犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム裁判>これだけは言っておきたい(17)

2015年07月31日 | 辰巳ダム裁判
 基本高水ピーク流量を決めるためのハイドログラフ群(最大流量あるいはピーク流量)の計算過程の要素として取り上げた3要素(対象降雨量、棄却基準、飽和雨量)でそれぞれ安全側をとれば安全が積み重なり、過大になることを主張したが、まったく判断が示されなかった。個々の要素は審査されたが、いずれも行政裁量の範囲という判示である。

【スライド32】①ピーク流量が要素の重なりで過大になる危険性を審査していない →(省略)
(意見陳述本文)
 「ピーク流量の計算過程で、3つの要素が重なり、過大になる危険性を原告は指摘しましたが、これに対して、個々の要素を審査しただけで、重なる危険性については判断せず、つぎのような判示をしました。
「基本高水ピーク流量の決定又は検証の過程に関する石川県又は処分行政庁の判断内容に不合理な点があったことを認めるに足りる事情は見受けられない。そうすると、基準地点で流下させるべき流量は、同地点における現況流下能力を超過していることから、本件事業において一定の治水対策を図るべき必要性があったと認められる。」(p.123)とあります。
 決定過程についての判断は示していますが、計算されたピーク流量の大きさ自体についての評価はしていません。
計算過程の要素として取り上げた3要素(対象降雨量、棄却基準、飽和雨量)について、すべて被告の主張に合理性があることを認めています。これら計算の詳細について、基準、マニュアル等で計算方法が具体的に明記されているわけではなく、記載されていないことは行政の裁量にまかされている、さらに、計算過程で安全側に取るということも裁量に委ねられているとも示唆しています。
社会通念上、常識的に小さな誤差も積み上げれば大きくなって無視できないことはわかります。この指摘に対して、裁判所は何の判示もしていません。過程の審査だけで、結果を審査できないのであれば、検討過程の合理性について、厳密に審査されなければならないはずです。
行政の裁量を尊重するとしても、積み重なる危険性について検討していないのは、尽くすべき考慮がつくされていないことであり、判断過程を審査する司法として、社会通念上、著しく不相当な点があるのだから、積み重なり過大になる危険性について「考慮すべきことを尽くさなかった」と指摘するべきであり、事業計画の合理性を求めた土地収用法20条3号の要件に反しています。」
(つづく)
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辰巳ダム裁判>これだけは言っておきたい(16)

2015年07月30日 | 辰巳ダム裁判
 以上を踏まえて、一審判決に対する意見は6点ある。

【スライド31】一審判決の治水の問題点 →(省略)
(意見陳述本文)
 「石川県が想定する洪水について合理性はあると認めた、一審の判決について、特に問題だと思われる点は次の6点です。
 ①ピーク流量が要素の積み重なりで過大になる危険性を審査していない
 石川県が検討していないことについて審査をせず、判示もしていない、結果的に過大になることを認めています。
 ②過去の洪水を考慮していない
 検討していないことについて合理性があると認めています。
 ③石川県の流出計算結果で検証していない
 計算結果は出しているが実効的な検討していないことについて合理性を認めています。
 ④流量確率評価をしていない 
 実施していないことについて合理性を認めています。
 ⑤比流量は検証ではない
 基本高水ピーク流量の比流量の検討はしているが、一審判決では、検証ではないのに検証と認めています。
 ⑥土地強制収用をするための緊急性はなかった 」
(つづく)
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辰巳ダム裁判>これだけは言っておきたい(15)

2015年07月29日 | 辰巳ダム裁判
 流量確率によって、評価をすると、1750立方メートル毎秒は、800年確率となる。

【スライド29】流量確率で生起確率を求めると

(意見陳述本文)
 「この図は、石川県が観測した流量データから、流量確率評価した数値と辰巳ダム計画の基本高水を比較したものです。
基本高水1750立方メートル毎秒は、流量確率で求めた生起確率で見ますと、昭和53年から平成14年までの25年間のデータの計算結果から、800年確率となります。」
 
 【スライド30】基本高水ピーク流量が800年確率値となり、 →(省略)
 費用対効果(=効果/費用)は、0.5にしかならない。費用よりも効果が小さく、事業しない方がいいということになる。

