読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『なぜ、江戸の庶民は時間に正確だったのか?』

2009年01月23日 | 人文科学系
山田順子『なぜ、江戸の庶民は時間に正確だったのか?』(実業之友社、2008年)

最近遠ざかっていた江戸物です。時代考証家という肩書きがついているが、別に日本史を大学で勉強したわけでもないようだが、高校生の頃から時代考証を生業にしようと思っていたという人らしいから、そういった関係でテレビの仕事にも関わるようになったのだろうと思う。

よく読んでいた石川英輔さんのように、一般の江戸認識を翻してやるというような意気込みで書かれたわけではなく、ちょっと雑学読み物風に書いてある。

江戸の長屋は上下水道完備とか人糞が肥料として売られていたので江戸の街は人口の割にはきれいだったという話など、すでに知っているものから、ねずみ小僧は千両箱を重たくてとても担げなかったはずだとか、江戸時代の主婦はほとんどお惣菜や簡単に料理できるものを売りにきたところから買っていて自分でそれほど手の込んだ料理はしなかったとか、浄瑠璃や常磐津がはやっていて常磐津のお師匠さんがたくさんいたとか、お辞儀のパターンが武士の場合は何通りもあってそれがきちんとできないと命に関わるほどだったという話とか、着物の上から人を切り殺すのはちょっと難しいというような、あまり知らなかった話が、ちょっと物足りないくらいに広く浅くの雑学が披露されている。

上にも書いたけど、けっして従来の江戸社会観をひっくり返して真実に近いそれを提示しようというような考えがあって書かれているわけではないので、ほんとうに物足りないといえば物足りない。やはりそういう意味では、いろいろ批判はされているようだけど、ほんの100年くらい前のことなのに、明治維新という近代化によって破壊されてしまった近世の江戸社会の真の姿を取り戻そうとする石川英輔さんの労作は貴重なものだと思う。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『赤朽葉家の伝説』 | トップ | 『パリ20区の素顔』 »
最新の画像もっと見る

人文科学系」カテゴリの最新記事