旅限無(りょげむ)

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首相の留守には何かが起こる 其の七

2010-10-28 14:23:14 | 政治
 ■いよいよ始まった事業仕分けの第三弾ではありますが、これまでに法的拘束力も無い単なる宣伝用の見世物でしかない事がバレてしまっているので、自慢のファッションで身を固めた蓮舫大臣が尤もらしく「特別会計を丸裸にする!」と叫んでみても、国民の視線は列島上空の寒気団の如くに冷ややかなものでありましょう。南は豪雨の後に台風が接近、北では大雪と1月前までの狂ったような猛暑が現実のものだったのか?と我が身を抓って確かめたくなるような気象の激変ぶりは、政権交代の猛暑のような熱気が冷めてマニフェストの鍍金も剥がれた政権与党の民主党によく似ているような……。

■かつて村山内閣という奇怪な政権が出現した時に、神戸の大震災とオウム真理教による地下鉄サリン事件が続け様に起こったことが、最近の菅アルイミ政権の迷走ぶりを見ていると不思議に思い出されるのであります。得体の知れない自信に満ち溢れている仙谷ノーコメント官房長官や不思議なくらいに余裕綽々でニヤニヤしながら大臣席に並んでいる素人集団の姿からは政治の重みも責任感もまったく伝わって来ないのは、あの自社連立政権という与党になりたいだけの目的で生み出された野合内閣とまったく同じ意識を共有しているからではないのでしょうか?今の民主党を一皮向けば、かつての自社連立内閣よりもバラバラで前後左右の距離が大き過ぎて正体が分かりませんぞ。

■長かった猛暑の後に巨大な寒気団が南下し、大勢力の台風が北上して来る時に列島各地で不気味に目立った地震が頻発しているのが気になって仕方がない今日この頃なのでありますが、尖閣衝突事件の後始末を着けずにうやむやのまま先送りしようとする菅アルイミ政権は自らが追い詰められている現実を直視しようとはせずに、自民党と公明党の要望を丸呑みする裏取引で当面は政権が維持出来そうだと大いなる勘違いをしているとか……。


……漁船衝突事件で、中国側が打診してきた「領有権」問題の棚上げ論は中国の常套手段である。……棚上げ論は中国のかつての最高実力者、小平氏が提唱していた。1978年に来日した際、尖閣諸島の「領有権」について「この問題は後の世代の知恵に任せて解決しよう」と表明。「存在しない」はずの領土問題を強引に国際問題化させ、経済的な利益の分配をちらつかせながら、やがて軍事支配を強める手法だ。これを実践したのが南沙諸島だ。中国は1988年のベトナムとの交戦を経て諸島の一部の実効支配を強めると、1995年には当時の銭其シン外相が、氏の路線を踏まえて問題の「棚上げ」化を推進。2005年にベトナム、フィリピンとの海底資源の共同探査で合意し巧妙に主権奪取へと動いた。今や中国は南シナ海を自国の領海と位置付けている。…… 

■長らく日本の政界では「外交は票にならない」と言われ続けておりましたから、民主選挙を通して意志を示す有権者が外交問題に興味を持たず内向きの平和を貪っていた責任は重いのですが、情報を独占して政治家にも国民にも真実を伝えずに奇妙なエリート意識に凝り固まった外務官僚にはもっと大きな責任がありましょうなあ。平和憲法にしがみ付いてさえいれば軍事や安全保障の問題に頭を悩ませる必要はないと国民も政治家も外務官僚も怠惰な時を過ごして来たツケをいよいよ支払わねばならない状況になったのかも知れません。


軍事力を背景にした中国の海洋権益への意欲は強まるばかりで、18日に閉幕した中国共産党第17期中央委員会第5回総会で採択されたコミュニケでも、「国防・軍の近代化を強化し、情報化時代の局地戦に打ち勝つ能力を核心とし、多様化した軍事的任務を完遂する能力向上」を目指す方針を盛り込んだ。菅直人首相は、「日中関係は戦略的互恵関係の原点に戻りつつある」と述べ、関係回復に自信を示す。だが、交渉が中断している東シナ海のガス田共同開発でも、「東シナ海の実効支配を強めるのが中国の本当の狙い」(外務省幹部)とされている。「当面の問題を棚上げしておけば、いずれ日本は妥協する」と見越したような中国の思惑に乗せられて関係改善を急ぐのか、それとも断固として主権にこだわるのか。日本外交の岐路が訪れようとしている。
2010年10月21日 産経ニュース 

■臨時国会で取り上げられたのは「那覇地検」「政治とカネ」ばかりで、ガス田問題も尖閣防衛もまったく素通りでしたなあ。少なくとも決算委員会で防衛予算の見直しを絡めて東シナ海の安全保障を取り上げて実のある討論をして欲しかったのですが、「八百長国会」などと陰口を叩かれるようでは喧嘩の芝居ぐらいしか期待できないのでしょうなあ。既に外交的には宝の持ち腐れになってしまった海上保安庁が命懸けで撮影した証拠ビデオに関する議論も、あまり真剣みのあるものではなかったようですが……。

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