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How to pronounce “ 南無阿弥陀仏

2020年03月05日 | 浄土真宗とは?
言語学関連の話です。言語学者に氏平明(新潟リハビリテーション大学)という方が、音の『How to pronounce “ 南無阿弥陀仏』という論文を書いているのを見つけました。「氏平明」で検索したら出て来ますので、本文を見てください。興味ある部分だけ転載します。

 浄土真宗の開祖である親怩聖人(1173-1263)がこれに充てられた漢字は「南无阿彌陀怫」である。直筆が西本願寺に現存する。「无」は[無]と意味は同じだが、「无」にはmoの音がある。
そして14世紀の南北朝時代に入ると、名号や仏の名の前に「无」と「無」が併存するようになる(出雲路2009)。経文の漢字は万葉仮名のような音の当て字が多い。これらもその類と考えられる。語源から辿ると、「南無阿弥陀仏」の「南無」は「南无」すなわちnamoである。

親鷺聖人が叡山等で学んだ原典の発音を踏襲していれば、/namoamidabutu/と唱えられた可能性が高い。
 「む」に対する漢字が「无」より[無]のほうが一般的になり、「無」にはmoの音がなかったので「なむあみだぶつ(南無阿弥陀仏)」が流布しかと考えられる。しかし門徒・同朋(浄土真宗信徒)においては、オリジナルを重視したので「なも」が残った。

 正信念仏偈につづく念仏和讃
 正信念仏偈につづく念仏和讃で,[南無阿弥陀仏]は[なもあみだんぶ]> na,.mo,.a,.mi,.da,n,.buの6音節7モーラ),が主な唱え方である。なぜ「なもあみだぶつ) (na,.mo,.a,.mi,.da,.bu,.tu,の7音節7モーラ)からna,.mo,a。ni,.da,n,.buの6音節7モーラになったのか。
 この変化が近世で生じていたなら,「なもあみだぶつ」の[つ]にヒントがある。日常勤行の聖典が整備されたのは蓮如上人(1415~1499)以降と言われている(黒田伸明・岡村喜史他2011)。 na,mo,.a,.mi,.da,.bu,.tu,。の音声が定着して,これは7モーラであるが,実際の発音では,さいごの/tu/の/u/が無声化し,その/u/に前接する/t/は無声の破裂音(閉鎖音)で聞こえ度が最小なので,単独では非常に影が薄い。
この母音の無声化は江戸時代に始まる(沖森1992)と言われている。ただし京阪方言では任意で一定していないとされるが(氏平2014)。
 語末の発音はないがしろにされがちである。特に無声子音に後続する/u/や/i/や[ん]や母音の引く音等もそうである。なぜならそれらがモーラとしての半人前の特殊モーラや,聞こえ度が低い狭母音で,母音の存在感が薄い上にその場所の情報価値が低いという二重の要因が重なるからである。例えば,「~です(/u/の無声化)],「ちょうちよ(う)」,「にょうぼ(う)],「せんせ(え)]等でもそれが見られる(氏平,窪薗2000)。したがって[なもあみだぶつ]の「つ」は,母音の無声化> /t/の聞こえ度の低さ,そして語末に位置することから弱化していって「なもあみだぶ」となった。
 つぎに「なもあみだぶ」から「なもあみだんぶ」への変化であるが,落語の枕によく使われる「売り声」についての解説が適切な例を示している。野菜売りの「だいこん,だいこん」「ごほう,ごほう」の語末の撥音の「ん」や長音の「う」では弱くて締りがなくなる。それで[だいこ,だいこ]「ごんぼ,ごんぽ」となると解説される。ここで「だいこ」が語末の特殊モーラの撥音「ん」を削除して,「だいこ」になったのは音節単位で,「ごんぼ」はモーラ単位で,補償効果の処理がされていると考えられる。補償効果とは,省略や発音の経済性から新しい形に変化した後,何か起源であるかの形跡をおくために,元の形と同じ長さを保つ方略である(窪薗・本間 2002)。

方言周圈論やモーラの音韻単位としての成立時期を考慮すると、「だいこ」や[でこん]のほうが、「ごんぼ」より古い形の変化の可能性がある。 この[ごほう]から「ごんぽ」への変化が「なもあみだぶつ」から「なもあみだんぶ」への変化と同し方略が使われている。「ごほう」の「う」を削除して、「ごぽ」に1モーラの分節音を加えて、原型と同じモーラ数を保つ。「ごぼ」だと音節数は一致するがモーラ数が合わなくなる。語末は売り声のための余韻を保つためにCVの自立モーラでVを伸ばす。[ごほう]では語末が特殊モーラの伸ばす音(長音)だったので、それをまた伸ばすと余韻の力が減衰し締りがなくなる。それで「ぼ」で終わりにする。つぎに、モーラ数を保つために経済性の高い挿入の分節音が選ばれる。挿入だからその音韻単位としての地位を低く、特殊モーラ(半人前)とし、経済性には発音の便宜がはかられるものが選択される。撥音(「ん」)は[鼻音性]以外の音声の指定がなく、語中では同器官性の逆行同化という経済的な音声の移行でその調音の位置が決まる。それで[ごんぼ]の「ん」は後続の「ぼ」の/b/と調音の位置を一致させて/n/が[m](/gonbo/ IPA:[gombo])となる。
 すなわち「なもあみだぶつ」では、「つ」の/u/が無声化し、それから語末の/t/の削除がお
こり「なもあみだぶ」の6音節6モーラとなる。この6音節6モーラの「なむあみだぶ」という発音も人口に膾炙している。母音の無声化が生じた時期には上方ではモーラが定着していたと思われる。したがって「なもあみだぶつ」の7モーラを維持するために「なもあみだぶ」に省エネモーラの撥音を語末(本来のモーラ消失位置)に近い語中に入れると、それが/bu/に前接する/n/になる。特殊モーラ(半人前)で後続する/b/と同化し、同じ唇を使う連続上の動きとなり、[なもあみだんぶ]の7モーラとなる。(以上)
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