犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

【日々是好日なり】謡曲「高砂」(3)

2023年05月31日 | 日々是好日なり
 「能」には、別格の「翁(おきな)」という演目がある。
 これは特別な時しか行われない儀式のようなもの。
 一人でセリフもなくて演ずる。

 通常に行われる能は、仮面をつけた演劇で、
 主役(シテ)の違いによって5種類の番組に分けられている。
 神・男・女・狂・鬼(しんなんにょきょうき)という。
 主役(シテ)が神様である物が「脇能(わきのう)」と呼ばれる。

 「高砂」は脇能である。
 演劇といっても物語性はほとんど無く、脇役(ワキ)の僧あるいは神官が旅の途中で出会った相手が、実は神様であることを告げて一旦は姿を隠し、後段で神の姿で現れ、神舞を舞い、平和に治まる御代をことほぐというのが大体のパターン。
 つまらないといえば、つまらないが、主役が神様だけにぞんざいに扱えない。

 「高砂」の作は世阿弥。
 舞台設定には凝っている。

 「自然信仰」が伝統の神様が主役で、「祖霊信仰」の日本神話にもとづいている。※
 脇役(ワキ)は、阿蘇神社の神主であるが、旅の道程は、初代天皇の神武東征のルートをなぞっている。
 ①⇒②、③⇒④、
 さらに、第14代天皇・仲哀天皇の皇后である神功皇后※2 の三韓征伐に由来があるところが、4カ所もでてくる。
 ②、③、⑤、⑥

 ①阿蘇神社 神武天皇の孫神で阿蘇を開拓した健磐龍命(たけいわたつのみこと)をはじめ家族神12神を祀り、2000年以上の歴史を有する古社。
 ②高砂神社 ご祭神は、大己貴命(おおなむちのみこと)。神功皇后が外征のとき、大己貴命の神助を得て敵を平らげられた。帰国の途中、この地に船を寄せられ、国家鎮護のため、大己貴命をまつったのが高砂神社の起源。
 ③尾上神社 神功皇后が三韓征伐の際に、この地に上陸したが長雨のために船を進めることが出来なかったため、「鏡の池」で潔斎沐浴して晴天を祈願し、住吉大明神を勧請したことが起源。
 ④住吉大社 住吉大社の祭神は、伊弉諾尊が禊祓を行われた際に海中より出現された底筒男命・中筒男命・表筒男命の三神、そして鎮斎(神おろし)の神功皇后
 ⑤生きの松原 壱岐神社の周辺の松原、地名は神功皇后が新羅遠征の際、戦勝を祈って挿した松の枝が根づいたという伝説による。
 ⑥檍が原(あをきがはら)あるいは、阿波岐原(あわきがはら) 伊弉諾尊(いざなぎのみこと)が黄泉の国から帰り、檍が原の海で禊をすると行う底筒男命・中筒男命・表筒男命の三神が現れた。

※2 神功皇后は、別名を気長足姫尊(おきながたらしひめのみこと)といい、地元の松波神社の御祭神。
※ 「能」は、
 ・自然信仰、祖霊信仰がもとにあって、神官が神々をまつらい、五穀豊穣、国土安寧、天下泰平を祈念する儀式が基本。
 ・加えて人々に楽しみを提供する演劇としたもの。
 ・「翁」が儀式、「脇能」が準儀式、その他の演目が演劇。
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【日々是好日なり】謡曲「高砂」(2)

2023年05月30日 | 日々是好日なり
 待謡の前段では、高砂の松の落ち葉を掻き掃いていた老夫婦がいる。
 実は、老女は高砂の松の精、老いた男性が住吉の松の精であることを明かした後、※
 二人は住吉に先に行っているからと言い残して小舟に乗って行ってしまった。
 後を追いかけて住吉にいくところが、待謡の場面であり、
 住吉大社に行ったところ、住吉明神が現れてあらたかな舞を舞う。
 住吉明神が舞うと、差す手で悪魔を除け、引く手で寿福を招く。

 高砂の松のところで落ち葉を掃き、掻いていた老夫婦は神様であり、
 箒をもった姥(うば)は、過去のことを祓い清める神様。※2
 熊手をもった尉(じょう)は、先からやってくる寿福を搔き集める神様。※3

