(リスク回避のダムがリスクを発生させる!)
ダムは河道に設置された巨大な障害物である。そんなものがリスクを発生させないわけはない? 洪水リスクを回避あるいは軽減するためのダムが別のリスクを発生させる。辰巳ダムでは、ダム湖斜面の地すべりである。
ダム湖の地すべりを高谷精二氏の言葉を借りて説明するとつぎのようになる。
ダム湖に湛水することで、地山に水の浸透をうながすことになる。地山に多くの隙間があり、ここに水が溜まるとスポンジのように水を含み、水位が下がっても土層に含まれた水は動き出すのが遅く、水を含んだ土層はその重さに耐えきれず、滑り落ちそうになる、ダム湖の水位の上下でこのような繰り返しをすることで、土層に負荷をかけて劣化させていることになり、最終的に山くずれあるいは地すべりにいたることになる。
この地すべりリスクが軽視されている。
洪水リスクに軽減するための施設が、辰巳ダムである。
おおむね100年に一回の洪水が1750立方メートル毎秒の大きさで発生してこれによって金沢市街地で大きな洪水被害が起きる危険性である。洪水リスクの大きさはつぎのように表される。
洪水リスク =(被害)×(発生確率)
100年に一回の洪水による被害が莫大で、確率1/100を乗じても洪水リスクは非常に大きいというのである。このリスクが大きいというのが、辰巳ダムの理由である。
現実には、昭和36年以来、半世紀以上にわたり、犀川の堤防の氾濫はない。しかも、治水ダムが2つ造られ、河道の拡幅/切り下げも実施されて安全性は著しく改善している。洪水氾濫の恐れは著しく減少して、洪水リスクはほとんど無いように感じられるが。
それにもかかわらず、石川県は、洪水リスクがあると辰巳ダムを築造した。地すべりリスクが発生することになった。
ダム湖に湛水することで発生するダム湖斜面の地すべりもつぎのように表される。
地すべり被害リスク=(被害)×(発生確率?)
である。発生確率がわからないところが難しいところである。
わからないことを基準で記載できないので、付随的な扱いである。
「貯水池内又は貯水池に近接する土地において、流水の貯留に起因する地すべりを防止するため、必要がある場合には、適当な地すべり防止工を計画するものとする。」(p.138)と、心配があれば、調査して対策をしなさいとしか、書かれていない。
被害の想定規模は大きいとしても、発生確率がわからないので、リスクを軽視されがちである。発生確率どころか、発生するかどうかについても経験的な判断に依存している。経験を基にしたマニュアルでは、斜面の安定解析で安全率低下が5%未満であれば、土塊が移動しないとして対策工は不要とし、ただし、移動する恐れはあるので監視は続ける、というものである。
辰巳ダムでは、ダム湖に面して鴛原超大規模地すべり地が確認されているが、マニュアルにもとづいた石川県の調査・解析では安定していると言うことになり、地すべり対策はなされていない。裁判所も十分な調査と対策がなされていると判示した。
けれどもリスクは無くならないのである。
辰巳ダムでのリスクと争点は以下のとおり。
①鴛原超大規模地すべり地全体の地すべり
発生したときの被害:大規模な土塊が移動してダム湖を埋める。湛水時であれば段波で洪水発生。
被告(国・石川県):地すべり面あり、安全率低下5%未満で対策工不要
原告(住民):安全率低下5%未満でも地すべりの可能性あり、対策工要
②鴛原の末端地すべり
発生したときの被害:大規模な地すべりを誘発する危険が発生。
被告(国・石川県):地すべり面無し、安全率低下は未確認、確認の要なし
原告(住民):地すべり面に相当する面あり、安定解析すべき、また、土質工学的な円弧すべりの可能性があり、安定解析すべき。
③瀬領の初生地すべり
発生したときの被害:二十戸ほどの集落がダム湖に崩落する。
被告(国・石川県):地すべり面無し、安全率低下は未確認
原告(住民):岩盤地すべりの可能性あり、その深さまで調査がされていない
