犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム裁判>流量確率評価 その5

2015年05月26日 | 辰巳ダム裁判
観測雨量を貯留関数法に代入して求めた非毎年最大流量による犀川大橋基準点の流量確率評価について

 辰巳ダム裁判において、過去57年間の降雨データを貯留関数法に代入して求めたピーク流量の一覧が「主要地点における最大流量」(乙第30号証)として提出された。1942年から1998年までの57年間で規模の大きい75降雨について、引き伸ばし率1.0、飽和雨量Rsa=0mm、つまり、地表面が飽和状態で浸透、蒸発量がゼロと仮定して降った雨の全量が流出するものとして計算したピーク流量一覧表である。
 この表の犀川大橋地点流量を用いて、以下に流量確率評価を行った。
詳細は、「流量確率評価 その5 観測雨量による犀川大橋基準点の流量確率評価について」を参照のこと。
 犀川大橋基準点の100年確率流量値は、964m3/秒。

平成15年(2003)の犀川水系河川整備検討委員会で基本高水ピーク流量を検証できた!
 辻本名古屋大学教授は「犀川基本高水ピーク流量への意見聴取への回答」(北陸地方整備局)の中で「(平成15年に開催されている)犀川水系河川整備検討委員会の河川計画専門部会で(中略)(基本高水ピーク流量の検証は)基本方針流量観測資料の不備などからそれが不能であると説明を受けた」としている。
 石川県は、その時点(2003)で、1998以前のデータである乙第30号証を作成していた、あるいは作成していなくとも作成できたので、石川県担当者は辻本教授に虚偽の説明をしていたということである。

雨量観測記録による流量確率評価は検証にならないと佐合証人が陳述!
 実測雨量から貯留関数法で求めた流量データを使って、流量確率評価をすることについて、「雨量から求めた流量データでは、もとは同じ雨だから、それによって検証したことにならない。」(辰巳ダム裁判の佐合証人)と陳述した。つまり、100年確率値に至るルートが異なるが、同じ雨量データであるので当然、同じ結果となると証言している。ところが、解析の結果、同じ雨量データを用いて計算した結果、100年確率値は964㎥/秒となった。一方、石川県の主張する100年確率値は1741㎥/sであり、全く異なる数値となった。

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辰巳ダム裁判>流量確率評価 その4

2015年05月25日 | 辰巳ダム裁判
観測流量による犀川大橋基準点の流量確率評価について(つづき)

 犀川の犀川大橋基準点における毎年最大流量(ダム戻し)について、昭和53年から平成23年までの34年間のデータで流量確率評価をした結果から、つぎのことがわかる。

石川県の担当者は嘘をついた!
 辻本名古屋大学教授は「犀川基本高水ピーク流量への意見聴取への回答」(北陸地方整備局)の中で「(平成15年に開催されている)犀川水系河川整備検討委員会の河川計画専門部会で(中略)基本方針流量観測資料の不備などからそれが不能であると説明を受けた」としている。
 平成15年当時でも、平成14年末までに25年の観測記録があった。量と質の問題はあるにしても、検討が不能とまではいえない。25年間のデータでSLSC0.04以下の分布が2つあり、100年確率値の平均は992m3/秒である。34年間のデータの100年確率値は平均901m3/秒であり、10%の違いしかない。
 石川県の担当者が不利な情報を隠して嘘をついたとしても、これを容易に見抜けない学識経験者も悪賢い行政マンの手のひらの上で転がされている木偶の坊である。

流量確率評価で求めた100年確率流量は、901m3/秒!
 34年間の観測流量で流量確率評価した100年確率値は、901m3/秒である。
 20世紀100年間の既往最大洪水、100年確率の対象降雨から求めたハイドログラフ群のカバー率50%値ともほぼ同等の数値である。

辰巳ダム計画の基本高水ピーク流量1750m3/秒は、2000年確率だ!
 流量確率評価による基本高水ピーク流量1750m3/秒の確率規模は、おおよそ2000年確率となる(「表QP-S-3-5(average)犀川大橋基準点 ピーク流量の確率評価 34年間」を参照のこと。)

1750の発生を仮定しても辰巳ダムの根拠はない!
 石川県が100年確率値として設定した基本高水ピーク流量1750m3/秒をデータに加えて流量確率評価してみた。2012年9月1日1750m3/秒(架空の設定)を加えて観測年数35年として流量確率評価した結果は、100年確率流量は、1591m3/秒となった。内川ダムダム時点(辰巳ダム計画以前)の基本高水ピーク流量1600m3/秒とほぼ同じである。石川県が主張する想定洪水が発生したとしても、100年確率の洪水から市民を防御するための辰巳ダムの根拠を見つけることはできない。

検討過程は当方のホームページへ(前回の「流量確率評価その3」と同じ資料)
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辰巳ダム裁判>流量確率評価 その3

