超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

Dwellers of a Sandcastle/La’cryma Christi

2012-05-06 22:29:33 | 音楽(旧譜レビュー)





最近、ずっとラクリマクリスティーを聴いてるんですが、これがすっごく良いんですよね。
きっかけがなんだったのかは正直よく憶えてないんですが・・・
なんか突然聴きたくなったのかな。
それで昔売ってしまった音源だったり、まだ持ってない音源をここ数週間で買い集めてまた聴いてたら
これまた更に良かったんですよね。残ってたアイテムは断片的なものでしかなかったので
改めてきちんと揃えてしっかり聴いてみると、こりゃ昔の自分が感じてた以上に面白いバンドだな、と。
よくマニアックなバンドって書かれる事の多いラクリマクリスティーなんですが
アルバム等を聴き直してみたら正直それがよく分かりました。
同時に、思春期の自分がなぜ離れていったのかも(笑)。
思い出しましたよ。

でも、単に懐かしいだけなら全然記事にしようなんて思わないんですが
懐かしいどころか、むしろ最近の雑多的な風潮に合ってると感じられたので
今更ですがアルバムのレビューをしたいと思って。
こんな形容間違ってるかもだけど、
実は相当にオルタナティヴなバンドだとも思うんですよね。音源聴いてると分かりますけど
ぶっちゃけ自ら売れない方向に走ったりしてますからね。それの良し悪しはともかく、
本当に自分たちのやりたい事だけを追求して勝ち上がったバンドなんだなーと
昔の音源たちを聴いててそう思えたので
今の世代にもちょっと聴いて欲しいなって思いもありつつ。実際相当にクオリティの高い楽曲ばかりです。






で、この「Dwellers of a Sandcastle」なんですけど、インディーで出したミニアルバム
今と違って当時のインディーズって本当のインディーズだった訳で
その時は知名度もくそも何もないと思うんですけど(あくまで一般的に、は)
それにしてもこの作品の出来の良さは半端ないんですよね。
一曲目から堂々のアンセムを振りかざし、
キャッチーな曲、沁みるバラード、渋い曲や棘のあるナンバーまでほぼ一通りのバリエーションを揃えてて
全5曲で30分収録という聴き応えや一曲一曲の濃厚なエッセンスのさじ加減も素晴らしいし
単純にミニアルバムとは言え、
実際はフルアルバムと同等の聴き応えがあったりします。それを、5曲で演出出来てるのが尚ベターだなあ、と。
そんな風に感じざるを得ない今聴いても全然新作として聴けるみずみずしさのある作品
それぞれの楽曲の練り込みや凝った感触もまた強く感じられる作りになってて
転調の使い方だったり、ドラマチックな盛り上げ方だったり
単純に○○っぽい~では収まらない
ラクリマ流の楽曲に対するオリジナリティが色濃く感じられるアルバム
後々にもっとポップな方面に突き抜けていくのに対してこの作品は結構にダークな雰囲気もありますが
それもまたバンドの初期衝動を感じさせていいですね。そういう周りに対するアンチ精神は
この作品以後もちゃんと受け継がれていく方向性になっていて
それを考えると本当の意味での原点であり、
かつ今でも色褪せないクオリティの楽曲が楽しめるファンならずとも聴いて欲しくはある一枚。
人によってはある意味この作品をベストとする人もいるんじゃないか、ってくらいちゃんとした作品ですね。


楽曲は全部推し!ってくらいどの曲も最高なんですけど、
個人的に聴いて欲しい一曲として「Forest」があります。
メジャーでのヒット後に「IN FOREST」としてリメイクされる名曲なんですけど
今回の再燃を期にオリジナルバージョンを初めて聴いてみて、ぶっちゃけこっちのが好きかな、と(笑)。
ラクリマクリスティーの良い部分の一つに神秘性っていうものがあると感じるんですけど
この「Forest」の方がその神秘性が色濃く出てるような気がするんですよね。
流麗なメロディーラインに想像力を煽る歌詞、
ぱっと見で判断出来るような分かりやすい詞にも勿論良さってありますけれど
でもそればっかりじゃ想像や解釈が出来ないからつまらないよねって想いも個人的にはあるので
その意味でもこの曲のような想像や解釈をするのが面白い歌詞は好きで。
「IN FOREST」ではその抽象性が薄れてるんですが
この原曲ではきっちりと濃ゆい楽曲観を堪能出来る感じで非常に好み
憂いや儚さ、耽美的な感覚が好きなら絶対気に入れる一曲なんじゃないか、と思います。
とはいえ、演奏力やシュッとした格好良さなら「IN FOREST」のが全然上ではありますが。各々の良さ、かな。

今作の中でも特にダークで歌謡曲のエッセンスも含んだ「Poison Rain」の激しさ
救われない報われない心境を歌ってる渋さ際立つ「A.S.I.A」、
聴き手を優しく包み込むような堂々たるバンドアンセム「Warm Snow」等名曲の宝庫たる作品ですが
個人的に最も素晴らしいと思えるのは4曲目の「カリブで生まれた月」です。
この曲が本当に美しく沁みる楽曲で
メジャーでヒットしたシングルにも劣らないポピュラリティと確かなメロディセンス
そして前述の神秘性も最も色濃く出ているし、輪廻転生を感じさせるフレーズの妙もやたらグッと来るし
あらゆる角度から見ても隙のない、自信を持って名曲です!と推せるナンバーであると同時に
こういうシンプルながらスケールの大きな楽曲を堂々と歌いこなす
ボーカルTAKAの確かな歌唱力の凄まじさを如実に感じさせてくれる楽曲でもあります。

個人的に聴いてて思うんですが、歌声に物凄くオリジナリティがあると思うんですよね。
歌謡曲でもないし、洋楽でも、実はカテゴライズされてると思われるV系の歌声とも違うと思うし
本当にプロフェッショナルで彼ならではの歌い方だなー、と
どの曲を聴いても既にこの頃から感じられるので
そういう意味ではメジャーにも劣らぬ完成度はこの作品からもう健在だったんだなー、と
何度も聴いててその度に確かに思いますね。そんなツボにハマるポイントだらけのこのアルバム
ラクリマクリスティーの本質を再確認する意味でも重要なアイテムでした。
本当に、ここから買っておいて良かったです(笑)。






ちなみに、本当のデビューミニアルバム「Warm Snow」も購入したんですけど、
ぶっちゃけこの録り直した「Dwellers of a Sandcastle」があれば特に必要ないレベルですね。
だって明らかにこっちのが洗練されてるし、アレンジのさじ加減もいいですし。
この作品はファンアイテム以上の価値がありますから。「カリブで生まれた月」、名曲中の名曲だと思う。






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