ダムは河道に設置された巨大な障害物である。そんなものがリスクを発生させないわけはない? 洪水リスクを回避あるいは軽減するためのダムが別のリスクを発生させる。辰巳ダムでは、ダム湖斜面の地すべりである。
ダム湖の地すべりを高谷精二氏の言葉を借りて説明するとつぎのようになる。
ダム湖に湛水することで、地山に水の浸透をうながすことになる。地山に多くの隙間があり、ここに水が溜まるとスポンジのように水を含み、水位が下がっても土層に含まれた水は動き出すのが遅く、水を含んだ土層はその重さに耐えきれず、滑り落ちそうになる、ダム湖の水位の上下でこのような繰り返しをすることで、土層に負荷をかけて劣化させていることになり、最終的に山くずれあるいは地すべりにいたることになる。
この地すべりリスクが軽視されている。
洪水リスクに軽減するための施設が、辰巳ダムである。
おおむね100年に一回の洪水が1750立方メートル毎秒の大きさで発生してこれによって金沢市街地で大きな洪水被害が起きる危険性である。洪水リスクの大きさはつぎのように表される。
洪水リスク =(被害)×(発生確率)
100年に一回の洪水による被害が莫大で、確率1/100を乗じても洪水リスクは非常に大きいというのである。このリスクが大きいというのが、辰巳ダムの理由である。
現実には、昭和36年以来、半世紀以上にわたり、犀川の堤防の氾濫はない。しかも、治水ダムが2つ造られ、河道の拡幅/切り下げも実施されて安全性は著しく改善している。洪水氾濫の恐れは著しく減少して、洪水リスクはほとんど無いように感じられるが。
それにもかかわらず、石川県は、洪水リスクがあると辰巳ダムを築造した。地すべりリスクが発生することになった。
ダム湖に湛水することで発生するダム湖斜面の地すべりもつぎのように表される。
地すべり被害リスク=(被害)×(発生確率?)
である。発生確率がわからないところが難しいところである。
わからないことを基準で記載できないので、付随的な扱いである。
「貯水池内又は貯水池に近接する土地において、流水の貯留に起因する地すべりを防止するため、必要がある場合には、適当な地すべり防止工を計画するものとする。」(p.138)と、心配があれば、調査して対策をしなさいとしか、書かれていない。
被害の想定規模は大きいとしても、発生確率がわからないので、リスクを軽視されがちである。発生確率どころか、発生するかどうかについても経験的な判断に依存している。経験を基にしたマニュアルでは、斜面の安定解析で安全率低下が5%未満であれば、土塊が移動しないとして対策工は不要とし、ただし、移動する恐れはあるので監視は続ける、というものである。
辰巳ダムでは、ダム湖に面して鴛原超大規模地すべり地が確認されているが、マニュアルにもとづいた石川県の調査・解析では安定していると言うことになり、地すべり対策はなされていない。裁判所も十分な調査と対策がなされていると判示した。
けれどもリスクは無くならないのである。
辰巳ダムでのリスクと争点は以下のとおり。
①鴛原超大規模地すべり地全体の地すべり
発生したときの被害:大規模な土塊が移動してダム湖を埋める。湛水時であれば段波で洪水発生。
被告(国・石川県):地すべり面あり、安全率低下5%未満で対策工不要
原告(住民):安全率低下5%未満でも地すべりの可能性あり、対策工要
②鴛原の末端地すべり
発生したときの被害:大規模な地すべりを誘発する危険が発生。
被告(国・石川県):地すべり面無し、安全率低下は未確認、確認の要なし
原告(住民):地すべり面に相当する面あり、安定解析すべき、また、土質工学的な円弧すべりの可能性があり、安定解析すべき。
③瀬領の初生地すべり
発生したときの被害:二十戸ほどの集落がダム湖に崩落する。
被告(国・石川県):地すべり面無し、安全率低下は未確認
原告(住民):岩盤地すべりの可能性あり、その深さまで調査がされていない