2015年05月24日 | 辰巳ダム裁判
観測流量による犀川大橋基準点の流量確率評価について

 辰巳ダムの基本高水ピーク流量の検証のための流量確率評価について、事業計画を策定した石川県は、観測年数が不足して評価が不能であったとして評価がなされていない。

 辻本名古屋大学教授は「犀川基本高水ピーク流量への意見聴取への回答」(北陸地方整備局)の中で「(平成15年に開催されている)犀川水系河川整備検討委員会の河川計画専門部会で(中略)基本方針流量観測資料の不備などからそれが不能であると説明を受けた」としている。

 寶京都大学教授も上記の意見書で、「100年確率流量を(中略)統計的にある程度の精度(正確さ)を持って確率分布関数を定めるためには30~40年程度のデータ数が必要である」と述べている。

 犀川の犀川大橋基準点における毎年最大流量(ダム戻し)について、昭和53年から平成23年までの34年間のデータで流量確率評価をする。

水文統計ソフトウェアによる計算結果は、以下のとおり。
 観測年数毎のSLSC値が0.04以下の分布、各分布の100年確率値と平均値を示す。
20年: 11分布, 528~749, 平均624
21年: 3分布, 924~1068, 平均1016
25年: 2分布, 982~1001, 平均992
30年: 4分布, 833~968, 平均926
34年: 4分布, 831~940, 平均901

 著しく大きな観測値が加わると100年確率値は大きく変動する。平成10年の台風7号洪水の影響で観測年数が20年と21年の間で100年確率値が平均624から平均1016へ1.6倍に拡大している。データが加わる毎に平均値に若干、減少傾向が見られるが、変動は1割前後である。

 犀川では、観測年数と100年確率流量との関係は、「100年確率流量をある程度の精度(正確さ)を持って推定するには30~40年程度のデータ数が必要である」ではなく「25年程度のデータ数が必要である」といってもよいようである。

詳細な検討過程は、当方のホームページ
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辰巳ダム裁判>流量確率評価 その2

2015年05月23日 | 辰巳ダム裁判
観測流量による浅野川天神橋基準点の流量確率評価について

 流量確率評価その1に続いて、犀川と平行して流れる浅野川の例を通じて検討する。

 浅野川では、天神橋測水所において、昭和48年(1973)から観測されており、平成25年末現在で観測年数41年となっている。観測年数によって推定値がどのように変化するのか、浅野川を例に検討する。

 検討の過程(当方のホームページで)は省略して、100年確率流量と観測年数の関係は以下のとおり。

 観測年数ごとのSLSC値が0.04以下の分布、推定値とその平均は、

20年: 11分布, 289~351,平均316m3/秒
25年: 11分布, 275~334,平均304
30年: 3分布, 432~458,平均445
35年: 6分布, 421~512,平均462
36年: 3分布, 753~821,平均778
40年: 3分布, 705~756,平均722
41年: 3分布, 696~738,平均716

 観測年数35年以下では300、400m3/秒台で著しく小さい。
 平成20年の浅野川洪水の影響で観測年数が35年と36年の間で100年確率値が平均462から平均778へ1.7倍に拡大している。
 その後、4,5個のデータが加えられて変動が落ち着き、基本高水ピーク流量710㎥/s(昭和42年犀川総合開発事業の一環の計画,平成23年大野川水系河川整備基本方針)に収束する傾向に落ち着いている。
 著しく大きな観測値が加わると100年確率値は大きく変動する。この検討結果から、(30から)40年のデータで推定値は安定し収束しつつあり、「100年確率流量をある程度の正確さをもって推定するには30~40年程度のデータ数が必要である」という学説を裏付けているといってよいだろう。

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辰巳ダム裁判>流量確率評価 その1

2015年05月22日 | 辰巳ダム裁判
観測流量による犀川水系伏見川窪地点の流量確率評価について

 辰巳ダムの基本高水ピーク流量の検証のための流量確率評価について、事業計画を策定した石川県は、観測年数が不足して評価が不能であったとして評価がなされていない。少なくとも、30~40年の観測年数が必要といわれるが、データ数がどれほどあれば適切な評価ができるのか、否かを犀川の実例を通じて検討した。

 寶京都大学教授は辰巳ダム裁判の意見書で、「100年確率流量を(中略)統計的にある程度の精度(正確さ)を持って確率分布関数を定めるためには30~40年程度のデータ数が必要である」と述べている。

 まず、犀川水系伏見川窪地点(流域面積は、11.72km2。昭和47年から流量観測がされて平成25年末現在で42年間の記録がある。)の流量確率評価をしてみた。

 100年確率流量と観測年数の関係は以下のとおり。
 観測年数42年で流量確率評価による100年確率水文量は、56m3/秒である。
 観測年数30年以後は収束しているようである。30年から40年の観測年数があれば、ある程度の正確さを持って100年確率値を推定できるということを立証しているようである。しかし、27年間の観測年数であっても、適合度を満たす分布が4分布もあり、100年確率の平均値の差が7%程度であり、30年に満たないとしてもある程度の正確さ(誤差10%以内)で推定できるので30年を境に足りなければまったく評価できないということにならない。
 ただ、著しく大きい洪水量が観測されると少ない観測量では予測値が大きく変動するので、ある程度の観測量の多さも必要のようである。
 この検討の資料は以下のところでアクセスできる。
クリック 
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