超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

Syrup16g全曲レビューその26「パープルムカデ」

2011-05-24 19:45:13 | Syrup16g全曲レビュー





第3ブロックに突入です。Syrup16g全曲レビューその26は「パープルムカデ」です。初めてのシングル。






パープルムカデ         シングル「パープルムカデ」収録





「君は君のままで 下じきになる」

このフレーズの意味をようやく理解できた時は既に下じきだった訳ですが。
好きな言葉とか好きな人とか関係なしに
底辺に置かれざるを得ない人々
それはもう自分で選んだも同然であって
決して曲げられない自分がいるならば、その分世界に溶け込むことは不可能に近く
行くべき場所は下へ下へと潜り込んで行き
遂には誰もいない地平に到達する。
それこそが「遠い空」って個人的には解釈してるんですがあながち間違ってもいないと思う。
よしんば間違ってたとしても、これが私なりのこの曲に対するイメージなんです。

「怖いものは無い 怖い人だらけ」

一歩でも動けない状態
一歩でも動きたくなくなる状態
それほどまでに他者との関わりが怖くなる時があって
この世界に自分一人が取り残されたような感覚になってしまう。
きれいごと抜きに本当に自分が嫌いな人間なんていない
だけど、他人の目に映る自分はとても怖い。
考えるだけで憂鬱な気分になる。
反応すらも億劫で。

「戦場で死んだムカデ」

言葉の意味通りに取ることも出来ると思う。
けど敢えて、これはこの何てこと無い世界の、日常の事を指しているのだと思う。
何もかもが自分自身との戦い、自問自答。
そこに敗れたり
或いはギリギリで生き残ったり。
死んだっていうのは文字通りの意味じゃなく、精神的にも社会的な意味も含めて。
誰もが勝ち残っていける訳じゃない。
器用に出来る人間ばかりじゃない。
下じきになって
潰されて
ムカデみたいに這いつくばって、忌むべき存在でもあって
そんな中でも「Sun Will Shine」とかのたまうこの歌詞に残酷ささえ感じますけど
その実「進め 三輪車」とか
「この坂の向こうまで」とか。「道」じゃなくて「坂」なのが良いですね。平坦じゃない。しかも三輪車で。

そんな出来損ないに向けてのテーマ、テーゼ。ある意味で賛美歌。
曲調もシリアスで、バキバキと不穏なアンサンブルが響くこの「パープルムカデ」。
途中で一旦止まったりするパートや
サビ中にスロウテンポになったりと
不規則なサウンドもまた耳を引きますが、初めてシングルで切った曲ってのもあって
何かしらの覚悟も込められているような、そんな曲です。ある意味シングルらしくない曲だけど
そこに「シロップの」って付けると非常に納得する。そんな初シングル。


ちなみにPVは全編ムカデ。
当時何かの番組でPVを偶然見たときはビックリした。
でもこれもまたらしいんだよねえ・・・。真似できないと思う。





「付け足さないで そのままで 
 ただの名もなき風になれ」

勇気が出るんだか出ないんだか微妙なフレーズ。
でも、ある種の力強さ、
開き直りを感じます。それはとても五十嵐隆の本心に近いような気もして。




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2 コメント

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Unknown (monaurallab)
2011-05-29 23:19:52
シロップの歌詞は大体全部素晴らしい(というか心に響く)と思いますが、
個人的にこの曲の歌詞は神がかったレベルだと思います。
ぼやけたような曖昧な表現と、
ストレートな表現のバランスが凄いと思います。
自分もブログでシロップを語ってますが、本当にシロップは語りたくなるというか。
それだけ心に残るタイプの音楽なんでしょうね。
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詞も曲も一級品ですね (西京BOY)
2011-05-30 07:16:07
こんにちは!初コメありがとうございます。


シロップの詞や曲ってのは割と今現在幸せじゃない人
満たされない人が好んで聴いてる印象があります。
だけどその実もがいてもいるんですよね。
自分の立ち位置を確認して前に進む為の音楽・・・って観点だと最上級なんじゃないかと。

個人的に曖昧な表現って大好きで
どうとでも捉えられるのが凄い良いと思うんですよね。
加えてストレートな表現のバランス、というのも正にその通りで
ハッキリとした言葉と混ぜているのが更に生生しさを煽っているような。
そんな気がします。


この曲は、後々になって意味が分かってくるタイプの曲ですよね。
そういう曲が多いのも
またシロップの音楽をいつまでも新鮮に聴ける理由、って気がしますよ。
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