(意見陳述本文)
 「これらの確率を石川県が試算した表に代入しますと、効果は、111億円となり、費用200億円の方が大きく、差し引くとマイナスになります。
 経済合理性がないので、公益性はなく、20条3号要件を満たさないことになります。
『法20条3号の該当性の要件は、、、、事業計画全体の合理性に関する要件を定めたもの、、、得られる公共の利益と失われる利益とを比較衡量した結果、前者が後者に優越すると認められる場合にこの要件は適合する』(判決p.99)としていますが、失われる利益と比較衡量する以前に、得られる公共の利益自体がマイナス(費用>効果)です。」
(つづく)

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辰巳ダム裁判>これだけは言っておきたい(14)

2015年07月28日 | 辰巳ダム裁判
 辰巳ダムでは、24個のピーク流量群から、最大を100年確率の洪水(基本高水ピーク流量)と決めたが、この妥当性を検証していない。国・県の主張は比流量で検証しているとしているが、地形条件や気象条件の近似している、隣接の浅野川や手取川流域と比較しないで遠隔の雨の多い黒部川流域と比べてバランスの辻褄を合わせたもので過大を糊塗しただけのものである。犀川流域での降雨データをもとに検証されたものではない。

【スライド27】検証がされていない →(省略)
(意見陳述本文)
「この乖離が著しくならないような配慮として、検証が求められています。
 そのためには、検証として、流量確率で基本高水の確率を評価することが必要です。流量確率を用いなければ、洪水の最大流量の起きる確率を求めることはできません。しかし、残念ながら、辰巳ダムではそれがなされていません。
 これをやらないと基本高水ピーク流量の生起確率が不明です。辰巳ダム計画では、2日雨量の確率と同じと仮定して基本高水ピーク流量1750立方メートル毎秒を100年確率相当としていますが、実際のところは不明です。
 基本高水ピーク流量1750立方メートル毎秒を100年確率相当として、辰巳ダムの経済合理性の検討も行われています。」

 想定する洪水を大きくすると、この洪水が発生した場合の水害被害額も比例して大きくなる。ダム建設費は辰巳ダムの場合、半分が関連事業でダム本体の費用の割合は比較的小さいのでダム自体を拡大しても全体の建設費は比例して大きくならない。したがって、想定の洪水を大きくすればするほど、経済性(費用対効果)はあがる傾向にある。辰巳ダムの例でもそれがよくわかる。

1750立方メートル毎秒をおおむね100年に1回発生するものと想定して、辰巳ダムが無い場合、ある場合の水害被害額の差を辰巳ダムの効果として費用対効果を算定して、経済合理性の検討をしている。

【スライド28】辰巳ダムの経済合理性の検討 →(省略)
(意見陳述本文)
 「計画の合理性を数値で判断ための『経済合理性の検討』は、新基準で求められています。費用よりも効果が大きいことを調べます。石川県の試算では、辰巳ダムの費用200億円に対して、効果は735億円と大きく、費用に対する効果(=効果/費用)は、3.67倍となっています。経済合理性があると判断されています。これは、基本高水ピーク流量1750立方メートル毎秒を検討しないで単に100年確率相当として計算されています。」
(つづく)
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辰巳ダム裁判>これだけは言っておきたい(13)

2015年07月27日 | 辰巳ダム裁判
 新基準の決め方では、2日雨量の確率と計算で求められた洪水量の確率が一致していない、これについて基準では著しい差違がある場合の注意が記載されているだけである。検証で確認しなさいとはあるもののかなり、いい加減である。
〔新基準の記載〕「対象降雨の規模は、その降雨に起因する洪水のピーク流量の年超過確率とは必ずしも1:1の対応をしない」(p.30)。2日雨量とピーク流量、つまり、対象降雨量の確率と洪水量の治水安全度(確率)は1対1に対応していない。

 対象降雨(2日雨量)とこれに対応する洪水(最大流量あるいはピーク流量)について、発生確率の比較の例を以下に示す。

【スライド26】2日雨量とピーク流量の確率が一致しない →下に掲載
(意見陳述本文)
「2日雨量と洪水の最大流量とは確率が一致しないのです。洪水量(最大流量)の生起確率は、流量確率評価をしないとわかりません。対象降雨の2日雨量と実際に発生した洪水量の生起確率は一致しないのは、下の表でもわかります。
 例えば、一番下の行にある、平成20年7月に発生した浅野川水害では、2日雨量が1/5~1/10、つまり5年から10年確率でしたが、洪水の最大流量は、200年確率だったと石川県は説明しています。
 つまり、2日雨量と洪水の最大流量の確率は一致しないのです。
 新基準によって最大値を取り、想定の洪水を決めると非常に確率の低い、不適切なものを選ぶ恐れがあります。」(つづく)
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