犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム>辰巳ダム湖斜面の崩壊現場視察 2012.10.20

2012年10月21日 | ダム問題
 平成24年10月20日(土)の昼過ぎ、下鴛原の崩壊現場を見に行った。
 
 視察に先立って、石川県から調査報告書などの公開を受けて、下調べをした。公開を受けた文書は、末尾に紹介している。
 この崩壊現場は、平成20年7月28日の豪雨の際に崩壊したものである。下記の報告書の「セクション3設計条件の整理」に崩壊から数ヶ月後の写真が掲載されている。
 下流から、崩壊地A、B、Cと3箇所あり、表層崩壊として取り扱い(そのような判断をした理由の説明はない)、対策工として現場打ち吹付法枠工が採用されている。30センチほどの厚みを持ったコンクリート面で、四角に中抜きした格子状になっており、斜面が崩壊しないように抑えている、ズレ止めの鉄筋が差し込んであるものである。崩れそうなところは、土砂を取り除いて法枠工が施工されている。崩れた土砂は、斜面の下部で固めて抑えている。崩壊地Bだけは、土砂を取り除くと、辰巳ダム建設工事用地境界を超えて民地まで影響が及ぶので、これを避けて、土砂の上から法枠工を施工したので、この土砂の層を貫いて岩に届く鉄筋を挿入する工法を採用したようである。
 
 3箇所の工事費用は、1億円である。
 崩壊地A 一工区 現場打ち吹付法枠工 600m2 2888万円(直接工事費1554万円×1.85)
 崩壊地B 二工区 現場打ち吹付法枠工+鉄筋挿入工 259m2 2018万円(直接工事費1001万円×2.02)
 崩壊地B 三工区 現場打ち吹付法枠工+鉄筋挿入工 383m2 2130万円(直接工事費1230万円×1.73)
 崩壊地C 四工区 現場打ち吹付法枠工 575m2 2891万円(直接工事費1611万円×1.79)
 合計 1817m2 9927万円(直接工事費5374万円×1.85) 1平方メートルあたり5.5万円

 現場では、8割方できあがっていた。地質の専門家にいわせると、このような斜面崩壊は川が形成される途上の自然な現象であるという。多分、ダム湖にならなければ、そのまま放置されていたものだろう(となると、1億円は要らない!)。2年も経つと植生が生い茂り、あまり、崩壊もめだたないような気がしないでもない。報告書に前後の写真がならべて掲載してあるので比較できる。

 報告書では、いずれの崩壊地も降った雨が集まってできた水の勢いで表層が崩壊したとしか分析されていない。だから、集まってきた水が地中に浸透しないようにコンクリートを張ること、さらに表面が崩れないように抑えることしか対策されていない。
 石川県が作成した「地すべり地形予察図」によれば、崩壊地Aは、ほぼ「不明瞭な地すべり地形」に一致しており、崩壊地B、Cは、「地すべり地形」に隣接している。地質専門家によれば、報告書の平面図(等高線を詳細に調査した図)では、BとCはこれを包含した地すべり地形の可能性があり、それぞれは両側の弱線が今回、崩壊したとも判断できるという。現地では、想定地すべり地形の頭部あたりが、1mほどの落差があり、平坦にならされ、果樹が栽培されている。以前に滑落した際に出来た滑落崖の名残とも考えられないこともない、それ以上のことは専門家に見てもらわなければわからない。
 この調査では、簡易貫入試験で表層の1~2m程度しか調べてないので、地すべりに関してはお手上げである。地すべり地であれば、表層を抑えても単に応急の処置で何の対策にもならない。

【平成24年10月19日に公開を受けた文書】
報告書:平成22年度犀川辰巳治水ダム建設事業貯水池内法面工設計業務委託設計報告書
(00、01、02、03、04、05、06、07、08、09、10までのpdfファイル、ref1、ref2、ref3、ref4までのpdfファイル)
設計書:平成24年度犀川辰巳ダム建設事業貯水池法面工事(下鴛原1工区~4工区)
(1kouku、2kouku、3kouku、4koukuまでのpdfファイル)

