仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

反共感論―社会はいかに判断を誤るか

2018年07月03日 | 日記
共感することは良いこと、そのようなすり込みがある中、共感しない方がよりよい結果を得ることができることを説いた本が、『反共感論―社会はいかに判断を誤るか』(ポール・ブルーム,高橋洋【訳】・白揚社・2018/02/02)です。
序分に、

私は本書で、次の三つのテーマを論じる。
  ・私たちの道徳的な判断や行動は共感の強い力によって形作られるところが大きい。
  ・そのせいで社会的状況が悪化することがままある。
  ・私たちはもっと適切に行動する能力を持っている。(以上)
とあります。

欠陥のあるワクチン接種のせいで、かわいらしい八歳の少女レベッカ・スミスが重病にかかったとしよう。彼女が苦しむところを目のあたりにし、彼女や家族の話を聞いたとすると、あなたは共感を覚え、行動したくなるだろう。だが、ワクチン接種プログラムを中止すれば、数十人の任意の子どもが死ぬとする。この場合、あなたはそれらの子どもに共感を覚えることはないだろう。統計的な数値に共感することなどできないのだから(以上)

[共感は]愚かな判断を導き、無関心や残虐な行為を動機づけることも多い。非合理で不公正な政策を招いたり、医師と患者の関係などの重要な人間関係を蝕んだり、友人、親、夫、妻として正しく振舞えなくしたりすることもある。私は共感に反対する。(以上)

私たちは直観力を備える一方、それを克服する能力[=理性的熟慮の能力]も持つ。道徳問題を含めものごとを考え抜き、意外な結論を引き出すことができるのだ。ここにこそ人間の真の価値が存在する。この能力は、人間を人間たらしめ、互いに適正に振舞い合えるよう私たちを導いてくれる。そして苦難が少なく幸福に満ちた社会の実現を可能にする。(以上)

共感することは正義であり、良いことであるという現代にあって、新しい視点を提供してくれる本です。
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