし、そこで賭けられているのは自分の命であって、他人の、ましてや決定権を持たない子供たちの命であってはならないはずでございます。

北神氏はこのあとに
「事が起きたら、自衛隊や米軍が適当に頑張ってくれるだろう」という、甘ったれた、無責任な、傍観的な態度は許されないのです。
とおっしゃっておりますけれども、ワタクシは自衛隊や米軍の兵士たちにも、死んでほしいとも人殺しをしてほしいとも思いません。だから今の憲法の前から9番目を変えてほしいとも思いません。
また「子供や孫たちに”死ね、殺せ”と言う覚悟が国民にないようじゃあ、外交がままならなんだよね」とおっしゃるような政治家も政府も、全力で願い下げでございます。
もちろんこういう党↓も。
石破自民党幹事長「国防軍は戦争に行かなければ死刑か無期懲役か懲役300年」そんな党に投票しますか - Everyone says I love you !

でも、この夏以降、きっとだんだんそういう国になっていくんだろうな。
ずっと前にそうだったみたいに。
あらかじめたっぷり絶望しておいて、それでも、投票へは行きますよ。
振り返った時に「あの時私は何もしなかった」と思いたくないから。