青森県住宅供給公社の巨額横領事件で服役中の千田郁司受刑者のチリ人妻アニータ・アルバラードさん(34)が31日、チリのテレビ局の番組収録のため、日航機で成田空港に到着した。アニータさんは「夫と会う」と話しており、滞在中に千田受刑者との面会を試みるとみられる。
1月31日 時事通信
■本当に来た!JALで乗り込んできましたぞ!到着はしたものの、売春目的の人身売買騒ぎを起こした人ですから、すんなり入獄管理局が通してくれるかどうかは分かりません。こちらは風化しかけた事件を追い掛けますぞ。
横領の舞台となった青森県住宅供給公社というのがどのような機構なのか、東奥日報が詳しく書いています。
快適住宅の提供を目的に、県と県内八市が出資して1966(昭和41)年に設立した。事業の柱である青森市・戸山などの宅地分譲や、県営住宅などの維持管理事業は97-2000年度販売実績が計370戸。1997年度に策定した中長期経営計画を4年とも下回り、達成率は62%にとどまる。……
■まともにバブル崩壊の影響を受けて、経営状態が悪化していたようです。具体的な数値を同紙面から抜粋します。
98年度が4187万円の欠損金を計上。
99年度は過去の儲け(原価未精算勘定)で4385万円補填して
23万円余の黒字。
00年度は3951万円を穴埋めして4万円余の剰余金を計上。
■帳簿上で穴埋め作業を重ねて「黒字」決算を続けていた事が分かります。どうやら、この作業は予想以上に複雑なものだったらしく、その操作の専門家として千田さんは頼りになる存在だったというのが、横領事件の温床となったもののようです。
…赤字を埋めるためにとを取り崩し、単年度黒字を維持している。また、民間との競合事業が目立つため、県公社等経営委員会から事業の縮小・廃止など抜本的見直しを求められている。県は来年4月に同公社と県道路公社、県土地開発公社の管理部門を一本化する方針。
■正常な「一本化」が始まれば、14億円もの大穴が発見されないはずは有りませんから、犯人は逃げ切るために海外逃亡を計画していた可能性が有るわけですなあ。
県住宅供給公社で30日に発覚した総額約14億円にも上る不祥事。渦中の男性職員(43)は、問題発覚後の先週末ごろから職場には出勤しておらず、現在は所在がつかめないとされる。「何が起きたのか」「そんな大金の使い道など見当がつかない」-。ごく普通に生活していたように見えた男性職員による突然降ってわいたような巨額使い込み事件に、公社の関係者たちは困惑するとともに大きな衝撃を受けている。……公社関係者によると、この男性職員は大学卒業後、公社入りし、経理事務などを長く務めてきた。職場へは自転車で通勤し、酒やギャンブルなどといったうわさもなかったという。
■大体、巨大な犯罪が発覚した当初は、「信じられない」「普通の人だった」という証言があちこちから拾われるものですが、決まって事件の全貌が見えて来ると、まったく逆の証言が次々と報道されるのはどうしたわけでしょう?この千田さんも、実際には地元でも荒っぽい金の使い方をしていたり、好待遇の公務員にしても贅沢な長期海外旅行を繰り返していた事実が広く知られていたようです。
ある職員は「(男性職員は)先週末ごろから職場を休んでいるが、特に変わった様子には見えなかった。趣味の釣りを楽しむなど、派手さはないごく普通の生活態度だった」と語る。男性職員は数日前までは自宅にいたが、現在は連絡が取れなくなっているという。……
2001年10月31日 東奥日報
■自分の保身のために、身内を庇うような証言が並んでいるのを観ますと、それ自体が犯罪の原因となった組織の体質を浮かび上がらせているようなものです。「趣味は釣り、派手さは無い」、こんな発言をしていた同僚は、千田さんが何を釣っていたのか?何度も地球の裏側にある南米某国に頻繁に旅行していた事を、本当に知らなかったのでしょうか?何も知らなかったとしたら、随分と不思議な職場ですなあ。
木村守男知事は31日午前9時55分、県庁に到着。今回明らかになった県住宅供給公社の不祥事について「正式に真相の報告を受けて、県民の前にできるだけのことを公表する。専門家の方々の協力をいただいて事実関係を確認し、責任体制を考えていきたい」と険しい表情で述べるとともに「大変申し訳なく思っています」と繰り返して、知事室に消えた。また、同11時すぎ、知事室から出た知事は使い込みの金額について「驚いた」と語った。
2001年10月31日 東奥日報
■ここまでが、事件が発覚した日の記事です。金額の大きさしか報道のネタは有りませんから、まさかこれが外務省まで巻き込んだ国際問題に発展するとは、誰も想像しなかったのでした。