犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム>自然環境に対する深刻な影響について--ミゾゴイ--

2012年02月17日 | 辰巳ダム
ミゾゴイは溝五位と書く。
さぎの仲間で冬はフィリピンや中国南部で越冬し、春になると繁殖のために日本に渡ってくる。日本だけで繁殖するという。どういうところで住むかというと、薄暗い森林や河川沿いの林で昆虫類、ミミズ、サワガニ、トカゲなどを餌としている。
日本の国土の7割は山地であり、日本列島は北から南まで細長く、どの部分にも山があり森林が発達して、川には清流が流れて豊富な餌がある。この自然環境をミゾゴイが気に入ったらしい。
用心深く、薄明や薄暮に行動することが多く、人影を見ると暗い藪の中に身を隠して人目につくことが少ないこともあってなじみが薄い。保護色で枯れ枝に似せた擬態を行う習性もあるとのことである。夜間にボーボーと陰気に鳴くので「ヤマイボ」とも呼ばれる。
ミゾゴイは50センチくらいの背丈で姿形は下のURLを見ればわかる。

ミゾゴイの写真
http://likebirds.exblog.jp/tags/%E3%83%9F%E3%82%BE%E3%82%B4%E3%82%A4/

越冬地であるフィリピンの森林が開発で消失したり、営巣場所である日本でも開発が山地に及び生息に適した自然環境が減少してきたのか、急速にその数が減ってきた。推定個体数は1000羽未満だとも言われている。環境省のレッドデータブック※1 では絶滅危惧種にあげられている。※2,※3

10年ほど前に、この鳥が辰巳ダム予定地付近で発見された。複数のつがい、営巣も確認された。付近の樹林に囲まれた湿地や犀川渓谷の河床に沿った休耕農地などが採餌場となっていたようだ。営巣は薄暗い森林であるが、ある程度人手が入って開けた水田などが餌場として好むようである。

 人影を見ると身を隠してしまうほど用心深い鳥が巨大土木工事によって影響を受けないわけはない。と思うが、石川県の辰巳ダム建設工事の環境影響評価では、「影響は軽微」と予測する。そんなわけはないだろうと「辰巳ダム裁判」で主張を戦わせている。

 被告の国と県は、「有識者である専門家の指導のもとに調査をしている。その結果、ミゾゴイへの影響は小さい。」と結論し、そっけない。
 → 被告第17準備書面第5の3

 現辰巳ダム計画の以前の辰巳ダム計画があり、その計画に対して、石川県は,法律等により環境影響評価を実施することが義務づけられた事業ではないが,昭和62年度に環境影響評価書を行い、「水質汚濁」「植物」「動物」「景観」「辰巳用水」などの環境要素について調査,予測及び評価を行っている。環境保全目標を達成することが予測され,また,重要な動物・植物への影響についても軽微と予測している。

現辰巳ダム計画においても、平成16年度において,環境影響評価法によらない、環境影響評価もどきを実施して,環境保全目標を達成することが予測され,また,重要な動物・植物への影響についても軽微と予測している。

辰巳ダム堤体に接した林でもミゾゴイが確認されており、この林を伐採している。その下の採餌場と見られた水田もきれいに土砂で埋め立てられている。住むところも餌場も奪って追い払っておいて「軽微な影響」という結論になるのはどういうことだろうか。

工事の後でも付近で幼鳥が巣立ったから営巣環境が損なわれていない証拠だとか、鳥は飛んで移動することで適応できるということや、内川や浅野川沿いなど方々で確認されているのでどこにでもいる鳥で特別珍しいわけではないなどという意見もある。しかし、辰巳ダム建設工事によって追い立てられたのか、ダム付近にはいなくなり、上流の熊走付近に移動しているようで個体数もめっきり減っている。「軽微な影響か否か」という主張の戦いは続く。


※1:レッドデータブック(RDB)とは
野生生物の保全のためには、絶滅のおそれのある種を的確に把握し、一般への理解を広める必要があることから、環境省では、レッドリスト(日本の絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)を作成・公表するとともに、これを基にしたレッドデータブック(日本の絶滅のおそれのある野生生物の種についてそれらの生息状況等を取りまとめたもの)を刊行している。

