のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

今年の年賀状

2011-01-07 | Weblog
うう
やる気ない

年々歳々人生への情熱が失われてきているような気がいたします。
そんなものもとからなかったじゃないかと言われればまったくその通りでありまして、『魔の山』のセテムブリーニ氏がここにいたならば片手でひらひらと頭上を払うような身振りをしながら、無為に費されていく人生をいともぴちぴちとした美しい言葉で嘆いた上で、うだうだしてないで人類の進歩発展に貢献できるよう今すぐ行動しなっさーい と激を飛ばしてくれたことでございましょう。
しかし残念ながらワタクシはスイスのサナトリウムに入って7年を過ごすにはお金が不足しており、病気も不足しており、従って優雅な身振りで叱咤激励してくれるセテムブリーニさんにもこと欠いているのでございました。人生に対する消極性という点ではワタクシも主人公のカストルプ君にひけを取らないんだがなあ。

それはそうと今年の年賀状でございます。



ゴム版一色刷り手彩色にて製作。
当初は黒ウサギが歯を磨いているデザインで考えておりました。ただそうすると黒ウサギが歯磨きの広告に乗せられて少しでも白ウサギに近づこうと努力しているような印象もなくもがなであり、それはずいぶん嫌でしたので、そもそもの主役を白ウサギに変更いたしました。絵的にはやっぱり、中央に黒があった方が画面が引き締まってよかったでしょうね。

毎年こんな手間かけてこんな意味不明な年賀状作ってもいったい誰が喜ぶんかなと思いながらも毎年こんなことになってしまうのは何故なのか。受け取って嬉しいのは製作に手間のかかった年賀状よりも、真心のこもったひと言が書き添えられた年賀状の方に決まっております。しかしその「真心のこもったひと言」というものがどう頭をひねっても出て来ず、かつ社交辞令的な当たり障りのないひと言を書き添えるのはどうしても嫌なワタクシとしては、結局手間のかけようで誤摩化すより仕方がないのでございました。

さて年末から読みはじめた『魔の山』はようやくあと約4分の1を残す所までたどり着きました。カストルプ君の暮らすサナトリウムにはショーシャ夫人がペーペルコルン氏と連れ立って戻ってまいりました。ここから先はまたカストルプ青年のマダム・ショーシャ恋慕に付き合わされるか思うと、レントゲン写真に映し出された肺の影の如く、一抹の憂鬱がワタクシの胸中をかすめるのではございました。
でもセテムブリーニさんの行く末が気になるからがんばって最後まで読もうっと。