旅限無(りょげむ)

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悲しい話 

2011-04-15 16:03:48 | 歴史
■大震災からの復興が政治課題に上って来たようですが、相も変わらず菅アルイミ首相の延命目的のパフォーマンスの臭いがぷんぷんしているのは困ったものであります。すぐにやるべき事が次々に先送りされ、事態は復興に向けて改善されるどころか、どんどん悪化しているばかりのように見えるのは単なる気のせいばかりではなさそうです。大津波と原発事故によって生活の基盤である家族や仕事を失い頼るべき地域社会も崩壊してしまった人たちに、一刻も早く希望の光を見せてあげるのが政治の仕事だと思うのですが、またまた「20年は帰れないだろうなあ」などと首相が言ったの言わなかったのと、言うべき事を言わず言わなくてもよい事やら絶対に言っては行けない事をぽろりと言ってしまう首相を担いでいる政権与党の皆さんも大変なのでしょうが、それで振り回される被災者の皆さんは本当に可哀想であります。

……福島県から千葉県船橋市に避難した子供が「放射線がうつる」などと言われ、いじめられたとする電話が同市教育委員会にあったことが14日、市教委への取材で分かった。市教委は、避難者の気持ちを考えて言動に注意するよう児童、生徒への適切な指導を求める通達を、市内の小中学校など計83校に出した。市教委は通達で、大人の不安が子供に影響しているとし、同様のいじめを防止するためには、保護者に対する“指導”も必要と指摘している。…… 

■乱暴に「東北人」と一括りにして、苦難に耐える姿を意図的に賛美して海外メディアの報道に便乗して、不自然な美談を拵えてしまったマスコミにも罪はありそうです。被災した現地の治安は日を追うごとに悪化しているのが実態らしく、窃盗やこそ泥の類が増え続けて現地の警察があちこちで厳戒態勢を布いているという話の方がリアリティがありますし、逸早く現地に取材した週刊誌は現地の厳しい状況や悲しい実態なども早い段階から報じており、その中には某避難所で原発事故を避けて逃げて来た福島県の母子を「牢名主」気取りで避難所を仕切るオジサンが、理由も言わずに門前払いしてしまったなどという悲しい話もありましたなあ。放射線の恐ろしさが一人歩きして素人の妄想で膨れ上がり、まるで感染力の強い疫病か何かと混同している人も多いのが実情で、仮に被曝していても外部ならば簡単に除染できましょうし、不幸にも内部被曝してしまった場合、放射性物質の害を受けるのは本人のみで、阿弥陀如来の後光のように体の外に放射するようなことはないというのに、支援しなければならない人を排除したり差別するなどもってのほかであります。放射線は「うつる」ものではない事ぐらいは周知徹底させておくべきでしたなあ。

■原発は安くて安全で地球に優しいなどという宣伝に使った至近と労力の万分の一でも、放射性物質に関する正しい知識の啓蒙に使うべきだったのでしょうし、「最悪の事態」についても情報を公開して一般人の素朴な疑問や不安に丁寧に対応する姿勢があったら、コスト優先で安全対策を怠るような電力商売は改善されていたかも知れませんぞ。


船橋市教育委員会によると3月中旬、福島県から避難してきた小学生のきょうだいが市内の公園で遊んでいたところ、その話し言葉を耳にしてアクセントの違いに興味を持った船橋市在住の子供が「どこから来たの?」と質問。きょうだいが福島と答えたところ「放射線がうつるぞ」などと言い、質問した子供を含め、数人の子供が一斉に逃げ出したという。きょうだいは泣きながら帰宅。この様子を見ていた住民が市議会議員を介し、市教委に連絡した。現在、福島県内から船橋市内に避難している児童、生徒は計36人。市教委が出した通達は指導に当たっては「思いやりを持って接し、温かく迎える」「避難している人の気持ちを考えて言動に注意する」など避難している子供たちへの配慮を要請。…… 
■教育委員会の仕事は「言動に注意する」ように通達することより、学校を通じて地域住民や生徒達に正確な知識を伝えることではないでしょうかな?子は親の鏡とも申しますから、被災者や避難した人達に対する理解が大人も子供も足りないのかも知れません。何の根拠も無い原発の安全神話を鵜呑みにして信じることと同様に、原発事故や放射性物質に関する間違った思い込みを振り回すのは慎むべきでありましょう。見知らぬ土地で言葉も習慣も違う環境に溶け込もうとしている子供たちは、さぞや心細い思いをしていることでしょうに、面白半分に苛めてしまう馬鹿ガキ達には大いに教育が必要でありますが、所詮は日本人のレベルはそんな物で、世間の風は冷たいと身を以って学んで逞しく育って行くのも一つの人生かも知れません。この御一家は福島市に戻ってしまったとの報道もあるようですから、この兄弟は一生涯、千葉県船橋市の人達を忘れないでしょうなあ。特に船橋市の子供たちが愚かで性格が悪いというわけでもないでしょうから、遠く九州にまで避難している人達は日本のあちこちで似たような体験をしている可能性が高いと考えた方がよいのでしょう。


市教委は「大人の不安が子供たちに影響を与え、冷静な対応が取れなくなる恐れがある」と、原発事故に関する日頃の保護者の言動などが子供に影響を与えている可能性を指摘。保護者と連携した対応の重要性も強調した。また、市教委はいまのところ、新学期を迎えた小中学校から、福島県から編入してきた児童、生徒に対するいじめの報告はないとしている。
一方、“大人社会”でも福島県民が不当な扱いを受けるケースは続いている。厚労省によると「福島から来たと話したらホテルや旅館での宿泊を拒否された。どうすればいいのか」「旅館を経営している者だが、福島から来た客を宿泊させて大丈夫か」などの問い合わせがあった。福島県は3月17日から24時間対応の「放射線に関する問い合わせ窓口」を開設。これまで風評被害に関する相談は数百件に上っており、県は国に対し、正確な情報発信を要請している。だが、現状は続々と寄せられる相談の対応に追われる日々が続いているという。
2011年4月15日(金) スポーツ報知 

■団結やら協力を説教がましく宣伝しているのは「エーシー♪」ですが、日本にはなかなか克服できない馬鹿馬鹿しい差別問題があるのは事実ですから「日本は一つのチームだ!」などと言うのは絵空事・綺麗事だと誰もが知っているでしょう。しかし、数年前の完治したハンセン氏病患者が根も葉もない理由で差別された事件とまったく同じ構図の拒否反応が宿泊施設で起こっているというのは実に悲しいことであります。多額の義捐金やさまざま寄付行為が盛んに報道されている裏側で、何が起こっているのかを冷静に知る必要がありそうです。莫大な金額の寄付も現地に入ってボランティア活動も出来ない身なればこそ、被災地の生産物も避難して来た人も温かく迎えて接して行きたいものであります。
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