旅限無(りょげむ)

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イラク内戦 其の四

2007-01-31 23:23:29 | 外交・情勢(アメリカ)

イラク治安筋などによると、この武装勢力は、シーア派最大の宗教行事アシュラが最高潮を迎える29日に、ナジャフの北にある聖地カルバラの宗教行事を攻撃し、シーア派宗教指導者たちの殺害を計画しており、米軍とイラク軍は事前に掃討作戦に踏み切った。しかし、武装勢力は対空砲など十分な武器を保有し、28日の戦闘には戦闘員約1000人が加わったもようだ。突然浮上したこの武装勢力の正体には謎が多く、死者の中にはスーダン人やアフガニスタン人が含まれているとの情報もある。
1月29日16時18分配信 産経新聞

■イスラム暦ムハッラム月10日の「アシュラ」が今年は1月29日で、これはイスラム教シーア派にとっては、最も悲しい日として聖別されているのは有名な話です。ムハンマドの孫で、シーア派3代目イマームだったホセインが殉教した日とされて、シーア派の男達がホセインの苦しみを共有しようと鎖や鉄棒で我が身を叩く様子は、テレビでもお馴染みのものです。シーア派本家のイランではあちこちで流血場面が見られるそうですなあ。殉教者の命日に攻撃を仕掛けられたら、宗教的な感情は極限まで高揚するでしょう。スーダンやらアフガニスタンからも参加しているということは、先の「4つの戦争」では「(4)国際テロ組織アルカーイダによる攻撃」の典型的な例と考えられます。しかし、「(2)首都バグダッドなどでの宗派間の暴力」の要素が下地として推測できますし、「(3)武装勢力による攻撃」も便乗して参加している可能性も捨て切れません。


■これほどスンナ派信仰を持つ広い範囲から参加している宗教集団を単純に「カルト」と呼んでしまってよいのかどうか、難しいところです。組織の規模も驚くべきものですが、装備している武器が本格的だったのが最も驚くべき点ですなあ。こんな武装集団がバグダッド市内にうろうろしていると言う事は、国境線が穴だらけだという事です。バグダッド陥落は、あの重要な地域が力の空白状態になったことを意味していましたし、それは中東に一種の真空状態を作り出す作用を及ぼしたのですなあ。光さえも吸い込むブラック・ホールとも言えるでしょう。こうした中東の力学関係をブッシュ大統領がどれほど理解していたのか怪しいものです。


ブッシュ米大統領は29日、公共ラジオ(NPR)とのインタビューで、イランがイラクで反米工作活動をエスカレートさせるなら「断固とした対応を取る」と警告した。大統領はイランに軍事進攻する意図はないとしながらも、「イランがイラク駐留米軍や罪のないイラク国民を害そうとするなら防衛策を講じる」と強調。イラン工作員が米軍を標的にした活動を行っているとして、工作員殺害を許可したことを正当化した。 
1月30日10時1分配信 時事通信


■テロリストが自由に出入りしているのなら、隣国から外交官や商売人に偽装した工作員が合法的に侵入するのは当然の事で、米国のCIAも愛用している方法です。ヨルダンからも、シリアからも幾らでも工作員は入っているでしょうし、クルド問題を抱えるトルコからも入っているはずです。その他の国からも好き放題に入り込んでいる工作員から、イランだけを取り立てて騒ぎ立てるから、イラク攻撃はイラン攻撃のために橋頭堡を造るのが目的だったのはないか?などと勘ぐられるのですぞ!でも、それが真相のような気がしますなあ。


米ホワイトハウスは29日、チェイニー副大統領が2月19日の週に日本とオーストラリアを訪問すると発表した。日米関係筋によると、訪日は20日から22日までで、天皇陛下との会見や安倍晋三首相との会談を予定。副大統領はイラク安定化に向け日本側に一層の協力を求めるほか、首相訪米についても調整が行われる見通しだ。

■やっぱり米国は日本を引っ張り込みにやって来ます。イラク攻撃の首謀者御自身がやって来ます。オーストラリアはインドネシアなどで自国民も犠牲者を出しているので、対テロ戦争に熱心に協力している国です。その国とセットで訪問されると、単純に日米同盟を賛美する歓迎儀礼で応えると、日本はちょっと苦しい立場に追い込まれるかも知れません。


ホワイトハウスは声明で、副大統領と安倍首相がアジアの安全保障や対テロ戦争などについて話し合うと説明。米側は、2万人超の増派を柱とするイラク新戦略への理解を求め、航空自衛隊による空輸支援の継続などを要請するとみられる。

■航空自衛隊が今も空輸業務を続けていることを国民がころりと忘れているようですが、「武器は運んでいない」の一点張りで特殊な地位を確保しているような気でいても、最新式の飛び道具を装備した武装勢力がしっかりと区別してくれるなどとは思わないことです。既に、米軍の軍用ヘリコプターが何機も撃墜されているのですから、イラクの空は決して安全ではありません。米国の増派計画に「支持」と「賛意」を示したりすると、日本の自衛隊の増派も要求されるかも知れませんし、初代防衛大臣が米軍批判を繰り返しているのをチェイニー副大統領が根に持っていたりすると、無理難題を押し付けて来るかも知れませんなあ。


日米関係はこのところ、イラク開戦判断や米軍普天間飛行場移設問題に関する久間章生防衛相の一連の発言をめぐりぎくしゃくしている。このため、両政府は副大統領の訪日を契機に緊密な同盟関係を再確認するとともに、4月下旬からの大型連休時の首相訪米に向けた地ならしを行いたい考えだ。 
1月30日 時事通信

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