 公開を受けた際に、辰巳ダム建設事務所担当者から、公開を受けた文書をホームページで公開するのは問題があるとの指摘を受けた。
 そこで、「情報公開を受けた文書をホームページで公開するのはいけないのか。」を確認した。法的な問題があるのかについては、ないとのことであった。法的な問題以外に、「報告書を作成したものに不利益をもたらす。」あるいは「紳士協定に違反する。」というようなことであった。特別なノウハウで1社しかできないというものであれば、不利益をもたらすということになるかもしれないが、報告書の中味は、どこそこのマニュアルの方針によって、決められた公式で計算しましたということを書いてある報告書が誰かに不利益をもたらすとも考えられない。「どんな不利益?」「紳士協定って何ですか」と質問したが、答えがなかった。
 辰巳ダム建設事務所担当者さま、全部公開しますが、もし、問題があれば、当方にご連絡ください。m(_ _)m

ファイル、写真などは、当方のホームページ

崩壊地Cは、左、崩壊地Bは、右。


工事の看板
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

公共事業>人口減少時代のインフラ整備について(読売新聞記事を読んで)

2012年10月20日 | 公共土木事業評価監視
読売新聞記事2012年10月19日(金)「人口減社会 浄化槽活用を」を読んで

 人口減少など社会の変化を踏まえて下水道整備の見直しをしているという記事が掲載された。

 会計検査院が、動いていない下水処理場の設備の無駄を指摘して、国土交通省に改善を求めたことがきっかけのようである。
地域によっては、下水道などの集合処理施設を作るのをやめて各戸ごとの浄化槽設置に切り替えるなどの見直しを進めているとあった。そして、国土交通省が今年になって計31県の下水道計画の見直し状況をまとめたところ、下水道など集合処理施設を作るのをやめ、浄化槽の設置を進める傾向が目立ったとある。

 家屋がまばらで、集合処理が不合理なところでも、その付近に人が増えて家屋が増えれば、結果的に合理的ということになる。ところが、その逆の場合は、計画時点でギリギリ合理的であっても事業が進行する内に人が減り、家屋が減れば不合理となる。まして、家屋がまばらで効率が悪く、不合理なところで集合処理をやれば、後々、たいへんな重荷になる。

 人口が密集する都市で集合処理をすると一人当たり10万円から20万円というところが多いが、家屋が粗である農村地域で集合処理をすると、一人当たり100万円かかるという例はざらにある。5人用の浄化槽であれば100万円ほどでできるので一人当たり20万円くらいであるから、家屋が粗なところで集合処理をすることはいかに非効率で不合理なことかよくわかる。また、別のおおよその比較を示すと、都市では、1軒のために下水道管を10m程度延ばせばいいので50万円程度であるのに対して、農村では、1軒のために下水道管を100m程度延ばして300万円程度かかる。

 人口減社会の下水道は、集合処理から個別処理の時代になるということであろう。これは、上水道でも同様である。
 2012.10.20,naka
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

辰巳ダム>犀川流域の流出率について

2012年10月19日 | 辰巳ダム
 10月17日、石川県を含め、北陸、中部、近畿の広い範囲で長時間の雨があった。寒冷前線が停滞していたところに、南からの温かく湿った空気が流れ込んだためである。犀川流域では、時間雨量最大が13mm、累計雨量最大が69mmであった。「石川県河川総合情報システム」の降雨データを使って、犀川流域の流出率について試算してみた。
 試算結果は、24時間の流出率は、0.20、最大流量時の流出率は、0.16から0.19であった。
 貯留関数法の山地の一次流出率は0.50だが、これと比べるとかなり小さい。
 24時間の流出率も0.20と小さいが、今後、計算を重ねて比較検討してみたい。
 
 データは、エクセルファイル「20121017-sai-nari」
  2012年10月17日から18日にかけて、犀川ダムと成ケ峰の降雨記録。「石川県河川総合情報システム」のダム諸量一覧表犀川ダム観測所のところを参照したものである。
計算は、エクセルファイル「sai-ryusyutu」
 犀川流域の流出率を試算するために、犀川ダム湖への流入量、犀川ダム地点と成ケ峰地点の平均時間雨量(犀川ダム流域の降雨)を用いた。最大となる時間雨量と最大となるダム湖流入量との関係から、2時間遅れで降雨がダム湖への流入に反映していることがわかった。観測されたダム湖へ流入量を2時間遅れの降雨総量で割り算して流出率を算定した。ただし、ダム湖への基底流入量(直接の降雨に関係なく一定して流入している量)は降雨直前のダム湖への流入量としている。
 エクセルファイルは、当方のホームページへ 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

公共事業>人口減少時代のインフラ整備について(その6)

