読書な日々

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『パリ20区の素顔』

2009年01月24日 | 人文科学系
浅野素女『パリ20区の素顔』(集英社新書、2000年)

フランス人と結婚してながくパリに住んでいる著者が書いたこのパリについての本は、普通のパリ案内ではなく、この著者にとっての「私のパリ」である。そしてパリはだれにでも「私のパリ」があると思わせる街だというようなことを書いているが、まさにそのとおりだ。パリに住んだことがない私でさえも、「私のパリ」があると思っている。そんなパリを書いてみよう。

この著者もこの本の中で書いているが、キオスクなんかで Plan de Paris という手帳くらいの大きさの地図帖というか本のようなものを売っているが、これは住所が分っているとどんなにややこしい場所でもすぐに見つけることができるすぐれものの本で、私も初めてパリに行ったときにすぐにこれを買った。ところが現物を見たこともなく、またフランと円の換算の感覚もなかった頃なので、キオスクでいきなり50フランだといわれて、そんなものかと思って買ったが、よく考えてみると6~7000円に相当することが分って、これは旅行者だと思ってふっかけやがったなと後で後悔したことを覚えている。その地図帳を見ながら書いてみよう。

1区は、セーヌ川右岸のルーヴル美術館チュイルリー公園、リヴォリ通り、サントノレ街、ヴァンドーム広場、オペラ通りの下半分、レアールというたぶん一番狭い区になる。このあたりは本当に何度も行き来したところだ。チュイルリー公園は観覧車やメリーゴーラウンドがある公園で、娘がまだ学生の頃に、人と会う約束があったので、この公園で娘を待たせていたら、その数時間のあいだに3人くらいの男がナンパしてきたというからフランスの男はずいぶんのコマメだと感心した。レアールというのは、かつての卸市場だったところで、再開発のために、ダイヤモンドカットといって、斜めに地面を掘り下げて地下のどのフロアーも外光がたくさん入るようにしてできたショッピングセンターである。この地下にあるフォーロム・レアール駅はRERのA線B線メトロが2本くらい交差するところで、その混雑ぶりはものすごいせいか、機関銃を携帯した警察官が常時パトロールするような怖ろしげな駅でもある。私はできるだけこの駅を使わないようにしていた。ほんと、なにが起きるかわからないようなところ。

2区は、1区の北にあたる。オペラ通り、オペラ座、オスマン大通りの南側、旧国立図書館などがある。これも狭い区だ。ここも1区と同じくよく行き来した区の一つ。ひと夏をパリで過ごしたときに、旧国立図書館のそばにある音楽関係の分館に通っていたので、昼休憩にパサージュ・ショワズールで昼ごはんをたべたりした。このパサージュはこの本でも紹介されているが、庶民的なパサージュで、9月4日街に面した出口近くには日本語の使えるインターネットカフェがあるので、そこをよく利用して日本とメールのやり取りをしていた。たぶんまだやっていると思う。その隣には古本屋があって、本をみているだけでもけっこう楽しい。中華の店やすしレストランやピザのテイクアウトもできる店もあったりして、昼食や休憩に便利だった。そしてこのあたりは日本食レストランや京子食品なんていう日本の食材を売っている店もある。この界隈には日本人が多いのだろうか?私がよく行ったのは金太郎ラーメンだ。ここの店主は日本人で米もジャポニカ米を使っているし、ラーメンが主体だが、うどん、カツどんなどなんでもあるレストランで重宝した。

5区は、カルチエ・ラタンのある区で有名。このあたりにも日本レストラン、韓国レストランその他がたくさんある。5区の南端になるRERのポール・ロワイヤル駅のすぐ前にあるHotel Belle Vueというホテルに泊まったことがある。駅前の割りに二つ星で安かったし、ホテルからすぐ前に、この本でも紹介されているクロズリー・デ・リラというカフェ・レストランがみえた。この区にはほんとうにたくさんの大学やエコールがある。

6区は、5区の西側で、サンジェルマン・デ・プレとリュクサンブール公園がある。サンジェルマン・デ・プレ教会はパリの教会の中で最も古いほうで、しょっちゅうミニコンサートをやっている。有名な文学カフェなんかもあるところなので、いつもにぎわっているが、予約もいらないでコンサートが聴ける。この本では作家ソレルスのことが書かれているが、たしかに古本屋などもたくさんあるところで、本屋めぐりをするのも楽しい。

8区は、シャンゼリゼ、オスマン大通り、モンソー公園、サンラザール駅がある。娘や息子の買い物につきあわされて何度シャンゼリゼを行ったりきたりしたことだろう。ジョルジュ五世通りやルーズベルト通りやサントノレ通りにはルイ・ヴィトンとかシャネルとかといった高級服飾店が軒を並べている。

9区には、北駅、東駅がある。初めてフランスに来たときに到着したのが北駅だった。なぜかしらないが、ロンドンに着いた私はフェリーを使ってダンケルクに着き、そこから電車で北駅までやってきた。知り合いに電話しても留守で、しかたなく予め調べていたHotel d'Europeに投宿した。その頃はあまり商売っ気のない人がやっていたらしく、古ぼけたホテルだったが、今ではオーナーが変わったらしく、内装もきれいになって、インターネットにもサイトをもっている。それ以来このホテルには泊まったことがないが、北駅のイメージがあまりにも悪すぎたから。昔のターミナル駅よろしくなんとも言えず猥雑な雰囲気だった。コインロッカーはほとんど壊れているし、なんか怪しげな人がうろうろしているし。それに比べると東駅は違う国の駅みたいに雰囲気がいい。こじんまりしていて、こぎれいで。この本でも紹介しているように、かつてはここから西部戦線に兵士が出兵していき、ユダヤ人がアウシュビッツに向けて送還されていったという血塗られた歴史があるにしても、それを感じさせないような穏やかな雰囲気を持った駅だ。

あれやこれや書いても書き足りない。でもまぁどこまで行っても自己満足に終わる作業に過ぎないだろうけど。

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