仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

なぜ心はこんなに脆いのか

2022年04月12日 | 苦しみは成長のとびら

『なぜ心はこんなに脆いのか 不安や抑うつの進化心理学』(著者ランドlルフ・M・ネシー著)、『病気はなぜ、あるのか―進化医学による新しい理解』 (2001/4/15・ランドルフ・M・ネシー著・ジョージ・C・ウイリアムズ著)

の続編です。

 

 

本の紹介には次のようにあります。

進化論で明らかにする、心が傷つきやすい本当の理由

不安や抑うつといった症状は、一見私たちにとってデメリットにしか見えません。しかし、これらを引き起こすメカニズムが人類の歴史の中でなぜ淘汰されなかったのか、という進化論の視点に立ったとき、それらが私たちの生存のために必要な存在であったことが見えてきます。またその視点から、その機能がなぜ現代において誤作動を起こし、不安などの症状を引き起こしているのかも考察し得るのです。つらい気持ちが存在する理由を進化論で解き明かす、画期的な進化心理学。(以上)

 

この本は、進化論の視点から不安や抑うつを生む仕組みが人類に備わっている理由を考える本です。

人間の幸せとはマイナスの感情である不安や抑うつが遺伝子の生存率を高めることにどう貢献している。たとえば、抑うつ状態は不必要に行動するのを避けエネルギー消費を節約することで、過酷な環境下での生存率を上げるのに有効であった。また現状を悲観的に見積もる「抑うつリアリズム」と呼ばれる認識の傾向により、これも厳しい環境での生存確率を高めていた可能性が指摘されています。そして最後は「なぜ人生はこれほど苦悩に満ちているのだろう?」と、意味不明ですが、次のようにあります。

 

こうして私たちは大きな円を描いて、最大の問いにもう一皮戻ってきた。「なぜ人生はこれほど苦悩に満ちているのだろう?」読者の中でも特に幸運な人たちにとって、人生の始まりは、後のブッダであるシッダルタのそれと似ていたことだろう。シッダルタほど完全に甘やかされた生活ではおそらくないだろうが、多くの人は、安全な繭の中で、愛情に溢れる両親に守られて、広い世界の苦悩について知ることさえなく育つ。ようやく町に出かけることを許されたシッダルタは、強烈な唐突さで訪れる人生の痛みと悲しみを目の当たりにし、その原因と解決方法を求める探求を始めることになる、そして彼の出した結論は、すべての苦悩は欲望から発する、というものだった。この答えは、正しいように思える。もしシッダルタが現代に生きていたら、彼はおそらく、なぜ自然選択は欲望とその追求によって引き起こされる苦しみや喜びの情動を形づくったのだろう、という問いに取り組んでいたのではないだろうか。

 この問いに対する総括的な答えは、シンプルだ。私たちの脳は、遺伝子の伝達を最大化するように形づくられている。そして情動とは、特定の状況において役にたつように特化された状態だ。いった代償がありながらも、私たちの人生は生きるに値するものになる。さらに私たちには、欲望をコントロールするメカニズムが備わっている。常に完全に機能するわけではないとはいえ、そのようなメカニズムのおかげで、多くの人がユーモアや良い人間関係を携え、自分がもっていないものについてほとんど思い煩うことなく生きていける。ただし、こうしたことにはすべて、自分がほかの人にどう思われているかを過度に気にしてしまうという代償がついてくる。このような自然選択の産物は、すべてひっくるめて、多くの人の-ほとんどの人と言ってもいいかもしれない-人生を幸福で意義のあるものにしてくれる。こうして考えると、もう一度、問いをひっくり返して考えてみるべきであることがわかる。私たちは人生の苦悩に圧倒される代わりに、これほど多くの人が精神の健康に恵まれていることの奇跡に感動し、畏怖の念を抱くべきなのだ。(以上)

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