犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム裁判>石川県による流出計算の結果を検討すれば検証できる

2015年06月30日 | 辰巳ダム裁判
 石川県は、検証の一つとして、「石川県による流出計算の結果との比較」で、雨量から流出計算で求めた過去の洪水と基本高水ピーク流量を比較しているが、最大規模の洪水と比べて著しい差があり、基本高水ピーク流量ははるかに大きいが、比較だけに終わっている。

 裁判所の判断は、「約70年分の観測記録をもとに実施されているところ、本件事業に係る計画規模が年超過確率100分の1であることに鑑みると、本件基本高水ピーク流量が前記流出計算によって算出された最大の流量値を上回っていたことをもって、直ちに本件基本高水ピーク流量の値が過大であるとはいえない」(p.121)としている。100年に足りないデータだから、100年確率をこれだけで評価できないとし、基本高水ピーク流量が過大か、適正かを判断することを放棄しているだけであり、結局、検証していないということを是認している。

 石川県が計画を策定した段階でデータの蓄積は十分であり、非毎年最大流量を持って流量確率評価をすることができる。控訴人が試算した結果では、100年確率値は、1,269m3/秒である。飽和雨量0mmと仮定した数値であるので、これを飽和雨量100mmに換算すると、964m3/秒となる。これが、昭和17年から平成10年までの57年間の雨量データから求めた100年確率値となる。

 このような判断は、常識的な範囲のものであり、尽くすべき考慮が尽くされていないと判示すべきで、合理性があり、公益性があるとの判断はできないので、法20条3号要件p.99-100を満たしていない。

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辰巳ダム裁判>過去の洪水を考慮していない

2015年06月29日 | 辰巳ダム裁判
 裁判所の判示は、過去の洪水記録との比較について、「現在の観測技術よりも劣っており、必ずしも正確に記録されていない」p.119、基本高水ピーク流量 > 既往最大洪水を確認するだけのものとし、逆転する場合には基本高水ピーク流量の判断が左右されることはあるとし、記録が100年分に満たない、という理由で、石川県が過去の洪水との比較検証を行っていないことについて不合理ではないとした。

 しかし、河川法の規定、基準の記載等には、既往洪水を考慮して基本高水を決めるという記載が繰り返しでてくる。河川法施行令第10条には「過去の主要な洪水及びこれらによる災害の発生状況等を考慮する」とある。犀川の過去の洪水の記録は信頼性に乏しいという被告の主張を鵜呑みにするだけの判示をしているが、これは、過去の洪水など参考にしなくていいと同様のことを言っているのだから、河川法を軽視しているということになる。

 結果ではなく、判断過程を審査するのであれば、行政の言い分を鵜呑みにするのではなく、既往洪水をしっかり調査して基本高水ピーク流量を判断しなさいと、事業認定処分に至った判断過程に「尽くすべき考慮が尽くされていない」と判示するべきである。

 少なくとも、100年確率を目途としている、100年間におおよそ1回発生する規模を対象としているのであるから、その間に発生するものとほぼ同規模(基本高水ピーク流量 ≒ 既往最大洪水)であることを確認するべきである。それでも確認できないとすれば、数百年間の古文書や伝承などからも推定することも他の河川の事例では多くあり、推定は可能である。それらのことを一切放棄して検討しないにもかかわらず、合理性があると判断した一審判決は河川法の精神を誤解している。

「尽くすべき考慮が尽くされていない」の合理性があり、公益性があるとの判断はできないので、法20条3号要件(p.99-100)を満たしていない。
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辰巳ダム裁判>基本高水ピーク流量が要素の重なりで過大になる危険性を審査していない

2015年06月28日 | 辰巳ダム裁判
 一審で原告は、
 ピーク流量の計算過程で、3つの要素が重なり、過大になる危険性を指摘した。裁判所は、個々の要素を審査しただけで、重なる危険性については判断を保留して、つぎのような判示をした。

「基本高水ピーク流量の決定又は検証の過程に関する石川県又は処分行政庁の判断内容に不合理な点があったことを認めるに足りる事情は見受けられない。そうすると、基準地点で流下させるべき流量は、同地点における現況流下能力を超過していることから、本件事業において一定の治水対策を図るべき必要性があったと認められる。」(p.123)であるとした。

 決定過程についての判断は示しているが、計算されたピーク流量の大きさ自体についての評価はしていない(注:これは、政策的、専門技術的な事柄で、司法に判断のための知識も判断能力もないため、行政の裁量を尊重するということだろうと理解する。)。

 計算過程の要素として取り上げた3要素(対象降雨量、棄却基準、飽和雨量)について、すべて被告の主張に合理性があることを認めた。これらについて、基準、マニュアルにも計算方法が具体的に明記されているわけではなく、記載されていないことは行政の裁量にまかされているとして。さらに、計算過程で安全側に取るということも裁量に委ねられているとも示唆した。

