犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム>防災システムの辰巳ダムで地すべり対策が行われていない

2012年05月29日 | 辰巳ダム
ダムは利水目的で
従来、たくさん造られてきた。水不足を補うために川の水を利用した場合にはダムで水を貯める以外の代替案はないと考えても間違いない。自然環境破壊、水質悪化、堆積土砂などのいろいろなマイナス面があるが、メリットの利水面との秤に掛けて判断することになる。地すべり発生の危険についてもである。

治水目的のダムと
なると地すべりに対する考え方は異なる。治水目的のダムは、洪水のピークをカットした分を一時的にダムに貯留して下流の洪水の氾濫を防止するためのものである。防災システムの一環として計画されるダムであり、このダムが別の災害の発生の危険を生じさせることになれば防災にならないからである。利水目的ダムのようにマイナス面とプラス面を秤に掛けるといっても、災害を別の住民に転嫁したことにしかならない。

治水専用ダムの辰巳ダムは
ダム湖に接して日本有数の鴛原超大規模地すべり地を抱えている。ダムサイトでは、湛水することによる斜面崩壊によって集落の住民の生活と生業が破壊される災害、下流の住民はダム津波によって洪水氾濫を被る災害の恐れがある。となると、

防災システムが別の災害を
起こさないという前提で対策しなければならないと考えるのが道理である。国のマニュアルで、斜面の安全率低下が5%未満であれば対策工が要らないとするのは明らかにおかしい。とすると、湛水によって斜面が不安定になる部分は少なくともすべて補強して補うと考えるのが自然である。
鴛原超大規模地すべり地の斜面の安全率低下は、2%あるいは3%と試算され、対策工はされていない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

辰巳ダム>ダム湛水による地すべりについての国のマニュアル

2012年05月28日 | 辰巳ダム
 ダム湛水による地すべりに関して、事業者が依拠しなければならない「貯水池周辺の地すべり調査と対策」という国の「マニュアル」である。これは、絶対に守らねばならないという規定になっておらず、参考資料である。※
 このマニュアルを作成するについて、「貯水池周辺地山安定対策に関する検討委員会」が設置されてまとめられているが、24人の委員のうち22人は建設省とその外郭団体の人たちである。土木学会内に原発の基準を定めるための委員会を設置する際に、東電などの事業を実施する関係者を多く入れて構成されたことと共通している。事業を推進する側の考えに配慮されて安全についてはなにがしか軽視されてまとめられたことは想像に難くない。
 ダムを造る方の立場に立てば、あまり、厳しい基準を作られては事業がやりにくいのでほどほどにしておいてほしいということがある。ダム湛水による地すべりの心配があるとしても、地すべりの兆候がでれば、それに対応できる技術も体制もあるのでなんとかなるという思いもある。水を貯めれば斜面がなにがしか不安定になるのはやむ得ないことであり、一々、気になんかしてられないのである。
建設してほしいという時代の要請もあった。佐久間ダムや黒四に代表される栄光があり、時代の要請があり、ダム神話もあった。
 地すべり対策をまともにすると、億単位で費用が嵩む。石川県の試算では、鴛原の斜面の安全率低下6%の場合の対策工が25億円と算定している。起きるかどうかわからないことに対して安全対策として大きな費用を払うのでは事業がやりにくい。起きたときに何とかしますといって事業をやれば当面は費用はいらない。問題がおこるのは当分先になるだろうから引き継いだ人がなんとかやってくれるだろうというですむ。問題の先送りである。フクシマもその典型である。問題が先送りされているとも知らず、被災する住民はたまったものではない。
 マニュアルにおいて、斜面の安定計算で安全率低下が5%未満ならば対策工は要らない、けれど監視はしなさいとあるのは、ダム事業者の側にはとって大変都合のいい指針である。被災する可能性のある住民の側から見るととんでもない指針である。

※:河川法では、河川管理施設の技術的基準について第十三条2項に規定があり、政令で定めることになっている。これに基づいた政令が「河川管理施設等構造令」昭和51年政令199号である。第十五条に地すべりについての以下の規定がある。必要なら地すべり防止工を設けることとあるが、防止工についての技術的基準は書かれていない。
第十五条(地滑り防止工及び漏水防止工) 「貯水池内若しくは貯水池に近接する土地におけるダムの設置若しくは流水の貯留に起因する地滑りを防止し、又は貯水池からの漏水を防止するため必要がある場合においては、適当な地滑り防止工又は漏水防止工を設けるものとする。」
法律になるほど考えが確立していないため、国は学識経験者を集めて委員会を開いて考え方をまとめたものが、マニュアル「貯水池周辺の地すべり調査と対策」である。法律による「技術的基準」になる前の段階のものである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

辰巳ダム>試験湛水と地すべり(2)

