『日本語の大疑問 2』(国立国語研究所)からの転載です。
○【】ごなど、いろいろな括弧をどう使いわければよいですか
情報を目立たせたいか、目立たせたくないか、みなさんは、普段どのような括弧を使っていますか。
最初に思いつくのは、かぎ括弧と丸括弧(パーレン」や、単に「括弧」ともいう)だと思います。かぎ括弧「」は、1.の例のように文をくると会話文であることを表します。これは、小学校の国語科の教科書にも書かれているので、みなさんもご存じだと思います。ですが、次の2.から4.までの例のように、かぎ括弧は会話文以外でもよく使われています。
I.「そんなこと言ったって、しょうがないじゃないか。」
2.岩崎拓也(2016)「中国人・韓国人日本語学習者の作文にみられる句読点の多寡」
3.外国語として日本語を学ぶ人にとって、「は」と「が」の使い分けはとても難しい。
4.私は「乱切り」の蕎麦のほうが好きです。
2.では論文の題名に、3.はメタ的な語(地の文とは異なる、概念的な語の使い方)にい4.では強調したい語に、それぞれかぎ括弧が使用されていると考えられます。このような使い方は、学校では習わないものです。
では、それ以外にどのような括弧があって、どのように使われるのでしょうか。次ページの表に括弧の種類と名前、括弧のなかで使われやすい内容を簡潔にまとめてみました。
これらは、日常的に使われる括弧を取りあげたもので、そのほかにも[]や《》など、場合によってさまざまな括弧の使用が見られます。このように、括弧の種類はさまざまですが、どの括弧を使わなければならないか、というようなルールは存在していません。つまり、書き手加読み手にわかりやすく示せるように試行錯誤している、というのが現状です。
ですが、括弧の機能を考えてみると、情報を目立たせたいか、日立たせたくないか、ということで使いわけができると思います。
【】はメールやビジネス文書。
()は注釈やツッコミで活躍
以前、私はビジネス文書の研究をしており、クラウドソーシングにおける発注文書を分析していました。この発注文書の見出し2万8896件を調査した結果、最も多く使用されていたのは、【】(隅付括弧)で62%、次に多かったのは()(丸括弧)で26‰、「」(かぎ括弧)は8‰のみ、という結果でした。さまざまな括弧があることは先ほど述べましたが、ビジネス文などの見出しにおいては、これら3種類の括弧だけで全体の96%を占めていることがわかりました。
では、最も多くみられた隅付括弧の実例をみてみましょう。
5.【至急】ウェブデザイン変更のお願い
6.【7/17/〆切】記事作成のソマインド
隅付括弧は黒い部分が他の括弧よりも多く、非常に目につきます。ですので、右の2例のように、用件を端的に表す表現を隅付括弧のなかに書くと、読み手に内容がすぐにわかります。この隅付括弧はメールでも多様されています。
このように隅付括弧を使うことで、情報を目立たせることができ、どういう類のメールが来たのかが本文を読まずともわかるようにかっています。
目立たせるための括弧があれば、目立たせないための括弧もあります。それは、丸括弧です。丸括弧は、地の文にすると冗長となる情報を書くことによって、文をスッキリみせることができる符号です。以下の7.では、「I階のホール」の場所の詳細が述べられています。また、8.では、急には来訪しないことを、昔のテレビ番組に喩えて冗談のように言っています。
7.先に1階のホール(正面の玄関入ってすぐのところです)に集合してください。
8.伺う際には事前に連絡しますので、ご安心ください。(「突撃!隣の晩ごはん」みたいに急に行きません笑)
丸括弧は、地の文に書くと複雑になってしまう情報や、わざわざ地の文に書くほどでもないことに使うとよいと言えるでしょう。(以上)
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