 神様が演じる老夫婦のように、末永く仲睦まじい相老の老夫婦が理想の夫婦像であるという話が「高砂」である。
 寿福を招いてくれる神様のところへ行く場面が、「待謡」のところ。 
 結婚式で謡われるわけだ^_^;(つづく)

※ 所は離れているが、相生の松だとしている。
※2 姥(うば、老女)は、嫗(おうな)とも。
※3 尉(じょう、年取った男)は、翁(おきな)とも。
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【日々是好日なり】謡曲「高砂」(1)

2023年05月29日 | 日々是好日なり
 金沢は宝生流の盛んなところで加賀宝生流といわれる。
 謡をならう人も多い。
 奥能登では、輪島の輪島塗関係者の多くがたしなんでいたらしい。
 昔々、全国へ輪島塗を訪問販売してあるく際に必要な嗜みとして茶道、華道に加えて謡曲の心得も必要だったとか。
 だが、輪島塗の衰退と関係者減少に並行して、謡をする人も減ってきたのは残念だ。

 謡う人も減り、謡う機会も減る。
 結婚式では「高砂」が謡われていたが、最近は演歌や歌謡曲か。
 「高砂」は、相生の松の話であるが、※
 目出度いときには、伝統の重みを感じとってもっと謡われてもよいと思うが。
 以下は、よく謡われる「待謡(まちうたい)※2。

  高砂や この浦舟に 帆を上げて※3
  この浦舟に帆を上げて
  月もろともに 出汐(いでしお)の
  波の淡路の島影や
  遠く鳴尾の沖過ぎて
  はや住之江に 着きにけり
  はや住之江に 着きにけり

 この待謡の意味は、
 高砂から舟の帆を上げて月の出とともに満ち潮に乗り、淡路島の島影を見ながら進んでいるうちに早くも住之江に着いた、
 という何とも味気ない内容の詞である。
 だが、意味が分かると面白い。(つづく)

※ 相生(あいおい)の松とは、同じところから生えている松のこと。相老(あいおい)にも掛けている。
※2 待謡(まちうたい)とは、主役(シテ)の登場を待つ間に謡う、短い謡。
※3 浦舟 浦の辺りを往来する舟。浦は、波が静かな入江のこと。
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【日々是好日なり】「グッチ」のバック

2023年05月28日 | 日々是好日なり
 わが家での会話。
 気心の知れた人たちの集まりから帰ってきて、
 小生:今日も「グッチ」のバックを持ってきた人がいたわ。
 家内:たくさん入ってたのね。

 高齢化すると、誰も彼も体も頭も動かなくなるし、悩み事が多くなる。
 愚痴もいいたくなる。
 だが、そのはけ口の持てない人もいる。
 そうなると、どんどん溜まって、
 グッチのバックには入りきらないほどになる。
 
 気のおけない仲間の集まりに、
 一杯になったグッチのバックを持ってきて取り出すことになる。

 お互い多かれ少なかれ悩みは共通で、
 空になるまで取り出すのも気が引けるから、
 みんなの「たいへんねー」との答えが何回かあったところでバックを閉じる^_^;
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【日々是好日なり】ウワミズザクラ

2023年05月27日 | 日々是好日なり
 我が家の神木。
 家の前にあって、樹形がいい。
 雪折れで無残な姿の木々が多いが、このウワミズザクラは自然の悪条件をやりすごしている。


 ウワミズザクラ(上溝桜)は、バラ科ウワミズザクラ属の落葉高木。別名、ウワミゾとも。⇒ウワミズに転訛。
 サクラの仲間であるが、サクラらしからぬ白い小さな花が房状にたくさんつく。
 葉がサクラに似ている。

 和名「ウワミズザクラ」は、古代の亀卜(亀甲占い)で上面に溝を彫った板(波波迦、ハハカ)に使われた事に由来。
 大嘗祭の為の斎田点定の儀では亀卜により悠紀国と主基国とが選ばれるが、その際にも亀甲を灼くために上溝桜の波波迦木(ハハカギ)が用いられる。(鎌田純一『平成大禮要話』p.74 )

 樹形がひどい大島桜
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