旅限無(りょげむ)

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ちょっとモンゴルの勉強 其の参

2006-08-16 13:09:07 | 歴史


……最近、モンゴル南部のタバントルゴイ炭鉱で世界有数の未開発石炭資源が確認された。推定埋蔵量1500万トンというオヨートルゴイ銅山の本格生産も数年後に始まる。国境を接する中国やロシアも資源開発の主導権を握ろうと躍起だ。今回の訪問について日本政府関係者は「周辺国への影響力強化をねらう中国への牽制という意味合いがある」と説明する。靖国参拝で首脳外交をストップさせた小泉首相は中国には立ち寄らない。……同記事

■欧米諸国が猛烈な開発利権獲得の競争を繰り広げているのは周知の事実ですが、最後の1行はどうも余計な一言のような印象ですなあ。首都ウランバートルではチャイニーズ食堂が焼き討ちされたりしているほど、モンゴル国ないには反チャイナの悪感情が渦巻いているのですから、北京を飛び越えてモンゴルに飛んで来てくれれば快哉を叫ぶ人達が沢山いるでしょう。


「日本は百方手を尽くしてモンゴルを丸め込もうとしている」。国営新華社通信系の中国紙、国際先駆導報はこのど、こんな見出しで小泉首相の訪問を報じた。日本は対外援助を減らすなかで、モンゴルへの援助は増やしていると分析。それでもモンゴルにとって、最大の貿易・投資パートナーでもある中国との関係は変わらない、と主張する。モンゴルに進出した中国企業は2600社を超えた。……同記事

■もっと露骨に書けば、「日本は対中援助を減らすなかで…」となるのでしょうが、何処の国に対する援助を手厚くするかを決めるのは日本の主権にかかわる重大事ですぞ!大きなお世話どころか、こんな取るに足らない小さな新聞記事を引用するのは見苦しい。


上海国際問題研究所日本研究質の呉寄南主任は「中韓という重要な隣国を迂回したまま、突破口を求めてモンゴルや中央アジアへ出かけても、日本のアジア外交は成立しない」と冷ややかだ。一方、モンゴルのハイサイダイ国際問題研究所長は「中国は、日本がモンゴルを自分の縄張りにしようとしているとみて小泉首相の訪問を快く思っていない」と分析。「ただ、モンゴルにとって、ともに重要な日中両国が冷たい関係にあることは、地域の協力に良くない影響を与えている」と話している。……同記事

■このモンゴル人研究者の発言は、相当に強い政治的配慮を前提にしないと誤解を生みそうです。「中央アジア」とモンゴルを同列に扱っているのは問題ですぞ。中央アジアの主要国は「上海機構」に取り込まれていますが、モンゴルはそんな組織に入りたいような素振りさえ見せていません。そして、米国は上海機構をぐるりと取り囲むように「不安定の弧」に圧力を加える新しい配置を展開中で、既に日本の自衛隊はインド洋とイラクで活動しているのですから、米国の尻馬に乗って上海機構のど真ん中に楔(くさび)を打ち込む尖兵になるかも知れませんからなあ。もっとモンゴルに注目しておかねばなりませんぞ。

■「内モンゴル自治区」を取り込んでいる中華人民共和国は、現モンゴルを「外モンゴル」と呼んで将来的には「全モンゴル自治区」にする心算でいます。それは建国の英雄・毛沢東が予言していたのですから間違いありません。地下資源が続々と見つかっているなどと聞いたら、良からぬ事を考えるに違いありませんぞ。モンゴルの資源と利権は、ごっそりロシアン・マフィアの手に落ちているので、最初は中ロのマフィア同士の抗争事件から始まるのかも知れませんなあ。どちらと結んでもモンゴルは損をしますから、米国が色目を使っているのを利用して日本政府が上手に付き合って行けば、思わぬ国益になる可能性は有ります。但し、地下資源の積み出しには北京を経由した鉄路しか有りませんから、通過料金と港湾使用料を取られますなあ。その辺の「必要経費」を日本が援助してあげると良いかも知れませんぞ。内陸国の泣き所を補って上げると予想外に大きな感謝を受けるでしょう。

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