2012年10月16日 | ダム問題
2012年10月9日付けで提出した陳情要望「水道事業の財政について説明を受けたい旨の要望書」について、2012年10月16日午後、能登町上下水道課において、参事の方からお話をうかがった。
「要望書」について、前段の指摘はほぼ当たっているが、後段の「上水道事業についても当面の帳尻があっていません。」の指摘は、誤りであると説明をうけた。
いきなり帳尻があうのではなくて、今後10年(平成23年から平成33年)のスパンの間で、10年間の需要予測に基づいた料金収入を見込み、最終的に帳尻があうことになるということであった。
ところが、上水道はプラスでも簡易水道はマイナス、合計すると、当年度からもマイナスで最初から帳尻があっていないということについては、平成29年に上水道と簡易水道を統合するまでは、簡易水道の赤字は一般財源から補填するので収支計算から除いてあり、収支の帳尻に関係しない、考えなくていいとのことだという。平成24年5月に平均25%の値上げをした。けれど、料金値上げ後も簡易水道分を加えると、マイナスとなるのはこのような事情があるからだ。上水道は財政上、自立型で、簡易水道は小規模だから財政上で、依存型でやむえないということか。
平成29年以降は、町の簡易水道がなくなり、上水道一つに統合される。経費の総額を計算した結果と現在の経費と比較して平均35%の料金の値上げが必要である。平成29年に第二段の平均10%の値上げをすることで、帳尻があうという見込みということである。第二段の値上げについては、不確定要素も多いと言うことでその時点でまた、どうするかを検討しましょうと言うことで議会とは調整したらしい。
平成28年までの簡易水道の赤字のことは料金改定で解決していないが、一応、帳尻をあわせたということか。

一方、下水事業の展望を聞いたが、答えは、加入率を高めて収入を増やすという努力を続けるということで、料金を上げて収入をあげる努力をするということであった。特にそれ以上のことは考えていないということだった。料金を上げれば加入率が上がらないことが予想されるので、とにかく料金のことは当分、触れないということらしい。ということは、今後の下水道財政の展望は不透明ということだろう(これは担当者の考えではなく、当方の考えである(^_^;)。)。今年度で下水道整備が終了し、今後は、老朽化する施設の改修が必要になってくるという。これらを含めて、今後の下水道事業財政の展望はいまのところないということか。

上水道に関しても苦労するのに、下水道のことまでは手がまわらないということ。きれいな水の料金以上を徴収することも難しいのに、使用した汚い水の処分にそれ以上の料金を支払ってもらうのは困難だ。人口が減少して負担をする人たちの数も減って、分母は小さくなるばかりである。下水道については、担当者には悪いが、ほとんどお手上げ状態のように感じた。これは水道サイドだけで解決できない問題のようであり、町全体で知恵を出して改善していくより仕方がないのだろう。何かよい知恵はないのか。
2012.10.16,naka
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

辰巳ダム>貯留関数法の計算結果は金科玉条だが。(その3)

2012年10月15日 | ダム問題
 石川県は、貯留関数法の算定値が金科玉条であり、絶対に間違いないと主張し続けている。例えば、「犀川の基本高水流量は、既に合理的方法によって決定しており、流量観測データが増えたことを理由として、その妥当性を検証する必要はない」(「犀川の基本高水ピーク流量について」2010.5.26(水) 辰巳ダム裁判進行協議形式の勉強会の被告説明上申書による)などと説明し、検証など要らないといっている。

 この貯留関数法の算定値を仮にすべて可としよう。
 石川県が多用するマニュアルである「中小河川計画の手引き(案)」の検討例にならって、カバー率50パーセントで基本高水ピーク流量を設定すると、犀川大橋基準点で900立方メートル毎秒強である。浅野川放水路からの放流量250立方メートル毎秒を加えても河道の流下能力1230立方メートル以下となる。つまり、既存の二つの治水ダム(犀川ダム、内川ダム)もいらないし、まして辰巳ダムなど全く不要である。
石川県の元担当者は、辰巳ダム計画のとてつもない大きい基本高水ピーク流量について、例の森口さんのように釈明するかもしれない。
「ちょっとオーバーに言ってしまった!」
数百億円も税金の浪費した上、犀川渓谷を削り取ってコンクリートで固めてしまったので、もとに戻そうとしても元にもどらない。

