旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

イラク内戦 其の伍

2007-01-31 23:23:58 | 外交・情勢(アメリカ)
■イラク情勢が沸騰して流動化していて、イランへと戦火が広がる可能性も高まる中で、内輪の政治日程だけで「訪米」を計画したりすると、小泉前首相が「イラク攻撃を全面的に支持」した後を受けて、「イラン攻撃も全面的に支持」と安倍首相が言わされることになるかも知れませんなあ。今のところ、イランの核武装疑惑に対して日本政府は明確な姿勢を示していないようですが、北朝鮮との関係が表沙汰になれば、「対話と圧力」がイランにまで延長される怖れも有るでしょう。

イラン国営通信(IRNA)によれば、イラン原子力庁の広報担当責任者であるHossein Simorgh氏は、同国が新たにウラン濃縮用の遠心分離機3000基の設置を開始したとの有力国会議員の発言を否定し、ナタンツにあるウラン濃縮施設にそのような新しい装置が設置された事実はない、と述べた。……これより先、イラン国会の外交・国家安全保障委員会のAlaeddin Boroujerdi委員長が、遠心分離機の設置が始まったと語ったことが報じられていた。

■「原子力庁」は無いと言い、「安全保障委員会」は有ると言う。アフマドネジャド大統領は「イスラエル消滅」を公言し、根拠を示さずに「米国は攻めて来ない」とも放言しています。1981年にイラクが建設していた原子炉を稼動直前に破壊したイスラエルの「バビロン作戦」の記憶が有る世界は、本当にイランが核開発に踏み切ればペルシア湾を越えてイスラエルの空軍機が襲い掛かるだろうと思っています。一説には米軍がペリシア湾に航空母艦を貼り付けている目的は、イスラエルの奇襲攻撃を抑止しているという話も有って、もしもそれが真実ならば、イランは米軍によって守られているという奇妙な睨み合いが起こっていることにもなります。

■米国としては、パパ・ブッシュが実施したクウェートからイラク軍を駆逐する湾岸戦争以来、対テロ戦争とイラク戦争まで増強された湾岸諸国の軍事設備を利用し続けたい。そのためには産油国・イスラム諸国を分断して味方に付けて置きたいわけで、万一、イスラエルが奇襲攻撃を実施した瞬間に、反イスラエルの一声でイスラム諸国は一枚岩になってしまいます。そうなれば、米軍の世界戦略は根底から崩壊するというわけです。


国連安全保障理事会は昨年12月23日に対イラン制裁決議を採択、ウラン濃縮活動を停止する期限として60日間の猶予を設定した。外交筋によれば、国際原子力機関(IAEA)の査察官は、イランは遠心分離機の設置に着手できる準備が整っているとの結論に達している。ただ、設置のタイミングは政治判断に委ねられる可能性が大きいとしている。

■その後、イランは査察を受け容れると発表したようですが、好き放題に査察しても良いとは言っていません。「ナタンツ」という地名が取り沙汰されていますが、その情報源が亡命イラン人なので、イラク戦争が始まった時に亡命イラク人が暗躍し、それを米国政府が最大限利用したことを思い出してしまいますなあ。少なくとも、イランは曲がりなりにも民主国家になっているので、保守派と改革派とが選挙で対立していますし、核開発に関しても国民の意見が分かれています。アフマディネジャド大統領は、かつてのサダム・フセインのような独裁的な権力を持っているわけではないようです。欧米のマスコミがその違いを無視して、両者のイメージを重ねるような操作を続けるとイラン攻撃が現実味を帯びて行きそうです。

-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

山と溪谷社

このアイテムの詳細を見る

------------------------------------------
チベット語になった『坊っちゃん』書評や関連記事

最新の画像もっと見る