犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム>台風の豪雨と前線性の豪雨を同じ鍋に

2017年11月30日 | 辰巳ダム
 新潟大学O先生は、台風の豪雨と前線性の雨を同じものとして解析するのは、味噌と糞と一緒くたにして同じ鍋に入れて料理をするようなものだ(^_^;)と批判をされていました。
 
 いずれも大きな出水となるが、異なる性質のものである。
 台風の雨は、強い雨が降るが移動するので短時間でおわる。
 停滞する前線性の雨は、弱い雨だが広い範囲で長時間続く。
 同じ雨でも(例えば48時間雨量)、懸案地点のピークの流出量は、台風時は大きく、前線性の雨では比較的小さい。
 これらを一緒にして、流出解析モデルが作られている。
 その結果、どうなるかというと
 辰巳ダム計画の例では、
前線性の雨のデータは多いので、これらのデータとして用いてモデルの係数あるいは降雨継続時間などの数値が決まる。このモデルで計算した結果、台風のケースを挿入すると、異常に大きい数値となり、異常値として捨てられた。犀川のケース(辰巳ダム計画)では、主要な洪水のケースはすべて異常値として棄却された。

 にもかかわらず、このようなことが改まらないのはつぎのような理由からである。
 違いがあるとはいえ、種々の雨を総合的に取り扱うことに合理性がないとはいえないので分けないで取り扱うことが一般的に行われている。合理性がないと断定することはできない、つまり全否定することはできない、なにがしか合理性がある、合理性があるとして取り扱うことにする。
 いまどきの考え方である。
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辰巳ダム>平成29年10月23日台風21号の後の辰巳ダム

2017年11月14日 | 辰巳ダム
 20日後の平成29年11月12日(日)午後、現場を視察した。
 辰巳ダムが平成24年6月に供用開始して以来、最大の出水があった。
 (平成29年10月23日台風21号)Qmax=312.97m3/秒
 つぎは、
 (平成25年7月29日梅雨前線)Qmax=190m3/秒、
 (平成29年8月8日台風5号)Qmax=172.58m3/秒。

 ダム湖上端付近に位置する流木止め工の様子を【写真1】に掲載する。
 8月の台風5号では、流木が少なかったが、10月の台風21号では、大量の流木が発生して堆積している。
【写真1】下流から流木止め工を見る



 ダム湖の右岸の瀬領集落と左岸の鴛原集落を連絡する農作業用の道路がある。ダム底の位置まで降りる道路で河道を横断して簡易橋がある。右岸上流から見た様子を【写真2】に掲載する。
 台風5号の前から、損壊して通行できなかったが、大量の流木が引っかかっていた。台風21号の後は、大量の土砂が堆積して簡易橋が埋没寸前である。
【写真2】農作業用道路の様子を右岸から見る


右岸から簡易橋を見る



 10月23日の豪雨で元北陸電力鉄塔があった場所で再び、斜面が崩壊した。平成26年12月ころに崩壊したが、北電が翌年平成27年秋に修復していた。台風21号の豪雨で修復箇所に隣接した斜面が崩壊した。
 左岸の瀬領側から見た様子を【写真3】に掲載する。
【写真3】瀬領側から元北陸電力鉄塔跡地をみる



 ダム堤体背面の穴(下段常用洪水吐き)を左岸からみた様子を【写真4】に掲載する。河水は右から左へ流れる。手前の白く見える水の流れは支流の谷水である。
 台風5号の後には流木が見られなかったが、台風21号の後には、穴(2.9m角)の大きさの2倍はある流木が残されていた。
【写真4】ダム堤体背面(上流側)の穴の様子を見る(水は右から左へ流れる。)



 ダム堤体前面の低水放流設備の穴(減勢工から辰巳用水東岩取入口へ流れる)の様子を【写真5】に掲載する。台風21号の後には、下段常用洪水吐きを通過した流木が低水放流設備の穴に堆積している。
【写真5】ダム堤頂からダム堤体前面の低水放流設備の穴を望む(減勢工から辰巳用水東岩取入口へ流れる)



 ダム湖内は、冠水の度にヘドロが積み重なり、河道整正工の上段(標高110m)には15センチほども堆積している。足を取られて歩きにくい。ちなみに、河床は標高97m、台風21号による湛水による最高水位は、標高124m。
【写真6】ダム湖内の河道整正工の上段のヘドロの堆積状況


 当方のホームページで、平成29年8月8日台風5号通過後の8月12日撮影写真と平成29年10月23日台風21号通過後の11月12日撮影写真を並べ、比較してみることができる。
2017.11.14,naka
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辰巳ダム>兼六園曲水のつづき

2017年11月13日 | 辰巳ダム
(辰巳用水土地改良区と石川県の取り決め文書を入手したいきさつ)

