旅限無(りょげむ)

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森繁逝って市橋捕まる 其の弐

2009-11-11 23:09:36 | 社会問題・事件
■本当に今の日本に「賞金稼ぎ」という専門職が現われるかも?と心配になる数字が出ております。

……全国の警察本部が指名手配している凶悪事件(殺人、強盗、強姦、放火)の容疑者125人のうち、約7割にあたる87人が5年以上検挙されておらず、約2割の24人は10年以上も消息がつかめていないことが、警察庁の集計で分かった。容疑者が浮上しても刑事責任が追及できず、時効が近づく。

■今頃になって「分かった」という犯罪報道もどうかと思いますが、警察機構の内部でもいろいろと大きな変化が起きているそうですから、政権交代も実現したことですから、悪人を逃がさない方法と仕組みを新たに国会で考えるのも良いかも知れません。都市部に目立っている「空き交番」やら各地で頻発する「初動捜査のミス」やら、それに輪を掛けての冤罪事件の発生!となれば警察に対する信頼が土台から揺らぐのは当然のことでありましょう。警察機構の恐るべき徹底した官僚化は国民の誰もが知っていることで、現場と上層部との間に広がる絶望的な断絶は、小説や映画で嫌というほど知らされておるところですからなあ。


警察庁によると、07年10月16日現在の指名手配容疑者は1933人。このうち、捜査重点は579人で、……。凶悪事件で、指名手配から10年以上逃走しているのは24人(殺人11人)、5年以上10年未満は63人(同33人)。……殺人容疑で10年以上逃亡している11人は、▽95年3月の地下鉄サリン事件に関与したとされる元オウム真理教の高橋克也(50)、菊地直子(36)▽90年11月に沖縄市で警察官2人を射殺したとされる又吉建男(59)の各容疑者ら。……

■引用した報道記事では、時効問題への言及が続くのですが、時効制度そのものを廃止せよ!という動きが出ているところですから、その問題には深入りしません。ただ、長きに亘った自民党政権は、笑ってしまうほど古い、化石のような法律条文を時代の変化に即応して改定する作業をずっと怠っていたことだけは確かです。


……全国の指名手配1933人のうち、警察が力を入れている「捜査重点容疑者」は毎年100人超が検挙されているが、例年30人以上いる警察庁指定重要手配容疑者は、06年までの5年間に毎年1~2人しか逮捕されていない。警察庁特別手配の元オウム真理教信者3人にいたっては、13年も逮捕されていない。

■警察庁の親分が拳銃で狙撃されるという世界でも珍しい大事件が発生したというのに、その真犯人は何処の誰なのか、さっぱり分からないというのが日本の警察組織の実態のようですから、オウム事件の闇を完全に暴(あばく)く突破口になり得る警察庁長官銃撃事件さえ解決出来ないのですから、組織全体としても士気が上がらないのも当然なのかも知れません。現場の捜査員は必死になって靴底を磨り減らして夏も冬も歩き回ったいるのでしょうが、組織全体として捜査能力が劣化しているような気がしてなりません。


警察庁は、逮捕者が増えない原因の一つに国民に「無関心」や「相互不干渉」の風潮が広まったことを挙げているが、生井澄子さんは時効を迎えるまで「どうやったら一般の人から情報を得られるか」と考え続けた。自費で200万円の懸賞金をかけたのも「情報がほしい」との願いからだった。「逃げ切れば、罪には問われない」。そんな時効制度が、指名手配容疑者の逃走を助長している面もある。

■警察組織も立派な天下りシステムを築いて運営しているのですから、政治家を動かして懸賞金制度をもっと早く作ることも出来たでしょう。しかし、明治以来の苔が生えた権威にしがみついて下々の民に頭を下げて情報を頂戴するのは嫌なのでしょうなあ。ベストセラー小説の常連に推理小説が並んでいる日本で、素人でも首をかしげたくなるような失敗を連発している上に、次から次へと不祥事が連続しているのが日本の警察で、何処かの国に比べれば相当に優秀な人材を揃えた組織だと言い張ることも出来る面もありますが、市橋容疑者の潜伏先に関する警察側の見立てと推理は、残念ながら的中しませんでした。

■一部の週刊誌によれば、市橋容疑者が大阪で身柄を確保される1週間前まで千葉県警の誰かさんは、「市橋は東京郊に潜んでいる!」との前提で必死の捜索を続けていたようです。千葉県は東京近郊ですから、自分達が管轄している縄張り内で名誉挽回を望む気持ちは分かりますが、意地や面子が先行すると捜査も推理も混乱することになるのは、ちょっとしたミステリー好きなら誰でも知っている定番みたいなものですから、作家の地道な取材が変なところで情けない実を結んだようなものであります。

■裁判員制度が始まって、犯人扱いの報道は犯罪行為だとされているはずなのに、マスコミ陣の狂奔ぶりは昔と何も変わっていないのも気になるところで、これから始まる真相解明を待たずに揣摩臆測の破片を組み立てては、面白い話を大急ぎで作り始めている節が見えるのも気になりますなあ。今回の犯人確保は警察のお手柄でなかったのと同様に、大手マスコミの働きによるものでもないようです。「自殺説」を垂れ流したテレビ局があったり、警察からのリークを真に受けてオカマ業界に隠れているという噂話を真面目に流していた局もあるとか……。これから犯行と逃亡の真相が明らかになるのですから、その前に自分達が流した情報や推理話を大急ぎで検証しておいた方が良いかもしれませんぞ。視聴率欲しさにオウム真理教の宣伝道具になって踊った苦い経験をもう一度思い出すべきでしょうなあ。

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