 もどらないが、話の元にもどって、貯留関数法について、「中小河川計画の手引き(案)」で指摘する2つの問題点について再び考えてみる。
一つは、「定数について水理学的な裏付けが弱い」である。
 この水理学公式の定数が水理学的に根拠薄弱ということはどういうことか。
木村の貯留関数法では、K値を決める際に、地形特性、流域粗度を入れて決めている。地形特性は、地形の平均勾配と最長の距離、流域粗度は、自然流域0.12、都市流域0.012と設定している。地形特性の意味は明確だが、流域粗度の方は、地表の物理的な条件との関係が不明である。類似したマニング公式の粗度係数に比べるとよくわかる。犀川の粗度係数は、一律0.030としているが、河道の断面を分解してその素材毎の粗度を合成して求めた粗度係数と比較して検証することができるが、流域粗度の方は、地表をその違いによって分割して粗度を合成して確認できない。はげ山も森林で覆われた山地も同じあつかいになっている。確かに水理学的な裏付けが弱い。
 pについてはどうだろうか。
 「木村はじめ多くの実績によれば、p=0.3~0.6の範囲になることが多い。流域が長方形でその上の流れが薄層流であればp=1/3、マニング公式にしたがえばp=0.6となる」(『河川工学』高橋裕、p.74)であり、辰巳ダム計画では、木村の貯留関数法を使っており、p=1/3である。
 辰巳ダム計画では、木村の貯留関数法を使い、p=1/3である。
辰巳ダム計画では、最初に木村式による方法で定数を設定して、実績流量と計画流量の時間流量曲線図で、定数の修正をしている。まず、飽和雨量を優先して修正して、その後で流域定数K値を修正している。分割した一部の流域で初期設定値のK値を1.8倍に修正している。K値は地形特性と流域粗度の2つの要素で構成されているが、地形特性は変えようがないので、K値を修正すると言うことは、間接的に流域粗度を修正していることになる。この修正を流域の物理的な特性の違いから説明されていないので根拠薄弱ということになる。

 一次流出率、飽和流出率についても同様のことが言える。辰巳ダム計画では、一次流出率が山地で0.5,都市部で0.7、飽和流出率が1.0である。山地といっても、はげ山から森林に覆われた山地までその性状による差が不明である。山地では、地表面が飽和する前は、0.5としているのは理屈として、最初は0で、地表が飽和する時には1.0となるので平均0.5ということなのかもしれない。
 ちなみに、山地の流出係数について0.3という値もあるという。国土交通省告示「流出雨水量の最大値を算出する際に用いる土地利用形態ごとの流出係数を定める告示(平成16年国土交通省告示第521号)」で、「山地」の流出係数が「0.3」。平均的な森林の値とすれば、犀川流域の森林の一次流出率は0.3程度でもよいのか。犀川流域では、実態が調査されていないのでわからない。
飽和流出率の1.0についても、地形変動を繰り返してきた山地がまったく水漏れのない完璧な鍋とも思えない。粘土でも水は染み込むし、岩でも亀裂があって水が漏れるだろう。識者によれば、八ッ場ダムでは、「第四紀の火山岩などでは、空隙が多く、透水性も大きいために、流出率は小さくなり」、最終の流出率は0.7程度ということで3割は漏れるのである。一方、犀川流域では、第四紀よりも古い、「辰巳ダムや犀川ダムの流域の地質は、新第三紀中新世の堆積岩が主体。医王山累層及び岩稲累層ともに、火山起源の凝灰岩や凝灰角礫岩が殆ど、これらは火山岩ではなく、海底で火山が噴火して空中へ放出された火山灰や火山礫が水底に堆積して固結したもの。堆積岩の場合、透水性が小さく、流出率は比較的大きくなる。」とはいっても0.85程度ではないか、15%ほどは漏れるとの見立てである。1.0は極端なのである。
一次流出率、飽和流出率について、水理的裏付けが弱いのは明らかである。
 