 「辰巳ダム建設の際に辰巳用水土地改良区と石川県が結んだ取り決め文書」について、情報公開請求したところ、不存在の案内を受けた。しかし、河川で事業を行う場合、関係者の同意が必要であり、必ず存在するはずであり、類似の文書が永久保存文書扱いであることから、ないということは紛失したか、あるいは誤って廃棄したことになると申し入れた。
 慣行的に河川水を取水してきた辰巳用水土地改良区の立場からすれば、既得権を主張できる立場にあり、なにがしか条件をつけることができるのであり、無条件で受け入れるとも思えない。
 担当者が再度、探した結果、やはり、取り決め文書が存在した。
平成29年11月10日、石川県行政情報サービスセンターで2通の文書の公開を受けた。
「辰巳ダム建設事業に関する覚書」平成21年2月24日、「協議書」平成21年2月24日である。
 石川県は、昭和49年度から辰巳ダムの調査を始め、昭和50年代のはじめころに辰巳用水土地改良区と協議していたが、その当時の取り決め文書は不存在で、辰巳ダム建設事業のダム本体建設が確定した後の平成21年に取り決め文書が作成されていた。
 1983(昭和58)年4月、辰巳ダム建設について国が事業採択の時点、あるいは、1991(平成3)年2月5日、辰巳ダム建設事業全体計画認可の時点において、取り決め文書があってしかるべきとも思われたが、不存在ということであった。そもそも文書を作成していなかったか、存在したとしても紛失したか、誤って廃棄したか不明である。

 覚書と協議書は以下のとおり。
 なお、「協議書」に記載のある、(辰巳用水東岩取入口の)「水門操作について、遠隔制御できる設備の設置」については、概略図、仕様、操作実績を公開請求中である。
2017.11.12,naka

辰巳ダム建設事業に関する覚書
 河川管理者石川県知事谷本正憲(以下甲とする)と辰巳用水土地改良区(以下乙とする)は、辰巳用水東岩取水口から、上流約150mに建設する、辰巳ダム建設事業において下記の項目について覚書を交換する。

1.乙は甲の建設する辰巳ダム建設事業に賛同し、甲は工事にあたっては辰巳用水取水設備について、既存の機能に影響を及ぼさない計画、施工とする。

 この覚書の証として本書2通を作成し、甲乙双方押印の上各自1通を保有するものとする。
平成21年2月24日
甲 河川管理者
石川県知事 谷本 正憲
乙 辰巳用水土地改良区
理事長 ■■■■

協議書
 石川県辰巳ダム建設事務所(以下甲とする)と辰巳用水土地改良区(以下乙とする)は、辰巳用水東岩取水口から、上流約150mに建設する、辰巳ダム建設事業において下記の項目について取り交わしを行う。

1.乙は甲の建設する辰巳ダム建設工事に協力し、用水取水について指導、助言を行うものとする。
2.甲は辰巳用水取水施設について、下記のとおり影響を及ぼさないよう配慮するものとする。
(1)用水取水量の確保
(2)水門操作について、遠隔制御できる設備の設置

平成21年2月24日
甲 石川県辰巳ダム建設事務所
所長 東出 孝良
乙 辰巳用水土地改良区
理事長 ■■■■


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辰巳ダム>誰が兼六園へ用水を安定的に供給するのか

2017年11月03日 | 辰巳ダム
 辰巳用水の維持・補修は、辰巳用水土地改良区が行うことになっているが、人的資源はあっても経済的資源は乏しい。したがって、補修工事等は、金沢市の農林関係部局が行っている。国史跡に指定されてからは、金沢市の文化財保護関係部局も加わっている。
 濁水処理設備・施設あるいは同等の効果を発揮する施設を造るとなると金沢市企業局の協力も必要である。
 多数の関係者が関与することになるので、誰がどう仕切って運営をするのかという問題がある。
 
「誰が兼六園へ用水を安定的に供給するのか」と考えると、答えは自ずから明らかだ。
歴史的に、辰巳用水は殿様用水※ として開発された。途中、余り水を利用するかんがい用水となり、そして、かんがい用水が主となり、兼六園への用水が従となった。だが、かんがい用水としての比重が徐々に後退し、兼六園の曲水、辰巳用水支流用水の流れを含めて、市内の用水路の「環境用水」としての役割が大きくなってきた。石川県(あるいは金沢市)が責任を持って安定供給することになろう。

 国史跡(辰巳用水)となり、地域の宝として再確認された。辰巳用水は単独で存在するのではなく、兼六園、金沢城も含めて、三位一体の歴史的な遺産である。金沢城、兼六園は、石川県が維持管理している。敷延して考えると、辰巳用水はいずれ、石川県が辰巳用水土地改良区に管理を委託する形態に移行するのが適当ではないか。現在、過去の経緯から、金沢市企業局が管理費用の一部として辰巳用水土地改良区へ負担金を提供していることもあるが。

 私案としては、「石川県金沢城・兼六園管理事務所」を、辰巳用水(辰巳用水土地改良区へ委託するとしても)も含めて管理する組織に改組して担当させてはどうかと考える。

※:『加賀辰巳用水』によれば、「辰巳用水は、1632(寛永9)年に9ケ月ほどで造られた「金沢城中用水」である。」(青木治夫)
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辰巳ダム>辰巳用水を維持管理しているのは「辰巳用水土地改良区」

2017年11月01日 | 辰巳ダム
 辰巳用水の濁水問題については、辰巳用水土地改良区との協議が必要である。濁水処理をすることによって、辰巳用水の使用になんら障害が発生することがないと思われるので、協議し、同意を得ることに支障はない。

 であるが、現時点で合理的な判断としても、数百年の歴史的積み重ねの産物である存在でもあり、現時点の判断を受け付けない場合もなきにしもあらずである。

 ちなみに、土地改良区は、圃場(田んぼ)や農業用水路の整備・維持管理などを行うためにつくられる農業者の組織である。農業者が土地改良法という法律にもとづいて設立される。農業生産力の向上をめざすことを目的として、同じく公共性の高い農業者団体として農業協同組合法による農協があるが、土地改良区はより限定された範囲で活動する団体である。辰巳用水土地改良区は、辰巳用水路の維持管理を主として設立されている。辰巳用水に関して、辰巳用水土地改良区の同意なしに改良事業その他を実施することはできない。

 辰巳ダム建設に際して、石川県と辰巳用水土地改良区との取り決め文書などの公開を石川県に請求中である。

 金沢市からは公文書公開を受けた。辰巳用水土地改良区は、金沢市が新辰巳発電所(昭和46年3月30日運用開始)を建設した際に、金沢市公営企業管理者と同意書(昭和43年4月20日)を交わして、用水量の常時確保を条件としている。運用開始直前には、同意書を変更して、具体的に補給する方法を明示した覚書(昭和46年2月27日)を結んでいる。さらに、用水路の管理に要する費用を毎年交付させるべく、協定書(平成元年7月27日)を締結している。

 金沢市が辰巳用水土地改良区に新たな提案をすれば、何らかの追加条件をつきつけられることも考えられる。
 ただ、協定書によれば、「管理等に要する経費の一部負担金、毎年度¥500,000円」について、金沢市は優位な立場にある。なぜなら、用水路の補修、改修が、農林部局の費用、国史跡指定された平成22年以降は、文化財保護部局からの費用でなされている。平成元年の協定書の時点から、状況が変わっており、協定書第3条の規定により、負担金の減額も主張できる。



同意書
 辰巳用水土地改良区は、金沢市が新たに建設する新辰巳発電所の放水路を辰巳用水取水口の下流に設置することについて、下記の各条項を満足せしめることを条件として同意します。

 金沢市は、辰巳用水が必要とする水量(最大0.8m3/S)を常時確保するため次の設備をする。
1.新辰巳発電所の放水路より辰巳用水の水路に取水できるよう電動揚水ポンプ2台(内1台は予備)を常置する。
2.新辰巳発電所の水槽の余水路より辰巳用水の水路に取水できるよう必要な一切の設備をする。
以上
昭和43年4月20日

金沢市公営企業管理者 葛城勝男 殿
辰巳用水土地改良区
理事長 武田与一郎



覚書
 辰巳用水土地改良区は、金沢市新辰巳発電所の水利使用に対する昭和43年4月20日付の同意書に付された条件を次のように変更します。

 金沢市は、辰巳用水が必要とする水量を常時確保するため次のように処置する。
1 辰巳用水に必要な水量は、原則として辰巳用水取水口において取水できるよう上寺津ダムの下流補給ゲートから放流する。
2 新辰巳発電所付近の辰巳用水路に水位計を設置して流量を常時監視するものとする。
3 辰巳用水取水口から流入する水量が不足した場合において用水を補給するため、新辰巳発電所水槽余水路から辰巳用水に通ずる連絡水路を設置する。
4 前項の連絡水路により用水を補給する場合は、水槽排砂門ゲートから放流し、ゲートの操作は、金沢市企業局の係員がこれに当たるものとする。
昭和46年2月27日
金沢市公営企業管理者 山中 巌 殿
辰巳用水土地改良区
理事長 武田与一郎



協定書
 金沢市は、辰巳用水に関し昭和46年2月27日付の覚書の条項を遵守し、それに関して、辰巳用水路の利水効果を図るため金沢市(以下「甲」という。)と辰巳用水土地改良区(以下「乙」という。)の間に次のように協定する。
第1条 乙は、辰巳用水路の補修、改修、分水、番水、流木の除去および用水に係る事項について善良な管理を行い、利水の効率な運用に協力するものとする。
第2条 甲は、前条の管理等に要する経費の一部負担金として、毎年度¥500,000円を乙に交付する。
第3条 予算のうち当該金額について減額または削除のあった場合は、当該協定は解除できるものとする。
第4条 この協定締結に際し、疑義が生じたときは甲、乙協議して定める。
 上記の協定を証するため、本協定書を作成し両者記名押印のうえ各自1通を保有する。

平成元年7月27日
甲    金沢市広岡3丁目3番30号
金沢市公営企業管理者
渡辺 次男

乙    金沢市小立野3丁目28番12号
辰巳用水土地改良区理事長
別所 実
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