※2:
「改訂レッドリスト付属説明資料 鳥 類」(平成22 年3月,環境省自然環境局野生生物課)によれば、
コウノトリ目 サギ科 EN(絶滅危惧IB 類)[←NT]
ミゾゴイGorsachius goisagi (Temminck, 1835)
日本固有繁殖種で、本州、四国、九州及び伊豆諸島などで繁殖する。南西諸島には渡りの時期に通過し、一部は越冬する。個体数は1,000 羽未満との報告もあるが繁殖分布を含め十分に把握されていない。しかし保護収容個体数の推移を見ると、1960 年以降全国で継続的に減少しており、とくに1990 年以降は顕著であることが明らかになった。最近の個体数減少は50%以上と推定されることからEN となった。その原因は主たる繁殖地である里山の開発や、越冬地での森林減少(11)などが考えられる。ハシブトガラスによる卵の捕食や、伊豆諸島では外来種のイタチの影響(52)も推測される。
【参考文献】 25)、29) 執筆者:尾崎清明(山階鳥類研究所保全研究室)

※3:
【他の参考文献】
執筆者:森岡弘之 によれば
鳥綱コウノトリ目サギ科の鳥。一名ヤマイボという。全長約50センチ。背面は赤褐色で、背や翼には暗色の細かい虫食い模様があり、下面は淡黄褐色で、のどと腹には黒褐色の縦斑(じゅうはん)がある。繁殖地は日本だけで、本州、四国、九州、伊豆諸島の山林で営巣し、冬はフィリピンや中国南部に渡るが、南日本で越冬するものもある。薄暗い林を好み、林の中の渓流や溝で昆虫類、ミミズ、サワガニなどをとって食べる。夜間ウォー、ウォーと陰気な声で鳴く。巣は樹上に小枝を集めてつくり、5、6月ごろ1腹3、4個の卵を産む。
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公共事業>人口減少時代の水道の計画について(その2)

2012年02月14日 | 公共土木事業評価監視
 柳田地区簡易水道第3次拡張事業認可申請書の写しをもらってきた。
関心は、計画の大枠を決める人口をどのようにして決めているのか、人口減少時代の計画をどのように考えているのだろうか、ということであった。

 柳田地区を構成する複数の地区毎に分析してそれぞれを予測するとあまり減らない、これら全体をあわせると結果的に将来ともあまり人口が減らないという根拠をつけている。

 水道計画の「水道給水人口」と「村全体の行政区域人口」は少し異なるが、話しをわかりやすくするためにほぼ同じと考える。
その結果を一つのグラフにすると添付図のようになる。

 水道計画人口はブルーの線で、1996年以降は計画値であり、それ以前は実績値である。ピンクの線は村の住民基本台帳人口の実績値である。計画値は人口減少をいくらか反映しながらほぼ現状維持ということになっている。これに対して現実は一貫して下がり続け、さらに加速度がついているように見える。
 
 1996年以降の人口の計画値が過去の傾向に比べて著しく変化するようになっているが、その根拠として作られた数字はあるがその理由の説明がない。結局、計画論的には現状維持を目標としていることである。現状維持ということであれば、計画した時点の数値を採用することで将来を予測する必要はない。毎年、その差を確認することの方が違いを正確に認識できる。

 中途半端な作文は全く意味がないどころか、徒労である。誰がこのような資料を作れと言う指示をしているのかわからないが誰もが思考停止で従来通り作っているのだろう。こんな作業をしていればやる気のある若者の元気がなくなるのは当然で社会全体の閉塞感にもつながっていると思う(-_-;)



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辰巳ダム>試験湛水・・・斜面崩壊、地すべりの懸念(その2)

