犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム>北陸電力送電鉄塔移設の隠された理由

2018年05月28日 | 辰巳ダム
(鴛原超大規模地すべり地の末端土塊ブロック上の送電鉄塔が移設された理由は地すべりではない!)

 再び、北陸電力送電鉄塔の件である。
 平成25年に鴛原超大規模地すべり地の末端土塊ブロック上の送電鉄塔が移設された。北陸電力の表向きの移設理由は、地すべり土塊上の送電鉄塔ではなく、その隣接鉄塔の倒壊防止のためであり、そのために前後の連続した6基の設置場所を変更した。

 報道されないところに本当の真実があるといわれることがあるが、北陸電力送電鉄塔の移設は、あえて説明しないところに真実が隠されている。

 北陸電力は鴛原超大規模地すべり地の末端部に位置する送電鉄塔を含めて6基の移設をすることにした。巨大な地すべり土塊の上に位置する送電鉄塔を移設するに際して、「工事を必要とする理由」として地すべりについて全く記載がなかった。地すべり土塊からはずれた、隣接の送電鉄塔の基礎地盤の安定確保が困難になったという理由で当該鉄塔を含む6基の送電鉄塔を移設することにした。

 6基の送電鉄塔を移設することになれば、総工事費は推定10億円にもなると推定される(総工事費について、情報公開を求めたが、北陸電力も監督官庁も公開を拒否した。「工事費概算額を明らかにすると将来発注の工事費概算額が類推され、発注する当該法人の利害に不利益を与える。」などと理由にもならない理由である。公共工事ではすべて公開されているが、発注する自治体に不利益など与えていない!)。

 大工事を行うとすれば、「工事を必要とする理由」は多いほど、重大であればあるほど実施の名分がたつ。そうすると、「理由の第一」は、地すべり土塊上の送電鉄塔が倒壊する危険である。しかも、鉄塔基礎付近で度々表層崩壊が発生しており、法面保護工が施工されている。「理由の第二」は、北電の説明によれば、(地すべり土塊上の送電鉄塔のとなりの)鉄塔の下方の法面が一部崩壊し、今後、法面崩壊が進行すると鉄塔の地盤安定性確保が困難となる可能性があるためという。

 北陸電力は、「工事を必要とする理由」として「理由の第二」だけを挙げている。経済産業省中部近畿産業保安監督部長あての「工事計画届出書」の「工事を必要とする理由書」によれば、「平成17年7月に石川県金沢市鴛原町地内の第59号鉄塔下方の市道法面が一部崩壊したため、水位と傾斜の観測を行うとともに鉄塔の地盤安定性確保のための緊急対策として水抜きボーリングを行いました。今後、法面崩壊が進行すると鉄塔の地盤安定性確保が困難となる可能性があるため、安定した場所を選定し、第59号鉄塔を含む6基を新設する工事を行います。」(筆者注:地すべり土塊上の鉄塔は第60号鉄塔である)とだけ記載がある。

 「理由の第一」が記載されていない。北陸電力の「工事計画届出書」に地すべり土塊上の鉄塔についての記載がないのは、北陸電力が調査していないという理由をつけることができるかもしれない。だが、鴛原超大規模地すべり地の地すべり土塊については、石川県が辰巳ダム建設に関わり、詳細な調査報告書が公開しているので「理由の第一」を記載しない理由にはならない。

 さらに、当該第59号鉄塔基礎法面一部崩壊の3ヶ月前の平成17年4月2日、石川県内の羽咋で地すべりによる北陸電力送電鉄塔倒壊事故が発生している。北陸電力は地すべり土塊上の鉄塔の移設は急務であったはずである。それにもかかわらず、「理由の第一」が記載されていないのは、石川県の立場への忖度としか考えられない。石川県は、地すべり土塊の安定計算で安全率が限度以内で地すべり対策は不要と主張しているのである。

 北陸電力送電鉄塔の移設の理由は、あえて記載されていない「理由の第一(地すべりによる倒壊)」であり、これが隠された真実である。
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