基本高水ピーク流量を決めるためのハイドログラフ群(最大流量あるいはピーク流量)の計算過程の要素として取り上げた3要素(対象降雨量、棄却基準、飽和雨量)でそれぞれ安全側をとれば安全が積み重なり、過大になることを主張したが、まったく判断が示されなかった。個々の要素は審査されたが、いずれも行政裁量の範囲という判示である。
【スライド32】①ピーク流量が要素の重なりで過大になる危険性を審査していない →(省略)
(意見陳述本文)
「ピーク流量の計算過程で、3つの要素が重なり、過大になる危険性を原告は指摘しましたが、これに対して、個々の要素を審査しただけで、重なる危険性については判断せず、つぎのような判示をしました。
「基本高水ピーク流量の決定又は検証の過程に関する石川県又は処分行政庁の判断内容に不合理な点があったことを認めるに足りる事情は見受けられない。そうすると、基準地点で流下させるべき流量は、同地点における現況流下能力を超過していることから、本件事業において一定の治水対策を図るべき必要性があったと認められる。」(p.123)とあります。
決定過程についての判断は示していますが、計算されたピーク流量の大きさ自体についての評価はしていません。
計算過程の要素として取り上げた3要素(対象降雨量、棄却基準、飽和雨量)について、すべて被告の主張に合理性があることを認めています。これら計算の詳細について、基準、マニュアル等で計算方法が具体的に明記されているわけではなく、記載されていないことは行政の裁量にまかされている、さらに、計算過程で安全側に取るということも裁量に委ねられているとも示唆しています。
社会通念上、常識的に小さな誤差も積み上げれば大きくなって無視できないことはわかります。この指摘に対して、裁判所は何の判示もしていません。過程の審査だけで、結果を審査できないのであれば、検討過程の合理性について、厳密に審査されなければならないはずです。
行政の裁量を尊重するとしても、積み重なる危険性について検討していないのは、尽くすべき考慮がつくされていないことであり、判断過程を審査する司法として、社会通念上、著しく不相当な点があるのだから、積み重なり過大になる危険性について「考慮すべきことを尽くさなかった」と指摘するべきであり、事業計画の合理性を求めた土地収用法20条3号の要件に反しています。」
(つづく)
【スライド32】①ピーク流量が要素の重なりで過大になる危険性を審査していない →(省略)
(意見陳述本文)
「ピーク流量の計算過程で、3つの要素が重なり、過大になる危険性を原告は指摘しましたが、これに対して、個々の要素を審査しただけで、重なる危険性については判断せず、つぎのような判示をしました。
「基本高水ピーク流量の決定又は検証の過程に関する石川県又は処分行政庁の判断内容に不合理な点があったことを認めるに足りる事情は見受けられない。そうすると、基準地点で流下させるべき流量は、同地点における現況流下能力を超過していることから、本件事業において一定の治水対策を図るべき必要性があったと認められる。」(p.123)とあります。
決定過程についての判断は示していますが、計算されたピーク流量の大きさ自体についての評価はしていません。
計算過程の要素として取り上げた3要素(対象降雨量、棄却基準、飽和雨量)について、すべて被告の主張に合理性があることを認めています。これら計算の詳細について、基準、マニュアル等で計算方法が具体的に明記されているわけではなく、記載されていないことは行政の裁量にまかされている、さらに、計算過程で安全側に取るということも裁量に委ねられているとも示唆しています。
社会通念上、常識的に小さな誤差も積み上げれば大きくなって無視できないことはわかります。この指摘に対して、裁判所は何の判示もしていません。過程の審査だけで、結果を審査できないのであれば、検討過程の合理性について、厳密に審査されなければならないはずです。
行政の裁量を尊重するとしても、積み重なる危険性について検討していないのは、尽くすべき考慮がつくされていないことであり、判断過程を審査する司法として、社会通念上、著しく不相当な点があるのだから、積み重なり過大になる危険性について「考慮すべきことを尽くさなかった」と指摘するべきであり、事業計画の合理性を求めた土地収用法20条3号の要件に反しています。」
(つづく)