2012年02月13日 | 辰巳ダム
Yさんから追加のメールをもらいました。
懸念の続きです。
ただし、L3ブロックは鴛原超大規模地すべり地のことです。

「L3ブロックの末端を瀬領側から見てきました。
鉄塔斜め下の法肩が新しく表層崩壊しています。
こんな崩壊を毎年繰り返して斜面が後退してきたのですね。
1回の崩壊量は少なくても、毎年繰り返せば、末端土塊がだんだん少なくなっていく
わけです。
それ故に、地すべり地の末端斜面では、法枠工により法面保護工が施工されるのです
が、○○課長は湛水池より高いところの保護をなぜしなければならないのかと、そん
なところは買収していないしするつもりもないと。
湛水池の地すべり対策として現況斜面の安定を図る必要性を理解できていないので
す。
●●コンサルタントはそれでも、不安定な表土及び崩績土は、切り取り排土して安定な強風
化岩の法面を出し、その上に植生マットで緑化して斜面の安定を図ることを設計した
のですが、××担当者は、現況で崩壊して裸地になっていたところだけ植生ネットをして植生が
残っている斜面は無対策なままにしてしまいました。
結局、今後も融雪期や豪雨時に133mより上方の不安定な斜面の崩壊崩落が続いていく
ことになってしまいました。
それ故に、長期的に見て安全率は少しずつ低下していくことになるわけです。
そして、ある時点で大規模な末端崩壊が起き、それが切っ掛けで地すべり発生に繋が
る可能性が高くなるわけです。
最も、現在のままで行けば、融雪期に更に崩壊が進展し、たぶん133mより上部斜面に
ついてもF200×1200×1200と言う法枠工による法面保護工が追加施工されると思いま
す。
あの状態では放っておけないと思いますので、」

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辰巳ダム>試験湛水・・・斜面崩壊、地すべりの懸念!

2012年02月12日 | 辰巳ダム
地すべりの懸念についてメールをいただきました。
裏技術士(^_^;)のYさんの分析です。

「満水になるにはあと10日ほど掛かるように思えます。このため、湛水池内の土塊内へ湛水が大量に浸透する時間が十分にありました。また、この後、融雪期に入り、自然状態の地下水位も非常に高くなります。基準水面法では、自然水位は洪水時には変化しないものとして計算しています。(洪水は短期間に発生し、自然水位はそれに比べて遅れて上昇するためです。)しかし、これだけ長く湛水していると、自然な地下水の流動が出来なくなります。その結果、河川と同じように、地下水位は上流側すなわち斜面上方に向かって堰上げ現象が発生し、すべり面に掛かる間隙水圧は大きくなり、すべりに対する安全率も低下します。夏場の洪水時であれば、湛水に掛かる時間と、排水に掛かる時間がほぼ同じ程度で、実際の地山内への水の浸透移動は少ないので、発生する残留水圧も想定されている50%よりも大幅に少ないと思われます。しかし、この試験湛水では、かなりの残留水圧と132mより上部斜面の水位上昇が重なり、すべりに対する安全率が0.95より更に低くなる可能性があります。
また、私の申し上げている末端すべりの安全率もそれ以上に低下する可能性が高いと言えます。
満水後1週間から10日前後が一番危険な状態と考えられます。
2月25日前後とすると、丁度この頃にフェーン現象により融雪が一気に進むことと重なる可能性があります。
湛水斜面の斜面崩壊と地すべりが重なって起きる可能性もあり、思わぬ災害に進展することが危惧されます。」

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辰巳ダム>試験湛水監視ツアー2月11日

2012年02月12日 | 辰巳ダム
 湛水開始から1ヶ月(32日目)の2月11日土曜日午前に現場視察。ダム湖は雪に覆われていましたが、晴れ間も広がって視察日和でした。通りがかりの人もいて少し案内しました。湛水位も129メートルを上回り、満水はまもなくです。このペースで行くと来週の土曜日18日ころには満水になりそうです。鴛原超大規模地すべり地は雪で覆われていますので地表の変状などはとても観察できない状態でしたが、一応、瀬領集落の中の道路(消雪のための散水がされているので確認できる)、鴛原超大規模地すべり地を横切る幹線の道路の路面などを観察してきました。水を貯めるときよりも水を抜くときの方が不安定になるので満水以後の観察の準備のための下調べといったところでした。
 現場の様子は以下のホームページで。
http://www.nakaco.com/tatumi-dam/20120211siken/20120211sikentansui.pdf
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