 最後に、飽和雨量である。
 前述したように、辰巳ダム計画では、最初に木村式による方法で定数を設定して、実績流量と計画流量の時間流量曲線図で定数の修正をして、まず、飽和雨量を優先して修正して、その後で流域定数K値を修正している。が、石川県の手法の説明図では、ほとんど、飽和雨量で調整してK値で微調整している。辰巳ダム計画の例では、飽和雨量は、30~200の範囲で修正、K値は数区画で1.8倍にしただけである。
結局の結論は、一次流出率、飽和流出率、K、pについては水理学的な裏付けが弱いとはいえ、一応、設定すれば変わらず、表の計算に現れて、降雨と流出の関係を導くが、飽和雨量は表の計算に現れず裏に隠れて、一降雨イベントごとに数値が変わり、降雨と流出の関係を裏でコントロールしているように見える。表にでないが、実はこの裏の顔役が決めているのである。
「中小河川計画の手引き(案)」p.71で、各定数の一覧表があり、飽和雨量Rsaについて以下のように説明されている。
飽和雨量を大きくすると
・ピーク流量は、やや小さくなる。
・波形は、やや小さくなる。
・ピーク生起時間は、やや遅くなる。
小さくすると、その逆になる。変化が小さいとはいえ、辰巳ダム計画のように、30から200まで変化させれば、どうとでも数字あわせができるということになるのではないか。
しかも、他の定数とおなじように、地表の土壌などの物理特性と関連づけされておらず、水理学的な裏付けが弱いのである。

 飽和雨量は、地中が飽和して急激に流出率が高くなる、この流出率が変わる時点の雨量であるといわれるが、総降雨量と有効雨量との関係を示したグラフを見ても、変化点が明らかではないことが多い。しかし、概念としては理解できないこともない。
関先生のホームページでは、一般的な飽和雨量の大きさについての記述があった。詳細は省いて、結論だけを掲載すると、
●森林土壌の保水能=空の水槽の全容量=平均値は200mm
●流域貯留量(≒飽和雨量)=水のある水槽(自然状態)への追加容量=平均値は130mm
●一般的な説明として,「土地利用ごとでみれば市街地が20~40ミリ,水田は50~60ミリ,森林は100~150ミリ程度」
である。
 辰巳ダム計画の100mmは小さすぎるようだ。

もう一つは、「小出水の際の定数を用いた場合、大出水の再現性に問題がある。」
 ということは、実測データの範囲で検証した定数ではあるが、これを用いて計算した結果である、実測データから大きく離れている予測値が妥当かどうかわからないのである。
 関先生のホームページによれば、
「長野県林務部は、流域の貯留特性の物理的意義を考慮せずに定めた定数を用いて観測事例のない大規模洪水の流量予測をする場合の危険性を指摘している。」いわく、「中規模洪水の観測データから大規模洪水に引き伸ばして洪水流量の予測を行う以上、流域の貯留特性の物理的意義をないがしろにした定数の決定が行われてはならない。定数の物理的意義を考慮して定数解析が行われていない現状から判断して、初期定数については、単に解析を開始するために便宜的な値として与えられるのではなく、それぞれの流域の森林の状態が反映されたそれぞれの流域の貯留特性を表わすものでなければならない。 また、トライアル計算においても、単に数字の入れ替えによって精度を確保するのではなく、定数のもつ物理的意義を考慮の上修正すべき定数の選択が行われ、またその範囲も定められなければならない。なぜならば、洪水流量の予測は、一般にモデルを同定するために用いた実測データの範囲を超えて行われるからであり、実測データの最終的な適合度よりも予測値が妥当かどうかが問われるからである。」

 思考中であるが、辰巳ダム計画で、「流域の貯留特性の物理的意義を考慮せずに定めた定数」の一例について考えてみた。
 辰巳ダム計画では、下菊橋測水所地点において飽和雨量の検証をしている。
洪水生起年月日、実績ピーク流量(立方メートル毎秒)、飽和雨量Rsa(mm)、実績2日雨量(mm/2日)について、実績2日雨量で昇順に並べるとつぎのようになる。
H.3.7.12型  302 70 161.8 
H.9.7.12型    220 30 162.1
H.10.9.22型  352 150 181.5
H.8.6.25型  242 200 267.3
 このわずかな4例を平均した数値をまるめて、計画値は100mmにしている。これは、犀川流域の物理的な意義を反映しているものではない。なぜなら、平成3年から平成10年のわずかの間で変化するものではないから、ほとんど似たような数値になるはずであるが、全く異なっているからである。
 そして、このわずかな4例であるが、実績2日雨量が160mm代の2つの飽和雨量が100mm以下、180以上で飽和雨量が100mmをおおきく超えているから、雨量の強さにつれて飽和雨量が大きくなる傾向は示唆している。
 つまり、実績雨量をはるかに超えた、2日雨量314mmの場合は、飽和雨量が200mmとする方が検証に合っているように思われるが、飽和雨量100mmで計算した貯留関数法の予測値は著しく過大な数値になるのではないか。

 最後まで読まれた方は御苦労さんでした。(-_-;)
2012.10.15,naka
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする