京都にいたころ、仕事であちこちでかけるときは、よく神田精養軒のクネッケをバッグに入れて持ち歩いていました。小腹がすくと、電車の中や駅のホームでかじってた。滋味あふれるあじわいで、そっけないと言えばそっけないけれど、いちいち驚かずに済む平静な味とでもいうか、存在感は希薄でしたが、ないと寂しい、そういう食べ物でした。
でも、こちらに移るちょっと前、精養軒の商品アイテムからクネッケが消え、残念に思ったまま、時がたちました。つい最近、飛騨のあいいろパン工房さんのフェイスブックに、「神田精養軒のプンパニッケルを再現」との記事を発見。クネッケは乾燥したお菓子のようなものとしてデパートかどこかで簡単に買えましたが、普通のパンはごくたまにしか手に入らなかったので、食べたとは思いますが、プンパニッケルの味は覚えていません。
きょう、飛騨のあいいろパン工房のきくみさんとメッセージのやり取りをしていて、突然クネッケの事を思い出しました。菓子製造業を始めてから、ときたまふっとクネッケを思い出し、自分で作れたらいいなとぼんやり夢想していましたが、できるかも、と突然思い立ち、検索。どうやら簡単そうだとおもってレシピを書き写していたところに、きくみさんから「うちでは販売してますよ」。折り返し、今度ぜひ豊田で販売するときにもってきてほしいとお願いしました。
さて、そのクネッケ、作りました。検索したレシピを参考に家にあるものでアレンジ。
材料は、ライ麦粉、ライフレーク、オートミール粉、生カボチャの種、生ヒマワリの種、ゴマ、塩、水。これだけの材料をまとめて一時間ほど置いておくと、固めのお粥のような形状に。それを天板に敷いたシートの上にヘラで薄く塗りつけて、低温で長時間焼成。難しかったのはヘラで塗りつける工程です。厚さがばらばらで、焼け具合がまちまち。でも、一応できたクネッケは、まさに昔食べたクネッケの味に近いものになりました。
ところで、神田精養軒は、なんと私がこちらに来る前後に、倒産していました。私が知っていた頃の社長?の望月氏は「パン屋のおやじは考える」ほか、何冊も本を出版。エッセイは何かの雑誌で読んだ記憶があります。食べる人の健康をちゃんと考えて作っていた貴重なパン屋さん。それが倒産していたとは。
クネッケもプンパニッケルも、神田精養軒の思いを継ぐべく再現に尽力しているきくみさん。彼女が作ったプンパニッケルをあす守綱寺に出店したおりに受け取る予定でしたが、大雨の予報が出ているので、私の方が出店を断念しました。いただくことができるのは、しばらく先になりそうですが、それまでに、わたしもアンティマキのクネッケの試作をさらに続けて、できれば商品化したいとおもいます。