『発達障害という才能』 (2021/11/6・岩波明著)の続きです。
こうしたことには日本の種々の制度的な問題とともに、精神的な風土も大きく関係している。日本の学校や会社に飛び級的な制度はほとんど存在していないし、いまだに公務員の世界も、伝統的な大会社も多くが年功序列を維持している。社会の「空気」も、グローバル化か叫ばれながらも、柔軟に「異物」を受け入れようとする雰囲気とははど遠い。
一方で、アメリカやイスラエル、あるいはヨーロッパの一部やシンガポールには、「特異な才能」を持った子供や学生を通常とは別のルートに乗せて教育するシステムが存在している。特にイスラエルでは、いわゆる「天才教育」が国家的なプロジェクトとして継続的に遂行されている。これが「タルピオッド・プログラム」である。
イノベーション大国イスラエル
現在のイスラエルは科学技術の先端を担うイノベーション人材であり、世界中に多くのインパクトを与え続けている。タルピオッド・プログラ厶は、「技術エリート」を養成する人材育成プログラムで、イスラエルの科学立国、技術立国を実現した基盤となっている。
十分に認知されていないが、近年、イスラエルは科学技術の分野においてめざましい発屐を遂げている。この結果、現在のイスラエルは、国民一人あたりの起業数、ベンチャーキャピタル投資額、教育費、研究開発費、博上号保有数、特許数、ノーベル賞の受賞行数などで、世界のトイフクラスとなっている。
例をあげれば、最先端のIT技術には、イスラエルで開発されたものが多数存在している。インテル製のパソコンのプロセッサーの8割以上は、イスラエルで開発されたもので、検索エンジン・グーグルの「グーグル・サジェスト」や「パージ分析」「ライブ・リザルツ」などの機能もイスラエルで考案された。
さらに原子力発電所や軍事施設などのファイアウォールや、小型無人機のドローンや電気自動車などの基幹技術についても、イスラエルで作製されたものが数多く使用されている。このように数多くの科学的、技術的な成果を背後で支えているのが、タルピオット・プロダラムなのである。(以下省略)