犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム>流木止め工の設置

2012年03月22日 | 辰巳ダム
 ダム湖の上流の右岸の旧駒帰小学校の下あたり、左岸の城力集落の真下に川を横断して「流木止め工」が造られた。下の写真は右岸から望んでいる。左が上流、右が下流である。
 

 洪水時に流れてくる流木を掴まえるためのしかけである。毎秒4,5mの速さで土砂、石ころ、流木などさまざまな物が流れてくるが、流木はダム堤体の穴に詰まる恐れがあるのでここで取り除こうという算段である。
公開された資料によれば、「辰巳ダムの洪水調節方式である「孔あき方式」にて流木止めを設置するケースは全国初となる」なのだそうだ(第1号の益田川ダムにも直上流に流木止めはあるが。)。
 
 石川県はもともと平成17年、18年の「水理模型実験」の結果から、ダム堤体の穴(常用洪水吐き)にスクリーンを設置した実験の放流量のデータでは、流木による放流低下量が3%程度で大きく放流能力を損ねるものではない、だから穴は詰まらないと主張していた。ダム堤体の上流に流木止めは要らないことになる。

 ところが、『犀川辰巳治水ダム建設事業 ダム管理施設(流木止め)設計業務委託報告書』平成22年3月 を見ると、平成18年の「水理模型実験」の際にも「遷移流時に、流木は比重の違いにより水平や斜め、垂直に浮遊しながら洪水吐き付近に集まり、洪水吐きに引き込まれ、開口部内で絡み合い詰まる。、、、洪水後においても、詰まりが解消されることはなかった。」ということがわかっており、そして「実験結果より、スクリーンにより洪水吐き開口部に流木閉塞を防止できることが示されたが、水位上昇時・下降時ともに遷移流時水位付近ではスクリーン前面に流木が滞留する傾向を示している。流木による閉塞防止機能の確実性を高めるため、スクリーン上流への流木捕捉工の追加設置」することになったのだという。当方は「水理模型実験」では、短く真っ直ぐの木だけと条件を緩和していたから詰まらないのだと理解していたが、この実験でも詰まることがわかっていたのだ。実際の洪水では長さが10mもある流木ものもあり幹が曲がり枝も根もあるのだから2.9mの穴など簡単に詰まることになるはずである。詰まれば、期待する洪水調節が不能になる。

 大きな断面の川をコンクリートの壁で塞いで小さな穴だけをあけておくのだから、何もしなければ詰まるに決まっている。辰巳ダムの場合は、2.9m角の穴だから、周辺の山に生えている樹木を目安に考えるといかにも小さい。この流木止めは、計画高水(毎秒600立方メートル)を対象として400立方メートル弱の流木を止めることができるようになっているというが。

 洪水のたびに、ここに引っかかる木をそのままにしておくわけにはいかない。埋まって効果がなくならないように未来永劫、手間をかけなければいけないことになる。そんなことは続きそうにもない。その内に造ったときの考えは忘れられ、放置されるのが落ちだろう。いざ、想定の洪水が来たときには、何の役にもたたず、ダムの洪水吐きが詰まったということにならないように願いたいものだ。

 そもそも洪水対応をダムではなく、河川の疎通だけで考えておけば、このような懸念はいらないのだ。ややこしい仕掛けを造りたい人たちがいて造ることばかり考えている人たちは、維持も含めて治水の安全を確保できるのだということがおろそかになる。仕掛けをひきわたされた住民は維持という重荷を未来永劫背負い込まされることになる。

【資料】『犀川辰巳治水ダム建設事業 ダム管理施設(流木止め)設計業務委託報告書』平成22年3月 は、ホームページに掲載してあります。ファイルは100メガと少し大部です。
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