 社会通念上、誰でも常識的に、小さな誤差でも積み上げれば大きくなって無視できないことはわかる。この指摘に対して、裁判所は何の判示もしていない。過程の審査だけで、結果の審査できないのであれば、検討過程の合理性について、厳密に審査されなければならないはずである。

 行政の裁量を尊重するとしても、積み重なる危険性について検討していないのは、尽くすべき考慮がつくされていないことであり、判断過程を審査する司法として、社会通念上、明らかにおかしいのだから、積み重なり過大になる危険性について「考慮すべきことを尽くさなかった」と指摘するべきであり、事業計画の合理性を求めた土地収用法20条3号の要件に反している。
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辰巳ダム裁判>原告の主張は一蹴されている

2015年06月27日 | 辰巳ダム裁判
 裁判では過大な想定洪水だ、辰巳ダムは要らないと主張しましたが、一蹴されました。
 控訴審も期待薄です。
 墓場に入るまで、「辰巳ダムは要らない」と呪文のように唱えていくでしょう(-_-;)

 辰巳ダムの直下にある、辰巳用水は、現在も役に立っている江戸期の典型的な土木事業であり、後世の子孫への最大遺産です。一方、辰巳ダムは、役に立たない、平成の無駄な土木事業であり、後世の子孫が背負った負の遺産です。

 辰巳ダムの主目的は治水ですが、一言で言えば、「過大な想定洪水」。石川県が策定し、国がお墨付きを与えた「想定洪水」、つまり、基本高水ピーク流量は、有史以来発生したことのないような、全くの架空の想定です。

 石川県は、犀川の治水のために、過去最大規模の洪水を想定して、昭和40年度に犀川ダムを完成させました。その後、現在までの50年間の間に、この犀川ダムで想定した洪水に相当する洪水が1回発生しました。平成10年の台風7号です。犀川ダムは治水のために役に立ったかというと、その後、河道を切り下げて洪水を流せる能力も並行して整備を進めてきたので、平成10年時点では、犀川ダムが無くても流すことができました。さらに、浅野川放水路からの合流できる最大量を合わせても、犀川大橋基準点で流すことができています。つまり、結局は、治水ダムがいらないのです。
 昭和40年からの現在までの50年間に治水ダムが必要だという洪水は発生していません。昭和40年以前でも、最大規模は昭和36年の第二室戸台風洪水ですが、これも平成10年の台風7号と同規模であり、それ以前の昭和、大正年代にこれを超える規模の洪水はありません。
 つまり、20世紀のおおむね100年の間に発生した最大規模の洪水が発生して、浅野川からの合流量を加えても、現在ある3つの治水ダム、犀川ダム、内川ダム、辰巳ダムがなくても、犀川大橋基準点では氾濫しないのです。
 石川県が設定した基本高水ピーク流量が有史以来発生したことのないような想定洪水であるという主張の根拠です。

 しかし、過去に発生していないからといって予測し難いのが自然現象ですので、備えは必要です。しかし、その備えとして、治水ダムが3つもいるのか。
 安全安心社会のインフラとしても明らかに過剰で辰巳ダムはいらない。
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辰巳ダム裁判>比流量は検証か

2015年06月26日 | 辰巳ダム裁判
 比流量も検証の意味がある(p.122)との判示がされたが、これは誤りである。

「基本高水の決定」のフローチャートに「流量確率、比流量による検証」との記載があるが、これは「流量確率、比流量による検証(とバランス考慮)」であり、(とバランス考慮)が省略されている。下段の解説を読めばわかる。

「流量観測データが十分蓄積されているような場合には、流量確率を用いたり、また、中小河川では合理式による値と比較を行う等により、基本高水のピーク流量を検証することや、比流量を用いて、本支川バランス、上下流バランスや流域の気候特性や計画規模が同規模の他河川とのバランスを考慮することが必要である。」(p.34)と記載されている。

 判示は、「基本高水ピーク流量に対する検証としての意味を持たないとは言い難い」(p.122)として、検証の意味を持つと判示しているが、新基準の解説(p.34)に明記されているとおり、バランス確認、類似河川で近似しているかを判断する指標であり、検証ではない。 

 検証は、解説に記載されているとおり、「流量確率評価、合理式による値との比較等」であり、比流量は含まれていない。

 比流量のバランス確認とともに、検証もしなければいけないのである。
 したがって、「新基準には、比流量を用いた同規模の他の河川との比較が基本高水ピーク流量の検証方法として明示されており」(p.121-122)と判示したのは誤りである。
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