年金生活者カラオケ大会のメンバーTさんが引っ越すことになった。
長年住んだマンションを売りに出すので、泊りがけで片付けに通ってきている。
必要なもの、まだ使えそうなものを選別して、宅急便で現住所に送っている。
山ほどのゴミを、今日のゴミ収集に出していた。
ねこ吉も手伝おうと、うちのゴミを捨てに行った帰りに声をかけようと思ったら、
「今、全部終わったよ。」と言われた。
ゴメンね。
ねこ吉がもっと早起きをしてたら間に合ったのに、相変わらずの役立たずで・・・。
昨日、てんやわんやの部屋に陣中見舞いに行ったら、
「アンタ、本いらんか?」と言われた。
本箱一杯の文庫本やその他諸々の本。
「うちも家の中本だらけだし・・・。
断捨離、終活中やし。」
「私は時代小説が好きやから、『居眠り磐音』全巻揃ってるよ。」
え!ホント。
ねこ吉は時代小説といえば、「みをつくし料理帖」ぐらいしか読まないけど、たぬ吉は絶対喜ぶと思った。
「処分するのなら、もらうわ。」と言って、紙袋に入れて全51巻を持って帰ってきた。
「読んだら処分するよ。」とたぬ吉に約束させて渡した。
お礼を言いがてら、またTさん宅に行った。
まだまだ時代小説はある。
欲が出て、残りの文庫本も全部もらった。
司馬遼太郎、池波正太郎、藤原周平、宮部みゆき、懐かしいところでは、山本周五郎、柴田錬三郎。
その他諸々。
200冊ぐらいあっただろうか?
たぬ吉は、運んできた紙袋から、作家別、上下巻、番号順に並べていた。
顔がにやけてる。
もう一度、「読んだら処分だよ。」と念を押す。
「必要な本は置いておく。」と気色ばんでる。
たぬ吉が必要な本というのが一番厄介。
たぬ吉にとって、全部必要な本と言いかねない。
欲を出したのが間違い。
ねこ吉は一生懸命本を減らして暮らして行こうとしてるのに、自分から本を増やしてしまった。
勝手に本を処分すれば、そんな本に限って把握していて、「知らんか?」と言われる。
「知らん!」と、今までねこ吉はしらばっくれてきたけど。
どちらが先に死ぬかは判らない。
ねこ吉が先に死んだら、本に埋もれて暮らしたらええわ。
たぬ吉が先に死んだら、思い切り捨ててやる。
だがしかし、果たして、その時ねこ吉に本を処分する力が残っているかどうかは疑問だけど。