超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

LOST IN TIMEのベスト盤を聴いて思ったこと② 「きのう~あした編」の新曲群

2012-03-15 00:00:48 | 音楽





LOST IN TIMEのベスト盤記事2発目、今度は新曲群に関してです。





普通のベスト盤だと新曲がおまけ程度に一曲~っていうのが殆ど
或いは全く無いベスト盤も多々ありますけど、このベスト盤はなんと新曲が5曲も入っている、っていう。
考えようによっては本当に半分くらいはオリジナルアルバムに近い作りになってるんですよね。
しかもネガティブな曲は「きのう編」、ポジティブな曲は「あした編」に入るっていう
そこまで?ってくらいの徹底っぷりにも脱帽です。

なんていうか、ここまで手の込んだベスト盤もあんまりないよなあ・・・っていうか
最近はぶっちゃけ名刺代わりとか入り口だとか、あくまで「オリジナルを聴いてもらう為のベスト」って
個人的にはそういうベスト盤が多いような気がしてるんです。
でもこのベスト盤は、本当に聴けば聴くほど他のベスト盤とは完全に趣が違う。
もう完璧にベスト盤単体できっちり楽しませようとしてる。事務的な要素が一切無くて
シングルでも抜きとか代表曲でも抜きにしてるのもオリジナルとの差別化だし
単なる寄せ集めではなく、ちゃんとこのベストならではのストーリーが詰まっていて・・・。
なんか聴けば聴くほど胸がいっぱいになるような盤ですよね。
おまけに評判の良い10年史も付いてるし、タワレコ特典で一時間のドキュメントDVDはあるしで
ここまで聴き手に対するサービス精神のあるベスト盤って改めて異例だなあ、って。
それもまた彼らなりの誠意なのかもしれないですね。

コンセプトの時点で「面白そう!」とは思ってたけど、ここまで夢中になれるベストだとは思わなかった。
これくらい丁寧なベスト盤がもっと増えれば個人的にはベストに対するイメージも変わるのでは?
とか感じてしまいますね。それをインディーズバンドがやってるんだから。凄い話ですよ。




■再会

一応2枚組の方だと「きのう編」が先に来るんですけど、
一曲目から随分と重い曲ですね(笑)。
思い出を振り返りに故郷の町に戻ってきたら元々の町の形が無くなっていて、
思い出せない事ばっかりで侘しい気持ちになったりして
そんな薄情な自分や、抜け落ちた記憶に対する懺悔の歌。今こうやって過ごしてる喜びも悲しみも
いつかは記憶から消え失せて全く無意味になるって意味合いの激しくもあるロックナンバー。
どことなく「約束」の続編のようなエッセンスも感じるけれど
ある種あの曲で歌われていた内容が本当だったんだ、って確認するような一曲でもあって
相応に悲しみは鳴っていて、感情的でもある一曲。感傷的でもあるんだけど
その分歌い手の衝動は十分に伝わる楽曲になってますね。
そして初期っぽくもある曲。


■グレープフルーツ

これまた後ろ向きな曲・・・感じた気持ちを押し殺して
全て自分の中だけで苦しみも悲しみも悔しさも解消せんと、
たった一人でもがいているような楽曲。

【きっと些細な事で あなたを壊してしまう気がして】

人間関係の難しさを知ってるからこそ、こういう歌詞が出てくるんでしょうね。
それ即ち、やっぱり経験っていうのは成長出来ると共に臆病にもさせるんだなあ、と
まざまざと痛感させられる曲です。何かを得てるけど、確実に擦り減ってもいるんですねっていう。

そして、この曲のアレンジは情感たっぷりで聴いてて本当に楽曲観に浸れますね。
浮遊感の中に良い具合に歌謡エッセンスが入ってて、正直新しさも感じる事が出来ました。


■あしたのおと

「あした編」の一曲目であしたって言葉が付いてる曲なので
それなりに前向きではあるんですけど
「それぞれの未来で」って歌詞は裏返せば、決して相容れない存在もあるんだって
そんな事実をはっきりと突きつけられてる様にも思える。
それもまた本音なんだろうけど
明るさや前向きさの中にどうしようもない現実も滲んでる、なんともロストらしい一曲です。
哀愁漂う絶妙なアレンジにもまたグッと来ます。


■バードコール

人間どうしても一人だと不安で、みんなと同じじゃないと不安で、どうしようもない気分になって
それでもその道を歩まんとする人間に向けた実直な応援歌。
こういう他者に向けた言葉を、歌を
素直に奏でられるようになったのもきっと10年経った今だからなんでしょうね。
後半になると過剰に演奏がアグレッシヴになるのでいつか生演奏でも味わってみたい曲。


■ぼくらの声の 帰る場所

この曲もまた今までにはなかった多少複雑に聴こえるアレンジなんですけど
実直に「君を待ってるよ」といなくなってしまった誰かに呼びかける声
未完のまま終わった想いを引き摺る惨めさ、
だけどそんな中でも好転を信じて頑張って生きる力強さがさりげなく光っている楽曲。
どんなに悲しい時でも苦しい時でも胸の中にはメロディが流れていて
そんな音楽に対する絶対的な信頼も伝わってくるような・・・。
決して楽観的な明るさは持ち合わせてはいないけど
ネガティブでも、精神的に暗くても、前を向く事は出来るんだっていう
ここ数年のロストのテーマ性が如実に反映されてる正に今現在最先端の記録が鳴っています。
「グレープフルーツ」も「あしたのおと」もそうですけど
以前よりも単純にアレンジメント能力が、表現力がグッと向上したなあ、って感じられるので
その観点からしてもこれから先を彷彿させるような新曲が入ってるのは嬉しいですね。
ここまで前向きな姿勢で出されるベスト盤も中々ない、って
改めてちょっと記述して置きます。





新曲が5曲も入ってると、ベスト盤なのに半分新譜を買うような楽しさもあったりして(笑)。
しかもそのどれもが良い曲揃いって事でめちゃめちゃ満足感はありましたね。
既にライブで聴いてた曲も何曲かあったけど
ライブとは違ってアレンジが凝ってるから初聴きレベルに新鮮に聴けたのも良かった。
そういう訳で、充実度が伺える新曲群に関しての記事でした。
次は、2枚組みに付属してる大岡源一郎による10年史に関して少し触れたいと思います。では、また。





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