2012年05月27日 | 辰巳ダム
辰巳ダム事務所に問い合わせたところ、5月25日金曜日に水位が100mまで低下して試験湛水が完了し、下段の2つの穴のうち、片方の穴の鉄板が取り除かれているとのことである。1月11日に試験湛水を開始して38日後の2月17日に満水となり、その後、98日かけて水位を徐々に低下させた。合計136日で、約4.5ヶ月となる。
試験湛水でダム堤体の安定性や漏水は確認できたが、ダム湖に接する斜面の安定性については初期湛水時に発生するものの確認だけである。ダムの管理段階で発生するものについてはわからない。貯水位が繰り返し変動するときの反応は実際に運用してみなければわからない。巨大技術は実物大で実験して確認することはできないので、運用した後でしかわからない。現実に巨大な地震と津波に襲われて初めて多重防御しても過酷事故は起きることがわかるのである。
辰巳ダムで採用されたダム形式は、穴あきダムである。石川県の試算では、満水状態から洪水吐き底までの35mの高さを一気に19時間で低下することになっている。この際に鴛原超大規模地すべり地(全国有数の規模580万立方メートルであり、過去に滑った形跡がある。)の安定が損なわれて動き出す可能性がないのだろうか。
石川県によると132mから97mまでの水位低下条件で、安全率低下は2%あるいは3%程度であり、国のマニュアルは5%未満であれば対策工は要らないということになっているので対策しないという。
石川県が依拠する、国のマニュアル『貯水池周辺の地すべり調査と対策』には、5%未満であれば「これまでの実績によれば、湛水後も滑動に至らない例が多く、必ずしも地すべり対策工が必要とならないと考えられるが、万が一の滑動によってダム施設、貯水池周辺の施設などに影響を及ぼすことが考えられる地すべりについては、伸縮計、傾斜計などの計器を設置してその挙動を監視し、湛水時の安定性について確認することが必要である。」(145~146ページ)とある。起こらないことが多いと言うだけで起こらないとはいっていない、しかも起こるかもしれないので監視はしなさいといっているのである。「対策工は要らない」と書いてあるから、やらないというのでは、ダム湖周辺の住民は生活と生業を脅かされるのであるから納得できるわけはない。
ところが、十分な対策を取ってあるから絶対安全と県に説明された上に、手厚い補償が提供されるので住民は納得する。原発と同じ理屈である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

辰巳ダム>試験湛水と地すべり

2012年05月23日 | 辰巳ダム
試験湛水中であるが、まもなく終了するようである。
5月23日9時現在の貯水位は、標高102.72mの高さにある。1日あたり1mの速さで下げて100mで試験湛水は終わるというから、後2,3日ということになる。1月11日に始まっているのでおおよそ5ヶ月間かかっている。
試験湛水の目的は、一つは、ダム本体の安定や漏水を調べること、もう一つは、ダム湖周辺の斜面の安定を調べることである。後者の斜面の安定であるが、湛水に伴って斜面が不安定になり、地すべりが起きないかどうかを調べるものである。湛水に伴う地すべりについては、2つあり、初期湛水時に発生するものとダムの管理段階で発生するものがある。
「試験湛水」は初めて水没する初期湛水時の斜面の反応を知ることができる。辰巳ダムでは今のところ、斜面が不安定になる兆候は無いようである。川底の95mから満水の132mまで約1ヶ月かけて貯めて、満水から空にするのに約3ヶ月かけてゆっくりと排水してみたところ、一応、斜面は安定して地すべりは起きなかったというわけである。
がしかし、ダム管理段階で貯水位が繰り返し変動する時の反応はわからない。実験することはできないので用心して運用してみるということになる。石川県の説明では、おおむね100年に1回の洪水では満水になって19時間で空になるという。貯水位が満水132mから95mまで一気に37m降下する。
鴛原超大規模地すべり地(L3ブロック)の下半分のブロックの安定は安全率で数%低下するが、国の指針のマニュアルによれば5%未満であれば大丈夫だと書いてあるから、地すべり防止工などの対策もしなくてもいいという。
本当に大丈夫なんですか。
現状よりも不安定になるのは間違いないし、もっと小さい末端地すべりで考えると湛水の影響を大きく受けるので不安定になりそうであるが。

5月19日の夕方の様子。貯水位は106mくらい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

辰巳ダム裁判>第21回口頭弁論開催結果

2012年05月22日 | 辰巳ダム裁判
 2012.5.22(火)午後1時半~1時45分、金沢地方裁判所仮庁舎第1号法廷で開催。裁判官3名(源孝治裁判長、千葉沙織裁判官、中山洋平裁判官、大場淑江書記官)、被告11名、原告8名、傍聴20名強。
 千葉沙織裁判官と大場淑江書記官は、ニュウフェース。被告弁護団のメンバーも4月の異動で大分入れ替わったようである。11名のほかに傍聴席に3名ほど、県のメンバーが数人いてそのほかの国のメンバーの多くは名古屋からわざわざ10分ほどの裁判のためにやってくるらしい。御苦労なことですが、それもこれも税金でやっているのだから、同情の余地はない。どころか、税金を負担しているこちらが同情されたいところか。といっても、司法の判断をもらうための手続きとしてはしょうがないのだろうか。
 原告は証人の陳述書を3通(中証人が作成した文化財、穴あきダム、利水)を提出。残りの陳述書についても7月10日までに裁判所に提出する予定。
 被告は、原告の立証計画について意見を述べる予定。
 認証申請?等についてのやりとりがあったが理解不能!
 ほかに、進行協議の説明会をしてほしいとの裁判長からの要請が再度あり。原告弁護側は、同じことを2度説明するのは専門家の先生に対して申し訳ないのでできかねること、もしするとすれば、裁判所で説明する事項を指示してもらえれば対応する旨を返答した。裁判官が変わったということもあるらしい。対応せざるを得ないか。また、これで数ヶ月は要することになりそうである。なかなか、証人尋問の場面まで届かない。
 次回第22回口頭弁論は、7月17日(火)13時10分~、金沢地方裁判所仮庁舎第1号法廷で開催される予定。

 当日、筆者が傍聴者に配布した資料 →pdfファイル
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする