犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

ダム問題>高位置にあるダム貯水は太陽エネルギーの貯蔵庫(犀川ダム)・その2

2018年10月31日 | ダム問題
 平成30年の犀川ダム管理実績から試算してみた。
 犀川ダム貯水池全体を利水ダム容量とする。
「石川県河川総合情報システム・ダム諸量表」のデータ(平成30年1月~10月)による。
 ダム管理者は、10月までに治水ダム容量を空けておくため、制限水位を超えないようにするためにダム放流ゲート操作は、5回している。
 洪水調節ダム容量にも貯めることにして、ダムが満杯になれば、ダム放流ゲート操作をすることにして検討したところ、2回になった。

 治水ダム容量を活用するので、発電所の能力を最大に活用する時間が増加することで発電量が増大する。試算の結果は以下のとおり。
 犀川ダムから最大流量12m3/秒を導水された時間は、実際に運用された時間よりも総計で756時間程度増大する。その間の実際に運用された流量は3~11m3/秒であるが、おおよその平均は、8m3/秒程度である。その差の流量(12-8=)4m3/秒をもって、上寺津発電所(有効落差156.9m)、上寺津発電所からの排水地点の下流に位置する新辰巳発電所(基準落差76.7m)の両発電所で発電すると、発電出力は、約3500kW、756時間を乗じると、約260万kWhである。おおよそ500世帯の年間電力使用量である。
 金沢市企業局は、北陸電力へ約10円で売電しているので今年は2600万円ほどになる。

 単に一年弱の簡単な試算であるが、犀川ダムの水を発電に最大限利用するということは検討に値する。
 状況の変化もある。
 ① 気象観測技術が進歩して、降雨をあらかじめ予測できること、
 ② 下流に辰巳ダムが完成して、辰巳ダムは600m3/秒を270m3/秒に低減して洪水調節できる環境に変化しており、河川管理者は、三ダム連携を唱っていること。
(つづく)
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ダム問題>高位置にあるダム貯水は太陽エネルギーの貯蔵庫(犀川ダム)・その1

2018年10月30日 | ダム問題
 犀川ダムは多目的ダムである。
 多目的ダムは、利水(上水道、かんがいなど)、治水(洪水調節)、発電の目的を兼用している。
 ダム貯水池は利水のためと治水のためと上下二つに分割され、原則として、利水ダム容量は利水だけのため、治水ダム容量は治水のためだけに利用されるので、下部は利水のために水を貯め、上部は治水のために常時、空にしておく。
 したがって、発電は利水ダム容量に貯められた水を利用して行うことになる。

 犀川の多目的ダム第1号の犀川ダム貯水池は、
 標高340メートル(洪水期)より上は、治水のため、それ以下は利水のためのものである。
 ダム管理者(石川県)は、洪水期(6~10月)には「水位をこれより上昇させてはならない」という制限水位規定(340メートル)を厳格に運用している。夜間のダム管理は、運用権限のない夜勤者が駐在しているだけなので、夜間時の増水で制限水位を超え、朝になって権限者が慌てて放流してダム下流で突然の増水のためにレスキュー隊出動騒動なども発生する。

 多目的ダムを厳格に運用しようとすると不都合なことが起きやすくなる。一つの器で全く異なる使い方を併用しているためであり、一方では水を貯め、他方では貯めないと正反対のことをやっているからである。

 下流にできた新設の辰巳ダムは治水専用ダムである。
 犀川ダムを多目的ダムではなく、利水ダムとして活用することを考えてみてはどうだろうか。
 高位置にあるダム貯水は太陽エネルギーの貯蔵庫でもある。

 100年確率洪水を想定して犀川で3番目の辰巳治水ダムを造った。想定する洪水の大きさは、明治、大正、昭和、平成までの150年の間の実績からは想像もできないようなものだ。石川県の主張は、おおむね100年に一回発生するという。百歩ゆずってその主張が妥当なものとしても、想定事態が発生した時だけは犀川ダムも治水ダムとして利用すればいいのであって、その時以外は利水専用ダムとして活用できる。
(つづく)
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